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マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

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11/23

第11話 凛の覚悟 ケイネラとヨガ ベリーの嫉妬

 凛は寮の自室で悩む。


(俺の恋が、ベリーを傷つける……)


 頭の中で、あの日のベリーの言葉が反響する。


『……君を見てるとさ。胸がムカムカする』

『イライラもする。どうして自分がそこに居ないんだろうって』


 ベリーの声は、確かに本心を映し出していた。


 凛は頭を抱えた。


 ふと、着信音が鳴る。


 スマホを見る。


「……マリア」


 マリアからだ。凛は目尻を緩める。


 電話に出る。


「もしもし?」


 マリアの澄んだ声が聞こえる。相変わらず、可愛らしい。凛は少し、安堵した。


「あぁ、聞こえている。どうかしたか」

「ただ話したかっただけよ」

「……そうか」


 凛は椅子に背中を預け、天井を仰ぐ。


「……今日の体育祭、楽しかったな」


 凛が切り出した。


「えぇ、本当に。貴方と走った借り物競争、とても楽しかったわ。貴方って逞しいのね」


 その一言で、凛の胸は満たされた。鍛えていることも、努力していることも、彼女に認められている気がした。


「マリアも鍛えているのか?」

「ふふ、秘密よ」


 マリアはクスクス笑う。凛は胸が苦しくなった。


「……マリアのキス、とても嬉しかった」


 凛は心底嬉しかったという声で、少し照れながら話す。


「ふふ、あら、そう。キスしがいがあるわ」


 マリアはそう言う。良いとも、悪いとも言わない。


「……今度は俺から、させてくれ」


 凛は目を瞑り、囁くように言った。


「!きゃあはは、素敵ね。待ってるわ」


 その言葉に、マリアは喜んだ。


「声が聞けたから満足したわ。じゃあね、おやすみダーリン」

「あぁ、おやすみマリア」


 通話を切る。


 ……なんて甘美な時間だったろうか。


 マリアを独り占めできる時間。その声を、その心を。


(あぁ、俺は───────)


 こんな幸せ、手放せやしない。

 そう確信した。


 その幸せの余韻に浸って、凛は脳が蕩けていた。


 だからこそ、決意した。


 この恋が誰を傷つけることになろうと、自分はマリアを愛し続けるのだ。


 凛は今、その覚悟を決めた。


〜〜~


 次の日は休みだった。


 マリアは変わらずケイネラとランニングをする。


「ねぇケイネラ、今日は一緒にヨガをしない?」

「あ、良いね。寮の施設にルームがあるから、借りよう」


 ということで、2人はヨガをすることにした。


 ヨガウェアに着替えた。


 ルームには、マリアとケイネラの2人しかいない。貸切状態だ。


 ヨガウェアは、マリアの体の線がよく出る。


(……色っぽいな)


 ケイネラは少し見た後、ゆっくりと視線を外した。


「……貴方、綺麗な身体してるのね」

「!!」


 マリアがケイネラに微笑む。さり気なくケイネラの腹筋に手を添えた。そこから熱が発さられているかのように、熱くなってしまう。

 

 マリアも同じような事を思っていたらしい。


「……ふふ、僕も、マリアは綺麗な身体してるって思った」

「あら、気が合うわ」


 クスリと笑う。


 簡単なポーズから始め、少しずつ難易度を上げていく。


「ケイネラって体柔らかいのね」

「マリアもね。……次はこのポーズやろう」


 2人はゆっくり、体を解して、温めていく。


 7月下旬。夏も本格的になってきた。冷房を軽くかけるが、ヨガをすると代謝が上がる。2人は汗だくになった。


 チラリとマリアを見る。

 縛られた髪が汗でうなじに張り付いている。首筋にも、玉の汗がついている。


 思わず見蕩れてしまった。頭が熱くなる。


 ふと、マリアもケイネラの方を向いた。

 目が合う。


「……汗だくね」

「そうだね。後でシャワー浴びないと」

「……」


 マリアは視線を外す。そしてもう一度、ゆっくりケイネラを見る。


「……一緒に浴びる?」


 上目遣いで、挑戦的な目つきで。マリアは問う。


 ゴキュッ、とケイネラの喉が鳴った。顔が真っ赤になったのは、夏の暑さのせいだけじゃない。


 ケイネラは少し間を置いた。


「……浴びる」


 流石に目を合わせられなくて、斜め下を見る。


 そのいじらしさと正直さに、マリアはくすりと笑う。


「じゃあ……次のポーズが、終わったら」

「うん、次のポーズ……」


 マリアはしっとりと静かに言う。

 ケイネラはほぼ頭が回ってなかった。うわ言のようにオウム返しする。


(マリアとシャワー……)


