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王族と貴族

「シーナ様とミア様には、屋敷の問題について解決して欲しいのです。」

「「屋敷の問題?」」

ミアとシーナは同時に首を傾げて執事長であるロイに尋ねた。

「はい…つきましてはこちらのメイド副長のサラより、お話があります。」

ロイの隣にすっと姿を現したのはメイド副長…音もなく現れたので正人を含める3人は少し目を見開く。そして綺麗なお辞儀をして自己紹介を始めた。

「ご紹介に預かりました。ここのメイド副長をしております…サラ・グラッドと申します。以後お見知りおきを。」

執事長の年齢がパッと見で40代くらいか…それに比べるとこのサラというメイド副長は20代後半と言ったところだ。長い金髪にポニーテールをしたその綺麗な髪に見とれてしまっていたミアとシーナは慌てて自己紹介をする。

「わ、私はシーナ・アングレアと言います!よよ、よろしくお願いします!」

「ミニ・フラストレアスです。よろしくお願いします。」

ミアはスっと自我を保ちながら挨拶をするのに対してシーナは学校で自己紹介をする時のように恥ずかしそうにする挨拶に正人は額に手を当てる。

メイド副長のサラはそんな様子を気に止めることなく、この屋敷の現状を話した。

この屋敷は王族の力というものでその仕いがこの屋敷の権力を握っているということ。毎日夜19時に帰ってきては主導権を使い、1人のメイドを裸にさせて仕事をしたり少しでも逆らったり意見を言ったりすればその時の機嫌次第で殺すらしい。その話を聴けば聴くほど目頭に力が入り、怒りを顕にしているシーナ。ミアは顔を背けていた。

メイド副長であるサラとロイは続けてシーナとミア、正人にどうして欲しいかの話をしていた。

「ミアさんとシーナさんは新しく入ったメイドとして勧誘し、その人物…ネクス・ヒューロンの動きを監視して欲しいんです。」

「監視ですか?ロイさんや他のメイドさん達では出来ないのですか?」

怪訝な顔をしながら聞いてくるシーナにロイは頷きながら答えた。

「わたくし達は19時になると人権が無くなるのも同然の扱いをされます。ですが新しく入ってきたものは別で、メイドの在り方などの作法を習います。」

「なるほど…今新人と呼べる人材が居ないので私達がその役に適任というわけですか。」

「はい。ユーノお坊ちゃまの仲間でありご友人なのに差し出がましくて申し訳なく思っています。」

ロイとサラは深く頭を下げながら謝罪。きっと本当に申し訳なく思っているのだろう。シーナとミアは頭を下げているふたりに宥めるようにして謝罪を辞めさせる。

「大丈夫ですよ!こういう時に助けるのが仲間の仕事ですから!」

笑顔で言うシーナに周りにいる執事やメイド達も鼻を啜りながら「ありがとうございます」と述べる。

「それで…私とシーナは今すぐにメイドになるのですか?」

「いえ…19時まではごゆっくりとお過ごしください。ネクスが帰ってき次第、あなた達二人をご紹介し、そこからメイドの服に着替えてもらいます。」

「「分かりました」」

了承し、シーナとミアも案内された部屋へと足を運んで荷物を置く。

メイドや執事が居なくなったのを確認し、二人は軽くため息を吐きながら顔を合わせる。

「冒険始まって最初の街でやることがメイドなの?」

「しょうがないよ…ユーノさんを助けるためだから少しは我慢しよう?」

「う…うぅ…わかったわ」

ミアの言葉に渋々頷き、窓の方に駆け寄り叫ぶように声を上げた。

「ユーノのバカぁぁあ!」

「シ…シーちゃん!?」

シーナの思わぬ行動にミアは目を見開く。

「正人もユーノも!自分のことを話さなすぎよ!」

「それは…私達も言えないと思うけど…」

「そうかもしれないけど!正人はともかく王族とか貴族とかと交流があるユーノは別じゃないの!?」

「そ…それは…」

ミアは黙りこくってしまう。ミアも同じことを思っていたのだろう。どうして仲間である私たちに言わなかったのか。なにか言えない理由があったんじゃないかと…そこまで考えた所で、シーナは続けて言った。

「しかもメイドの服着るの嫌だ!」

(絶対シーちゃんこれが理由で怒ってる…)

