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マリア・ファムファタールの楽園(エデン)  作者: 砂之寒天
1年生

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10/24

第10話 体育祭③

 最後に、ダンスである。


「モモちゃん、頑張るわよ」

「うん!!」


 マリアは気遣ったように、モモに声をかけた。

 モモは明るさを取り戻していた。マリアは安堵した。


 センターはマリアとモモだ。2人が先頭中央で踊る。


 俯く。


 曲が流れ出した。


 まずは2人が同時に顔を上げ、踊り始める。


 その圧巻のパフォーマンスに、観客はワァッと声を上げた。とてもキレのあるダンスだ。


(掴みは上々……)


 マリアは静かに笑みを浮かべる。


 続いて、後ろにいるクラスのメンバーも踊り始める。


 後ろは見れない。後は信用するのみだ。


 先頭の2人は、かなり激しいダンスにしてある。2人が映えれば、全体が映える。


 チラリと横目でモモを見る。


 モモは、心底楽しそうに踊っていた。その笑顔に曇りはない。


(良かった……)


 マリアは安堵して、自分の踊りに集中できた。


 マリアの魅了は止まらない。清々しい程に、誰もがマリアに釘付けだ。


 そうして無事、ダンスが終わった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 流石のマリアも、息が上がった。


「モモちゃん、やったわね」

「うんっ!」


 2人は清々しい顔で、ハイタッチした。


 他の組のダンスの後、表彰がされた。


「ダンス最優秀賞は──────────」


 息を飲む。


「────────1-A!!おめでとうございます」

「キャー!!!」


 2人は大喜びである。モモは涙を流して、マリアに抱きついた。マリアもモモを抱き返す。


「やったね、やったね……!!!」

「えぇ、やり遂げたわよ、私達!!」


 マリアも目尻が濡れていた。


 前に出て、表彰を受け取る。


「ありがとうございます」


 2人は誇らしい顔で、写真を撮った。


 表彰式が終わると、クラスメイトが2人を囲んだ。


「やったな!!」

「最高だった!!」


 マリアもモモも満足気だ。

 その中から1人、男子がモモに近づいた。


「なぁ……あん時、あんなこと言ってごめんな。モモちゃんのダンス、確かに可愛かったよ」

「っ!!!」


 モモは色々な感情が胸の中に渦巻いたが、どれも吐き出さなかった。


 ただ、


「……うん、ありがとう!!」


 そう笑った。


(……そう、強い子ね)