 その事実が、観覧車のように頭の中をぐるぐると回る。


(あぁ……僕のジュリエット)


 愛しい愛しい、ジュリエット。これは運命かもしれない。ケイネラも熱に浮かされて、そんなことを考えた。


 気付いたら、次のポーズも終わっていた。

 マリアは立ち上がる。ケイネラはそれをボーッと見つめていた。


「……じゃあ、行きましょうか」


 マリアは妖艶に微笑む。

 それは宣言のようだった。


「うん……」


 ケイネラはボーッとしていたが、辛うじて立ち上がり、シャワールームへと向かうことができた。


 脱衣所で、服を脱ぐ。


「びっしょりね」

「……ホントだ。ぐしょぐしょ」


 洗濯機が置いてあるので、2人はヨガウェアを入れ、洗った。


 マリアはボーッとしているケイネラの手を引いて、シャワールームへ向かう。


(手、柔らかいな……)


 マリアの手の、細くて、柔らかいこと。女の子の手だ。ケイネラはそう思った。


 シャワールームに入る。二人で入ると、少し狭い。距離が近い。呼吸がかかるようだ。


「流すわよ」


 マリアがシャワーを出す。


 マリアはまず自分の体にシャワーを当てる。反射したシャワーが、ケイネラの体を打つ。

 冷たいシャワーがかかっているのに、体が恐ろしいほど熱かった。


「どうぞ」

「あぁ、ありがとう……」


 マリアは浴び終えたらしい。ケイネラにシャワーを渡した。


 全身に冷たいシャワーがかかると、モヤがかかっていた脳内がスッキリしてくる。


 同時に、こういったことも浮かんでくる。


 自分達は……するのだろうか。


 手を……出すべきなのだろうか。


 ケイネラは悩んだ。


 マリアを見る。シャワールームの壁にもたれかかって、斜め下を見ていた。

 ケイネラの視線に気がついて、目を合わせ───────微笑む。


 それは……了承の合図に、ケイネラは思えた。


「ねぇ……」


 シャワーを止める。止めた瞬間から、全身の熱がぶり返してきた。熱っぽい視線をマリアに向ける。マリアの目にも熱が灯っているのは、気のせいじゃないはずだ。


「……襲っていい?」


 ケイネラはそう口にした。


 マリアは答えず……ケイネラにキスをした。


 その先は─────────互いに踏み込むことを選んだ。


──────────


 次の日は、平日であった。


 公に彼氏と公言された凛は、分かりやすくマリアとイチャつきだした。

 そしてケイネラも、さり気なく距離を近づけていた。


 例えば、ご飯の時。


「マリア、これ美味しいぞ」

「あら、そう。食べさせてくださる?」


 皆の前であーんをしている。凛は悩みから解き放たれた顔で、幸せそうにしている。

 マリアも嬉しそうに微笑を浮かべる。


 フィリアは特に気にせず、粛々と食事を続ける。


「マリア、これも美味しいよ」

「ほんと?食べてみたいわ」


 ケイネラもそれに続いてマリアに食べさせた。


(なんか皆距離近くない!?)


 ベリーは不満げだ。


「……マリアちゃん!ボクのも食べる!?」


 少し勇気を出して、そう言ってみる。


「あら……ごめんなさい、もうお腹いっぱいだわ」

「そっか……」


 マリアは少し申し訳なさそうに、そう言った。

 ガックリ、と肩を落とす。


 例えば、移動教室。


 マリアの右横を、当然のように凛は確保する。左側はフィリアが独占している。

 ベリーはその後ろだ。


(なんか……ムカムカする!!)


 仲間はずれ感に、ベリーは苛立つ。


 別に誰もそんなつもりないのに、足並みが会わないだけで、ベリーは凄くイライラした。


 表向きは、明るく。変に空気を悪くするのは、ベリーは好まない。日常生活がギスギスするのも嫌だった。


 笑顔の裏で、感情は濁っていく。


 ベリーは誤魔化しが効かないくらい、イライラが渦巻いていた。


(そもそも、マリアちゃんが可愛すぎる!!!)


