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国王就任と別れ

あれから1ヶ月ほど経過した風の都……流星の魔術団という名前はこの街、国では知らないものは居ないほどに知れ渡っていた。

シーナとミアはメイド見習いではなくメイドとして認めてもらい、ユーノに魔術をちらほらと教えて貰っていたらしい。

正人は自分でダンジョンに潜っては自身の炎魔術の強化訓練。ユーノは記述の通りシーナとミアに魔術を教えながらネクスやリョウの仕事を手伝っていた。

「見て見て正人〜!料理も結構マシになったでしょ?」

「んお、うまい」

「でしょでしょ〜?サラさんに教えてもらったのよ!」

「あんなダークホールみたいな飯からこんな綺麗な飯が作れるようになるなんて……なんか感慨深いな。」

「なに?嫌味?」

「事実」

「……もっと美味しくしてやるんだから!」

悔しそうな顔をしながらも、正人に美味いと言って貰えたのが嬉しいのか少し照れくさそうに鼻をふんっと鳴らしながら言うシーナ。

「本当によく頑張ったね。シーちゃん」

「へへぇ〜」

ミアは母親のように成長するシーナを見守っていたとか……。

「それで、ユーノは?」

「あ〜、それなら今朝ネクスの国王就任のために少し用事があるって出てったわよ」

「そうか」

「意外と早かったですよね。時期国王就任……」

「まぁな〜……あの人望を持って毎日あんなに頑張ってたらそりゃ父親のハックも認めるよ」

「……ですね」

いよいよ今日はネクスの国王就任という大事なイベントだ。本来なら半年以上はかかるという話だったらしいのだが……ネクスの人望、仕事に対する熱意と覚える速度が異常に早く、ハックはこれなら大丈夫だろうという判断を下したらしい。

だがハックは身を引くのではなく、ネクスのサポートとしてやっていくとの事。まぁ仲良くやっているのなら何よりだ。

リョウはハックの護衛をしつつ、ネクスをサポート。

(よくよく考えたら……この国とんでもなくなるんじゃねぇか?)

正人はそんなことを考えながらコップに入っている紅茶を手に取り口に運ぼうとして……

「入れてあげるわ」

「悪いな。ありがとう。」

空っぽになっていたコップにシーナが注ぎ、口に運ぶ。1口飲んだところでコップを机の上に置き……正人は窓の方を眺めた。

「もう、この街ともお別れだな」

「そうね。まぁ私達はこれといって何もしてないけど」

「んなことねぇだろ。飯覚えて魔術覚えたじゃん」

「言っちゃえばそれくらいよ。あんた達みたいに大層なことしてないわ」

「俺は別にそんな大層なことしてねぇよ?」

「この街のダンジョンをほとんど一人で攻略したのは大層なことだと思うけど?」

「……」

「お陰で流星の魔術団って名前はものすごく広がったのだけれど?」

「……そっすね」

「でも……いい経験になったじゃないシーちゃん」

「まぁそれもそうね」

メイド服を着ながら腰に手を当てていうシーナにも見慣れて正人は肩をすくめる。

「正人さん……近頃なんて言われてるか知ってますか?」

「ん?何どういうこと?」

なんて言われてるかってどういう事なのか……悪い評判でも流れているのか?と思いながら首を傾げる。その様子を見てシーナは額に手を当ててため息を吐きながら答えた。

「青炎の魔術師……あんたの異名よ」

「……青炎の……魔術師?」

何その厨二チックなあだ名は……とジト目を向けるが……

「あんた炎魔術しか使ってないんでしょ?それに青い炎なんて珍しいからみんなそう呼ぶようになったのよ」

「……なるほど、ちょっと恥ずかしいな」

「凄いことなんですよ?正人さん……」

「そうなのか?」

「異名なんて冒険者になってすぐ手に入るものじゃないからね。有難く思った方がいいわよ」

「……そう言われてもなぁ」

恥ずかしいものは恥ずかしいという思いが込み上げてきていた。だがまぁ、これで流星の魔術団を知ってもらえるのならいいかと思い直し、正人は自室へ戻ろうと立ち上がる。

「とりあえず、荷物まとめて着替えてくるわ。お前らも準備しろよ」

「はーい」

「わかりました」

正人の言葉に2人は返事をしてそれを聞きながら部屋へと戻った。



玉座にて、ユーノとハック、リョウ……そして本日の主役のネクスが立っていた。玉座の後ろの扉を開ければ国民を見ることが出来る場所へと出られる。当然、今国民達はその玉座から顔を出すのを待っているという状況だ。

「すごいですね……風の都がネクスさんを待っていますよ」

「ああ……こりゃやべぇな。熱気がこっちまで伝わってくるぜ」

ユーノの発言にリョウも頷きながらネクスへと視線を向ける。当の本人は二人の会話はほとんど聞いておらず深呼吸。

「ネクスよ……今日からはお前がこの国の王に立つ。その意味がわかるな?」

「はい。この国の顔となり……国民を安心するために──」

「違う」

横から水を指すようにハックは言って思わず目が点になる3人。

そして、窓の外を眺めて下にいる国民を見てハックは言った。

「確かに……お前の言っていることは大事だ。先祖含めて我々が積上げてきたものがある。だが、全員自分のつくりたい街、そして国をつくってきた。今度はお前がその番ということだ。」