 ──────マリアも隣で、微笑んでいた。


〜〜~


 ダンスが終わった後、マリアは顔を洗いに水道に来ていた。


 そこに、ケイネラがスポーツドリンクを持ってきてくれた。


「マリア、お疲れ様」

「あぁ、ケイネラ。ありがとう」


 差し出されたペットボトルを受け取る。


「……君のダンス、とても素敵だったよ」

「あら、そう?嬉しいわ」


 マリアは喜色を浮かべる。ケイネラに褒められるのは好きだ。


「……君だけ、明らかに輝きが違った。目を引いたよ。僕は君のことだけ見ていた」

「……?そう、ありがとう」


 少し様子が変である。素直に褒めるのはいつもの事だが、なんだか今日は積極的だ。マリアは首を傾げる。

 何かと言うと、マリアが凛と仲良くしているのを見て、嫉妬したのである。そして、フィリアとの連帯感にも。


「君は……ポリアモリーだったり、しないの」

「!!」


 その発言に、マリアは驚く。マリアは自らポリアモリーであることを選んでいるが、それを他人に望まれたのは初めてだからだ。


「……ふふ。どうあって欲しい?」


 マリアは敢えて意地悪を言った。ケイネラの口から聞きたいのだ。


「僕は……。君が、ポリアモリーであって欲しい。そして……」

「……」


 ケイネラは一度、言葉を飲み込んだ。


「僕と、付き合って欲しい」


 ケイネラは、マリアの目を見て、はっきりそう言った。その目には真剣さと勇敢さが滲んでいる。


 マリアは優しく微笑んだ。


「……貴方と付き合えたらいいなって、私も思っていたわ」

「っ!!」

「えぇ、付き合いましょう。よろしくね、ケイネラ」

「っ……うん。よろしくね」


 ケイネラはマリアに抱きついた。


「あ、やだ。私汗臭いかも」


 マリアは咄嗟にケイネラを優しく押し返す。しかしケイネラは、より強くマリアを抱きしめた。


「気にしないよ、そんなこと。君の匂いが、嫌なわけない」

「でも……」

「いいんだ。今はただ、君を抱きしめたい」

「そこまで言うなら……」


 マリアは抱擁を受け入れた。


 日陰は涼しいが、抱きつくと少し暑い。2人は汗をかいた。


 ケイネラの頬に、汗が伝う。しかしその表情は、満足気であった。


〜〜~


 寮への帰り道。フィリアとマリアは2人きりだった。凛とベリーは用事があるから残るらしい。ケイネラは、クラスで話があるようだ。


「……今日は楽しかったですね」

「えぇ、本当に。よく笑ったわ」


 フィリアはマリアの横顔を見ながら、話す。マリアは満足そうに語る。


「……凛さんとの借り物競争も、とても面白かったですね」

「ふふ、あれは楽しかったわね。凛ったら、真っ赤だったわ」


 マリアは楽しそうに笑う。フィリアはその横顔を見て、少し寂しそうに、視線を逸らした。


 そして、フィリアは小さく呟く。


「……僕の事を見てくれてもいいんですよ」


 マリアは目を見開く。

 そして──────フィリアを抱き寄せた。あまりの愛らしさに耐えられなかったのだ。


「ごめんなさいね、寂しい思いをさせたわ」


 フィリアを強く抱き締める。


「……いいんです。貴方が凛さんと楽しそうにしているのは、僕も幸せです。ですが……」


 少し躊躇う。視線が揺れる。


「……最後は必ず僕の所に、戻ってきてください」


 ほぼ聞こえない声で、秘め事のように、そう言った。

 抱き締め合っていたから、聞こえた。


「勿論よ。貴方が私の帰る所よ」


 マリアはフィリアの頬に手を添え、真っ直ぐ目を見て言う。


「……ならいいんです」


 フィリアは少し恥ずかしそうに、そう言った。


 自然と、体が動いていた。


 2人はキスをしていた。

 触れるだけのキス。


 フィリアは息を止める。


 少しして、唇を離した。


「っ、は」

「ふふ、貴方、キスの時に息止めたらいけないわよ」

「……すみません、癖なんです」


 フィリアは照れたように、唇を軽く抑える。

 マリアはもう一度、フィリアを抱きしめた。


「……愛してるわ」

「……僕も、愛しています」


 そう告げ合った。


〜〜~


 凛は、放課後、ベリーに呼び出されていた。


「話ってなんだ?」


 凛はベリーに問う。ベリーは顔を上げない。


「……ねぇ。凛くんってさ。マリアちゃんと付き合ってるんだね」

「……そうだな。付き合っている」

「……そう」


 静かな問答。


「……」

「……」


 2人は暫く沈黙していた。


「……君を見てるとさ。胸がムカムカする」

「!!それは、」

「イライラもする。どうして自分がそこに居ないんだろうって」

「っ……」


 ベリーは低い声で、苛立ちを隠せないように、そう言った。

 凛は咄嗟に、声が出ない。


「……なんてねっ!!冗談、冗談!!気にしないで。お幸せにねっ」

「、ベリー」

「あ、ボク課題やんなきゃ!じゃ!!」


 無理矢理遮って、誤魔化した。


 凛の伸ばした手だけが取り残される。


「、ベリー……」


 行き場のない手を、握る。


 見てしまったのだった。自分の恋が、人を傷つける瞬間を。


(俺は、どうしたら……)


 凛は、悩むことになるのだった。

★評価、ブックマーク、コメント、レビュー、リアクションお待ちしております。よろしくお願いします。


ケイネラって気づいたらマリアの隣にいるから私が驚きます。忍者?

ベリーはいい味出しますね。

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― 新着の感想 ―
恋が人を傷付ける。この回から、どうもみんなの関係が崩れ始めた気がするのだ
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