第13話 水族館
約束の日。4人は水族館の前で待ち合わせた。
「あ、いたいた」
ベリーと腕を組んでいたリヒトが、マリアに近付く。
「マリアちゃんの服、可愛いね」
「あら、そう?ありがとう」
マリアは特に嬉しくもなかった。……ケイネラに褒められる時は、いつも胸が温まるのに。
「……行きましょう」
マリアが静かに先導する。
チケットを買い、中に入る。
少し涼しくて、ベリーは身震いした。
まずは、熱帯魚のコーナー。
4人は並んで、カラフルな魚達を眺める。
「わ、綺麗〜」
「ね!」
ベリーとリヒトは同じ水槽の前でくっついて、指さしている。
ベリーも写真を撮った。……熱帯魚の。
「……綺麗ね」
「えぇ、とても」
フィリアは熱帯魚の色が反射した、マリアの横顔を見ていた。
それに気づいたマリアは、思わず笑ってしまう。
「ふふ、魚を見なさいよ」
「幼少期に見飽きてます」
「ふふふ、変なの」
次に、湿地ゾーン。
天井が低くなり、照明は暗い。
不思議と声も小さくなってしまう。
「見て、テッポウウオ。鉄砲みたいに虫を撃ち落とすんだって」
「へぇ〜……」
ベリーはなんとなく、リヒトと似ていると思った。
ベリーとリヒトは、気づけば遠くにいた。
マリアは、カエルのコーナーに止まっていた。
カエルはじっと、動かない。
目を細める。慈愛とも、軽蔑とも取れず。
フィリアはマリアの隣で、ベリーを見ていた。
心ここに在らず、と言った風だ。リヒトと隣にいながら、マリアの存在が確かにある。宙ぶらりんなのだろう。
リヒトとベリーは、大型水槽にたどり着いた。
「きれ〜」
二人で大きな水槽を見上げる。
その隣に、追いついてきたマリアも来る。
ベリーはふと、マリアを見た。
そして、目を見開く。
あまりに美しすぎて、息を飲んだ。水槽越しの光を受けたマリアの顔が、水面みたくキラキラ光る瞳が。見蕩れてしまった。
ベリーにはもう、水槽を見ているのか、リヒトを感じているのか、マリアを意識しているのか分からなかった。
フィリアはそれを、ただ見ていた。
「ねっ、綺麗だね──────あっ」
リヒトはベリーに振り向き、そして気づく。ベリーがマリアを見ていることに。
「……ねぇ」
「、あ、うん!なになに?」
リヒトはベリーの袖を引っ張る。ベリーは慌てたように、リヒトに向き直った。
「──────綺麗だった?」
何が──────とは、言わなかったが。
「うん────────綺麗だよ。今も」
ベリーは水槽の方を向いて、言った。罪悪感を、誤魔化すように。
「……そ」
簡素に。リヒトは吐き捨てた。
「フィリア、綺麗ね」
マリアはフィリアに向く。その目の無邪気さは、少女らしかった。
「……えぇ。貴方には敵いませんが」
フィリアも微笑む。水槽は引き立て役にしか見えてなかった。
「……ここで終わりかな?」
「そうっぽいね〜!」
2人は出口で待った。
後からゆっくり、マリアとフィリアが来る。
「お待たせしました」
「大丈夫だよ、お土産見よっか」
4人はお土産コーナーに行った。
「見て見て、テッポウウオのキーホルダー!」
「いいね〜それ☆ボクが買おうか?」
「え、いいの?」
リヒトは頬を染める。
「もちろん!」
リヒトはベリーから、テッポウウオのキーホルダーを受け取った。
それが、彼を撃ち落とした印に見えた。
「マリア、何か買いますか?」
「……いえ、いいわ」
「そうですか」
マリアは何も買わなかった。フィリアも何も買わなかった。思い出に残す程の事でもない。
水族館から出た。
陽の光を浴びて、ベリーは安堵する。
(終わった……)
理由の分からない疲れが残ったのは、ベリーだけだった。
「じゃ、解散しよっか☆」
「えぇ、お疲れ様」
そうして、水族館デートは終了した。
バスに揺られながら、ベリーは景色を見る。
大型水槽を見ていたマリアの横顔が、忘れられなかった。
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ベリーはマリア以外の人を写真に収める選択はできないんですね。
なんかリヒトがいると濃度がありえないくらい濃くなって、文量が減るんですけど、濃口醤油か何かですか?という話をChatGPTに話したら、リヒトは煮詰めた濃口醤油だと言われました。たしかに。