「……っ!?」

父親の言葉を聞いて……ネクスは目を見開く。

「お前のその人望なら……今までで一番の風の都を築けるだろう。わしは期待しているぞ。ネクス・ヒューロン」

真摯に告げられ、父親の目をじっと見つめながら……ネクスは答える。

「はい。ありがとうございます。ハック殿下」

そういった所で、一人の兵士がネクスに近づき……

「そろそろ時間になられました……準備はよろしいですか?ネクス様……いや、ネクス殿下」

「あぁ……いつでもいいぞ」

そして……玉座の後ろの扉が堂々と開き、国民の叫んでいる声が直に響く。

「ネクス!ネクス!」

「ネクス!ネクス!」

国民全員が口を揃えて名前をいう始末……それに少しニヤつきながらも、ネクスは高々と宣言するように手を上にあげた。

「我はハック殿下から国王の座を受け継ぐ……ネクス・ヒューロン!風の都をよりよい国にし、貴殿の自由のために、尽力すると誓う!我にもまだ至らないところは多々ある!その時は、どうが力を貸してほしい!!」

一拍置き……

「現在の時刻を持って!ネクス・ヒューロンは、風の都の国王に就任する!」

ネクスが宣言し……2秒ほどの沈黙が続いた。ネクスは下にいる国民を見た瞬間。

全員が一斉に声を上げて言った。

「期待してるぞー!!!」

「困った時はお互い様だー!!!」

「ネクス殿下!!バンザーイ!!!!」

あちこちでそのような言葉が飛び交い、思わずネクスは笑みがこぼれる。

その様子を下で見ていた正人たちは……

「なんか、凄いネクスらしかったわね」

「そうですね。私はすごくいいと思います」

「そうだな……まぁあいつの良さが全部詰まってたんじゃねーの」

苦笑しながらも話していた。

国王が国民に助けを求める……一見おかしく見えてしまうだろうが、これが本来の人間のあり方なのだろう。

困ったらお互い様。手助け。それは巡り巡って自分の所へとくる。ネクスは身をもって知ったはずだ。その巡り合わせが、今のネクスをつくり、国王の座に来たのだから。

と……そんなことを思った矢先、ネクスは今いる場所から大声を上げて……

「そして!正人!シーナ!ミア!ユーノの4人……流星の魔術団には助けられた!命の恩人と言ってもいい!!!もし、見ていたらすぐに俺のところに来い!!!!」

「マジか……」

「そこでいう?普通……」

「私は……いいと思いますよ……?」

「嘘つけよ」

そう言っても、国民のみんなもネクスの言葉に頷いていた。

「そうだ!!あいつらには色々な所で助けられた!!!」

「礼を言わせてくれー!!」

国民全員が流星の魔術団といい、気恥しさを感じながらも3人は王宮の方へと足を運ぶ。



「お前、よく言ってくれたなネクス」

「ああでもしないとお前らこの街を出るだろ?」

「げっ……なんで知ってたのよ」

「なんとなく分かんだよ」

「ユーノさんのお荷物はこちらです」

「ありがとうございます!ミアさん」

玉座にて、全員がネクスを囲うようにして話していた。

正人は少し、気恥しそうにしながらもネクスに言った。

「改めて、国王就任おめでとう」

「「「おめでとう!!」」」

正人の言葉に続いて3人もお祝いの言葉をかける。

ネクスは頬をポリポリとかき、視線を逸らしながら答えた。

「こっちこそ……ありがとよ。さっきも言ったがお前らには本当に助けられた。お前らがこの街に来なかったら一生俺はクズだった。」

そこまで言って、正人たちを見ながら真摯に告げる。

「だが、お前らに変えられた。お前らがもし何かあったり、困ったことがあれば……風の都が総動員で助けに行く。これが、お前との約束だったな?正人」

「そんなこと言ったか?」

視線を逸らしながらいう正人に対してネクスは微笑し、他のメンバーもつられて笑う。

「正人……俺からも1つ礼を言わせてくれ」

リョウは肩を竦めながら正人に言った。

「ネクスを……俺を……この街を、救ってくれて感謝する」

「大袈裟ですよ」

そう言って、互いに握手を交わす。

「それでは、長いもあれですし僕たちもこの街を出ますか!」

「そうね!次はどんな待ちなのかしら!楽しみだわ!」

「えっと確か……海底の都でしたっけ?」

「ええ……海底の都は意外とすぐ着くと思うので安心してください」

ひとつの物語が終わり……またひとつの物語が始まっていく。正人達も……ネクス達も……それは変わらない。互いに別れを惜しまず、風の都から去っていく流星の魔術団を目に、国民全員が総出で手を振り、その先頭ではネクスが手を振っていた。

その両脇には最強の護衛と、ハック元国王。正人たちにはものすごく心強い味方がついてくれた。きっとこれは今後に必ず響いてくるだろう。

流星の魔術団も、それは何となくわかっていた。

そう考えながら新しい冒険にワクワクしながら足を運ぶ。



天空の都……玉座の間にて。

「確かもうそろそろ……世界中の王族が集まって会議が開かれるが、風の都の王が変わったらしいな」

「ええ……現在は息子が引き継いでいるようです」

「ほう……息子は国王にしないと言っていたハックが……」

「噂によると……ひとつの冒険者パーティが関わっていると。なにもそのパーティには『ユーノ』がおり、『青炎の魔術師』の異名を持つ魔術団がいるとか」

「そうか……ユーノは知っているが青炎の魔術師は聞いたことがないな。」



天使の都にて……

「あのアタギ・カイの息子がついに動いたか」



森の都にて……

「流星の魔術団……面白い冒険者パーティが現れたものですね」



地獄の都にて……

「こりゃ~また、大変なことになりそうだなぁ……」



白髪の青メッシュのフードを被った男性……

「俺たちが風の都に出したダンジョンを全て一人で攻略か……やはりお前は完璧すぎたんだよ。久遠 正人。いずれお前は俺のところにたどり着く。その時、全てを教えてやろう」

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