 入学したての時のマリアは桜の似合う明るい女の子だったが、最近は雰囲気が違う。

 蛇のように恐ろしくて、薔薇のように色っぽい。彼女の流し目に、ファムファタールの本性を見た気がした。まだその本性は、彼女の一部だとは知らずに。


 彼女自身は何も求めないのに、周りの人が彼女を求めて仕方ない。マリアは魅力的過ぎるのだ。


 昼休み。学内のベンチに、ベリーは座っている。


 マリアの屈託ない笑みを思い浮かべて、ベリーは泣きそうになる。


(あ〜〜、どうしたらいいんだろ)


 そこに、1人の女の子が来た。


「あれ、ランジェロさん?」


 ベリーは顔を上げる。

 染めてない茶髪の、丸メガネをかけた女の子がいた。


 薄い茶色の瞳と目が合う。


「あ、君はクラスの……」

「リヒト・フェアヒューアング。こんにちは」

「、こんにちは!今日、暑くない〜?これからもっと暑くなるとかホント勘弁なんだけど〜」

「はは、ほんとだよね」


 ベリーは明るく振舞った。リヒトは苦笑する。

 リヒトはさり気なくベリーの隣に座る。


「なんか悩んでたみたいだけど、どうかしたの?」

「っ、えっと〜……」


 ベリーは言葉に詰まる。出会ったばっかの子に話してもいいのだろうか。


「私で良ければ、話聞くよ。ベリーさん、いつも明るくて、雰囲気良くしてくれるから好きなんだよね。私も力になりたい」


 リヒトは真剣な瞳で言うが、しかし親しみやすかった。


「っ、そう!?ありがと〜☆えっと……じゃあ……話させてもらうね」


 ベリーは思っている事を話した。


 マリアを好きなこと。凛とマリアが付き合っていること。5人でいても疎外感を感じて、イライラすること。


 話し出したら止まらなくて、恥ずかしいことにベラベラと話し尽くしてしまった。


 リヒトは真剣に、相槌を打ちながら聞いてくれた。


「……うん、そうなんだね。それは嫌だね」

「……うん」

「ふふ、私だったらそんな思いさせないのになぁ」

「えっ?」


 聞き間違いか?ベリーは驚いた。


「だから……マリアさんみたいな高嶺の花じゃなくてさ。私みたいな……普通の女の子にしちゃいなよ」

「っ……」


 その声は、甘く、静かで、低い。その瞳の退廃的な光り。それに今のベリーは、共鳴してしまった。


「はは……そうなのかも。ボクにマリアは見合わないよね」

「そうそう。君にマリアさんは似合わない」


 洗脳するように囁く。ベリーもなんだか納得してきた。


「ねぇ……私とデートしてみない?」


 ベリーの服を摘む。細められた目の色気に、ベリーはくらっときた。


「うん……してみる」


 少し頬を染めて、ベリーは頷いた。


 2人が見える位置の、2階の廊下で。マリアは2人を見下ろしていた。たまたま目に入ったので、成り行きを見守っていたのだ。


(あぁ、ベリーは他の道を選ぶのね)


 マリアは静かに納得する。止めはしない。ベリーの自由だからだ。マリアは人の選択を止めない。


 フィリアが近づいてくる。


「マリア、どうかしましたか?」

「ううん、なんでもないわ」

「……あぁ、なるほど。ベリーさんはその道を選ぶのですね」


 マリアは答えなかったが、フィリアは下の2人に気がついたらしい。


「……そうですか」


 少し寂しそうに目を細めた。


 マリアはスカートを翻し、その場を後にする。フィリアもそれに続いた。

★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


なんかほんとにケイネラっていつの間にか美味しいとこ持ってくから面白いです。そんな予定じゃなかったのに……勝手に動くんです。


ため息が出ますね。良すぎました。進むのが怖かったです。どうなっちゃうのかと。息が詰まりました。私がキスしてるわけじゃないのに。


リヒト〜!!お前お前お前お前…(T_T)やめようよそういうの!!!

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▼マリアの魔性からは、誰一人して逃げられない!!
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