第10話 体育祭③
最後に、ダンスである。
「モモちゃん、頑張るわよ」
「うん!!」
マリアは気遣ったように、モモに声をかけた。
モモは明るさを取り戻していた。マリアは安堵した。
センターはマリアとモモだ。2人が先頭中央で踊る。
俯く。
曲が流れ出した。
まずは2人が同時に顔を上げ、踊り始める。
その圧巻のパフォーマンスに、観客はワァッと声を上げた。とてもキレのあるダンスだ。
(掴みは上々……)
マリアは静かに笑みを浮かべる。
続いて、後ろにいるクラスのメンバーも踊り始める。
後ろは見れない。後は信用するのみだ。
先頭の2人は、かなり激しいダンスにしてある。2人が映えれば、全体が映える。
チラリと横目でモモを見る。
モモは、心底楽しそうに踊っていた。その笑顔に曇りはない。
(良かった……)
マリアは安堵して、自分の踊りに集中できた。
マリアの魅了は止まらない。清々しい程に、誰もがマリアに釘付けだ。
そうして無事、ダンスが終わった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
流石のマリアも、息が上がった。
「モモちゃん、やったわね」
「うんっ!」
2人は清々しい顔で、ハイタッチした。
他の組のダンスの後、表彰がされた。
「ダンス最優秀賞は──────────」
息を飲む。
「────────1-A!!おめでとうございます」
「キャー!!!」
2人は大喜びである。モモは涙を流して、マリアに抱きついた。マリアもモモを抱き返す。
「やったね、やったね……!!!」
「えぇ、やり遂げたわよ、私達!!」
マリアも目尻が濡れていた。
前に出て、表彰を受け取る。
「ありがとうございます」
2人は誇らしい顔で、写真を撮った。
表彰式が終わると、クラスメイトが2人を囲んだ。
「やったな!!」
「最高だった!!」
マリアもモモも満足気だ。
その中から1人、男子がモモに近づいた。
「なぁ……あん時、あんなこと言ってごめんな。モモちゃんのダンス、確かに可愛かったよ」
「っ!!!」
モモは色々な感情が胸の中に渦巻いたが、どれも吐き出さなかった。
ただ、
「……うん、ありがとう!!」
そう笑った。
(……そう、強い子ね)
──────マリアも隣で、微笑んでいた。
〜〜~
ダンスが終わった後、マリアは顔を洗いに水道に来ていた。
そこに、ケイネラがスポーツドリンクを持ってきてくれた。
「マリア、お疲れ様」
「あぁ、ケイネラ。ありがとう」
差し出されたペットボトルを受け取る。
「……君のダンス、とても素敵だったよ」
「あら、そう?嬉しいわ」
マリアは喜色を浮かべる。ケイネラに褒められるのは好きだ。
「……君だけ、明らかに輝きが違った。目を引いたよ。僕は君のことだけ見ていた」
「……?そう、ありがとう」
少し様子が変である。素直に褒めるのはいつもの事だが、なんだか今日は積極的だ。マリアは首を傾げる。
何かと言うと、マリアが凛と仲良くしているのを見て、嫉妬したのである。そして、フィリアとの連帯感にも。
「君は……ポリアモリーだったり、しないの」
「!!」
その発言に、マリアは驚く。マリアは自らポリアモリーであることを選んでいるが、それを他人に望まれたのは初めてだからだ。
「……ふふ。どうあって欲しい?」
マリアは敢えて意地悪を言った。ケイネラの口から聞きたいのだ。
「僕は……。君が、ポリアモリーであって欲しい。そして……」
「……」
ケイネラは一度、言葉を飲み込んだ。
「僕と、付き合って欲しい」
ケイネラは、マリアの目を見て、はっきりそう言った。その目には真剣さと勇敢さが滲んでいる。
マリアは優しく微笑んだ。
「……貴方と付き合えたらいいなって、私も思っていたわ」
「っ!!」
「えぇ、付き合いましょう。よろしくね、ケイネラ」
「っ……うん。よろしくね」
ケイネラはマリアに抱きついた。
「あ、やだ。私汗臭いかも」
マリアは咄嗟にケイネラを優しく押し返す。しかしケイネラは、より強くマリアを抱きしめた。
「気にしないよ、そんなこと。君の匂いが、嫌なわけない」
「でも……」
「いいんだ。今はただ、君を抱きしめたい」
「そこまで言うなら……」
マリアは抱擁を受け入れた。
日陰は涼しいが、抱きつくと少し暑い。2人は汗をかいた。
ケイネラの頬に、汗が伝う。しかしその表情は、満足気であった。
〜〜~
寮への帰り道。フィリアとマリアは2人きりだった。凛とベリーは用事があるから残るらしい。ケイネラは、クラスで話があるようだ。
「……今日は楽しかったですね」
「えぇ、本当に。よく笑ったわ」
フィリアはマリアの横顔を見ながら、話す。マリアは満足そうに語る。
「……凛さんとの借り物競争も、とても面白かったですね」
「ふふ、あれは楽しかったわね。凛ったら、真っ赤だったわ」
マリアは楽しそうに笑う。フィリアはその横顔を見て、少し寂しそうに、視線を逸らした。
そして、フィリアは小さく呟く。
「……僕の事を見てくれてもいいんですよ」
マリアは目を見開く。
そして──────フィリアを抱き寄せた。あまりの愛らしさに耐えられなかったのだ。
「ごめんなさいね、寂しい思いをさせたわ」
フィリアを強く抱き締める。
「……いいんです。貴方が凛さんと楽しそうにしているのは、僕も幸せです。ですが……」
少し躊躇う。視線が揺れる。
「……最後は必ず僕の所に、戻ってきてください」
ほぼ聞こえない声で、秘め事のように、そう言った。
抱き締め合っていたから、聞こえた。
「勿論よ。貴方が私の帰る所よ」
マリアはフィリアの頬に手を添え、真っ直ぐ目を見て言う。
「……ならいいんです」
フィリアは少し恥ずかしそうに、そう言った。
自然と、体が動いていた。
2人はキスをしていた。
触れるだけのキス。
フィリアは息を止める。
少しして、唇を離した。
「っ、は」
「ふふ、貴方、キスの時に息止めたらいけないわよ」
「……すみません、癖なんです」
フィリアは照れたように、唇を軽く抑える。
マリアはもう一度、フィリアを抱きしめた。
「……愛してるわ」
「……僕も、愛しています」
そう告げ合った。
〜〜~
凛は、放課後、ベリーに呼び出されていた。
「話ってなんだ?」
凛はベリーに問う。ベリーは顔を上げない。
「……ねぇ。凛くんってさ。マリアちゃんと付き合ってるんだね」
「……そうだな。付き合っている」
「……そう」
静かな問答。
「……」
「……」
2人は暫く沈黙していた。
「……君を見てるとさ。胸がムカムカする」
「!!それは、」
「イライラもする。どうして自分がそこに居ないんだろうって」
「っ……」
ベリーは低い声で、苛立ちを隠せないように、そう言った。
凛は咄嗟に、声が出ない。
「……なんてねっ!!冗談、冗談!!気にしないで。お幸せにねっ」
「、ベリー」
「あ、ボク課題やんなきゃ!じゃ!!」
無理矢理遮って、誤魔化した。
凛の伸ばした手だけが取り残される。
「、ベリー……」
行き場のない手を、握る。
見てしまったのだった。自分の恋が、人を傷つける瞬間を。
(俺は、どうしたら……)
凛は、悩むことになるのだった。
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ケイネラって気づいたらマリアの隣にいるから私が驚きます。忍者?
ベリーはいい味出しますね。




