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日本一のプロゲーマーが異世界転生したら意味わからん強さしてました   作者: Mini
第2章 風の都

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ネクス・ヒューロン

俺はずっと…優秀だと思ってた。

勉学でも、魔術でも…誰にも負けたことはなかった。父親も母親も俺のことを褒めてくれていた。

『ネクスは偉いわね。将来は立派な国王になるわよ。』

『お前はこの国で立派な王になる男だ』

俺もそれを望んでいたし、このままいけばなれると思っていた。


でも、なれなかった。


この世界で1番の魔術学園と言われる場所に入学をし…俺は出会ってしまったのだ。『ユーノ・アタギ・カイ』という人物に…。

そこからずっと…1位だった人生から2位へと転落。何も上手くいかなくなるような気分だった。何をしてもダメで…裏目に出てしまうような、そんな気分。

どれだけ努力を積み重ねても埋まらない差。ましてやどんどんその差は広がっていく。

周りの人間は俺のことを天才と言っていたけど…違う。俺は天才なんかじゃない。天才はユーノにある言葉だ。ユーノの両親の贔屓かと思っていたがそれも違った。ユーノの両親は年に一度しか顔を出さない。そしてすぐに違う街へと旅立つ。こいつは…親に助けてもらわず1人の力で生きてきたんだと理解した。


『どうやったらこいつに勝てる』


そこから俺はずっと…このことだけを考えて生きてきた。今まで俺も1人だった。でもそれじゃあダメだ。ならどうするか。仲間をみつけよう。上辺だけでもいい。あいつがずっと一人なら…俺は仲間を作り、ひとつでも勝てる所があればそれでいい。そう思った。

母親はいつも優しかったから許してくれた。だが父親は…

『ダメだ。首席で卒業出来なければ次期国王の座は剥奪だ。』

ならどうすればいい。どうやったら…俺はユーノに勝てるんだ。

どんな試験でも一歩届かない。

その一歩が…とてつもなく大きい。

ユーノの魔術はどれも重みが違った。そして何より綺麗で丁寧だった。

いつしか俺は…勝てないんだと思い込むようになった。

でもその代わり、仲間には恵まれた。本当はこんなのどうでもいい。だがひとつでも勝たないと気がすまなかった。

生憎と…ユーノの魔力の特性は対面する人物に殺意をむき出しにするという意味のわからないもののおかげで俺はユーノより人気があったと思う。

特性とわかっていても、その殺意は本当に殺されると思うほどのものだった。俺も何度か話しかけようとはしたが、無理だった。

月日が経ち、卒業試験での出来事。

俺が2位でユーノが1位。勝てばその順位が入れ替わるという所まで俺は成績を上げた。

スタジアムのような場所で、俺とユーノが立ち…その座をかけて戦いが始まる。

「今から卒業試験を始める…!」

審判役の先生が合図を出し、俺はすぐに魔術を出そうとした。

「『雷鳴よ』」

なんとも分かりやすい真上からの攻撃。俺は体を右に反らしながら避ける。だが先程までいた場所に視線を戻すとユーノの姿はなく…次の瞬間には俺の背後へと周り水で生成された剣を突きつけられていた。

「…っ!?」

やはりこいつは化け物だ。最初の雷は俺の動きを誘うため、視線を一瞬逸らした隙を逃さずこいつは俺の背後をとった。

勝負は…一瞬だった。

「…俺は、お前に何も勝てない」

思わず言葉をこぼしてしまった。この時も俺は人脈…仲間という面では負けていなかったしむしろ圧倒していた。でも満足できなかった。

勉学でも、魔術でも…才能でも負けて。

本当は、人脈よりも…お前みたいな強さが欲しかったんだ。

俺が言葉をこぼしても、ユーノは冷たい目を向けるだけで俺に何も…言葉をかけなかった。


結局、俺は2位で、首席はユーノだった。案の定父親からは次期国王の座は剥奪され…その代わり奴隷のようにその下の直属の部下として働くことになった。

「この出来損ないめ。お前は大人しくわしに従っていろ」

「はい…」

俺はゴミだ。学園に通っていた時間全てを費やしても…勝てなかったゴミクズ。

だが父親はそれ以上のノミだ。

学園でも父親の評判は酷かった。始まりの街でも酷かったのだから自国である風の都はもっと酷いものだ。

国民からは自分のことしか考えていない。闇が最も多い国…とも言われている。

だが学園の人間は父親の評価は変わらなかったが俺の評価は変わった。

ユーノに勝つために作った人脈や仲間作りというのは上手い具合に噛み合った。

そのおかげで風の都の民からも俺に対してのマイナスな意見はだいぶ減っていた。

そしてそういう理由もあってか俺は父親から国と国を繋ぐ情報屋の仕事を頼み、そこで出会ったのが『リョウ』という人間。

持ち前のコミュニケーション能力ですぐに仲良くなった。互いが互いを信用しあい、俺は魔術を教え、リョウは剣術を教えてくれた。

「お前、魔術の才能より剣の才能の方がすげぇかもしれねぇぞ」

「…剣術か…」

正直あまりピンとは来なかった。やればやるほど腕はついて上達しているのはわかるのだが…剣術より魔術の方で勝負したいと思ってたからだ。でも…ひょんな事からその剣に魔力を込めるだけで魔術が出せることに気がついた。

「お前これ、簡単に出来るもんじゃないぞ!?」

当然、リョウも驚いていた。どうやらここまでに至るまでにかかる時間は3年程…それを俺は1ヶ月程度で出来てしまったのだ。

そこから俺は剣術に魔力を取り入れるのを極め…剣を抜かずとも触れるだけで魔術を出すという所まで成長した。


そのすぐのこと…だった。

母親が死んだ。死因は不明。医者によると解毒が不可とされている未確認の病気…ということらしい。

泣いた。とにかく泣いた。ずっと、ずっと優しかった母親が死んで…俺は何も出来なかった自分を恨んだ。もっと母親に出来たことはあったのではないか。

もっと話した方が良かった。

もっと…もっと……。

大切なものは…いつも失ってから気づく。

そこからがケチのつけ始めだ。

母親が死んで1週間と経たないうちにリョウは大事な仕事でしくじり、妻と子供を失った。その日以来…俺はリョウと会っていない。

父親もそこから…ストッパーが外れたように好き勝手するようになった。俺も母親を失ったことにより自暴自棄になり、女をくい漁るようになった。

ユーノにも勝てずに、母親を失い、何も考えたくなかった。

父の言うことだけを聞いて、大人しくしてようと思ってユーノの屋敷の仕事が来た時、俺は迷いなく受けた。

もし、あいつが帰ってきた時はぐちゃぐちゃにしてやろう。乗っ取ってやろうと考えた。

でも…この屋敷の奴らは全員、俺に優しかった。

どうして優しくするのか…どうして俺を恨まないのか。

答えはわかっていた。学園での行いが、この人らにも伝わっていたからだ。

ユーノと親しくしていなかったのに…おかしいだろうが。

そしてすぐ転機は訪れた。

この街にユーノとその仲間がくる。父親はすぐに俺を呼び出して悪魔の囁きをしてきた。


「ネクス、この街にユーノとその仲間が来ているらしい。そいつらを殺せば、次期国王の座を与えよう」

「本当ですか!?」

「ああ…ユーノはこちらで対処しよう」


次期国王…もうなれないと思っていたものが、今…また目指せる形になった。時期国王になるためにずっと頑張ってきたんだ。当然…こうなれば指示に従うに決まっている。


現れたユーノの仲間…一人は気が強く、俺の気持ちを悟ったように話す赤髪の奴。そして一人は銀髪で物静かだが信念がはっきりしているやつ。

三人目は俺の前に立ち塞がり、圧倒的な魔術を見せて来たやつ。魔力総量だけで見ればユーノよりも凄まじい。そんなすごいヤツらと俺は手を組んだ。

父親の悪魔の囁きを利用して殺そうとしたのに…こいつらは俺に手を差し伸べてくれた。

それが…心から嬉しくて……。

だからこそ、父親のやっていることは間違っていると正面から言いたい。

だが、怖い。母親とは沢山話したことがあるが父親とは報告事をする時しか話したことない。だから…ちゃんと話せるかはわからない。

時期国王になるために。俺は覚悟を決めないといけない。



次の日になり、正人が予定通りリョウをこの屋敷へと連れてきていた。

「…なんだこの豪華な屋敷は!?」

「俺の仲間の屋敷です。どうぞ上がってください」

「マジかよ…メイドと執事までいやがるじゃねぇか…」

伝えられていた場所へと足を運んだリョウは目を丸くして驚いていた。気持ちは凄くわかる。最初同じことを思っていたから。

「すぐ慣れますよ」

「慣れてるお前が怖いよ」

そういいながら玄関を進み、メイドと執事が前に歩き…リョウと正人は隣を歩く。

だんだん広間へと近づき、正人は軽く昨日のことを振り返っていた。

(ネクスがリョウと知り合いって知ったから思い切って誘ったけど、これよく考えたらまずくねぇか?)

二人とも同じ情報屋で知り合いなのは問題じゃない。リョウは仕事をミスして子供と妻を殺されている。それ以来会ってないとなると、気まずいったらありゃしない。うん…ダメだ。ぜ〜んぜんダメだ。ユーノを助けるために必死だったせいか考えたらすぐわかることが頭から抜けていた。こんなこと、生きてきた人生で一度もない。正人は心の中で額に手を当てて頭を振った。

(俺としたことが…マジで馬鹿だ)

この世界と人間世界では勝手がちがう。この先色々なことに直面するだろう。人間世界じゃありえないことなんて何度も訪れる。

(切り替えろ…もう二度とこんなことは無いようにしないとマジでやべぇことになるぞいつか)

そんなことを考えていると広間の扉の前まで着き、メイドがその扉を開けようと手をかざした。

「ちょっと待ってくれ」

かざしたタイミングでリョウガ怪訝な顔をしながら声を上げた。

「どうしましたか?」

正人は肩を竦めながら聞く。きっと…この先に誰がいるのかなんとなく分かったのだろう。

リョウの顔はかなり引き攣っており、正人はまずいと思い二人で話そうかと提案をしようとした…のだが──。

「いや、何でもない。覚悟は出来てる」

引き攣っていた顔を軽く振り、切り替えた様子で答えるリョウ。

それに少しほっとしながらも内心で謝罪をして、その扉が開く。

長いテーブルにミア、シーナ、そしてネクスが座っており…扉が開いた正面にネクスは座っており…リョウとネクスは目が合ってしまう。

逸らしたいという思いはあったのだろう。それは扉を開ける前にから明らかだ。でも…リョウは覚悟出来ていると言っていた。逸らしたいはずの視線をぐっと視界に捉える。それはネクスも同じだった。あの日以来…二人は会っていないのだから…。

正人とリョウが部屋に入り、執事が扉を閉める。数秒の沈黙が続いた後に、先に口を開いたのはリョウだった。

「久しぶりだな…ネクス」

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