それに気づいてからは何も言うことはなかった。

だがしかし…思ったより面倒なことに巻き込まれているらしい。

執事長がいうにはユーノは囚われの身…そしてユーノの家系の強大すぎる力に怯えて屋敷に仕いをよこした。その仕いはここの屋敷の人間よりも強く逆らえない。シーナとミアはその仕いの動向を探るようにこの屋敷のメイドに。正人はと言うと詳しい話は広場ではされなかった。

なんとも不気味だ。

嫌な感じがする。

それは流星の魔術団である3人がそう思っていた。

ミアは少し考え込むようにしてから怒りと恥ずかしさが混じっているシーナに向けて一言…

「とりあえず、正人さんの部屋に向かう?」

「そうね…3人で1度話してもいいかもしれないわね」

そう言ってシーナとミアは何も持たずに部屋を出て正人の部屋へと向かった。




風の都王宮…玉座では…

「ハック王…ユーノを捕え、地下の牢獄に幽閉完了しました。」

「…うむ。アタギ・カイの仲間がその屋敷に向かったと情報が入ったらしいがそれは誠か?」

「実は、それがまだ分からないのです。連絡を入れた所メイドのひとりがそのような事実はないと…」

「ならば19時ではなく2時間はやめてネクスを向かわせろ」

「…ハッ!」

ビシッと姿勢をただしてお辞儀をする兵士。王であるハック・ヒューロンの背は低く、ずんぐりむっくりという言葉が似合う言葉。髪の毛はなくツルッパゲで鼻の下に髭がくるんと生えている。なんとも典型的なダメ王様な見た目だ。

報告した兵士が玉座の部屋から出ていくのを確認し、隣にいる直属の兵士に王が尋ねた。

「ユーノは今何している」

その言葉に直属の兵士は魔術でモニターのようなものを展開しそれを王様に見せた。

「ほう…特に何も感じていない様子か。」

囚われるのを覚悟していたような態度に腹が立ったのか睨みつけてぐぎぎと歯ぎしりを立てながら…

「ユーノ・アタギ・カイ…両親共々に優秀で非の打ち所がない魔術師…わしはそれが気に食わなくてしょうがない。貴族の息子がわしの息子を容易に超えるのは納得ができん」

怒りを出しながらグイッと近くの兵士を睨みつける。

「…はい。人族…いや、どの種族よりもヒューロン家が優れています」

「ホッホッホ…そうじゃろうて。わしの先祖が偉業を成し遂げ風の都という名前をつけたが、わしはこの国の名前をヒューロン王国に変えようと思っとる。」

「しかし…それはヒューロン家の風習を壊すのでは──」

「『燃えろ』」

1人の兵士が意見を述べ、言い終わる前にハック王は魔術でその兵士を燃やし焼身させ殺した。静かな玉座に響く倒れ込む音…それを見ないように顔を背ける兵士たち。

「王様は王様だ…過去などは知らん。今…我々が何を成すか。それが重要なのだ」

萌えてちりになったのを見て不敵な笑みを浮かべながらいうハック。そして再度ギロッと並んでいる兵士を睨みつけて…

「良いか…我は王だ。貴族であろうがわしの側近だろうがこの国で王に逆らうものは万死に値する。」

「「「「ハッ!!!」」」」

兵士たちが一斉に態勢を整えて金属の音が部屋に鳴り響いた。

その光景を見て「良い良い…」といいながらくるんとしている髭を親指と人差し指で触りながら言った。

「ユーノをわしの奴隷として扱うのもよし…痛みつけて殺すのも良いな。映像ではなく実物を見に行こうかの。」

座っていた玉座から降り、兵士の案内の元ユーノのいる地下牢へと向かう。



地下は石で出来ており人の足音が聞き取りやすい。そのためユーノのレベルになると男か女か…年齢はどれくらいなのかというのはすぐ分かる。

そして3つの足音が聞こえて牢屋にいるユーノはすぐに気がついた。

(金属の音が2つと普通の足音がひとつ…王とその側近か)

そう考えた直後、ユーノが入っている牢屋の扉がガラリと開いた。

「ユーノ・アタギ・カイ…国王が直々に挨拶しに来た。」

「…」

ユーノは何も言わずに立ち上がり、兵士の後ろからずんぐりむっくりな王様が姿を現す。

「これはこれはどうもユーノくん…申し訳ないねこんな形で挨拶してしまって。」

なんとも気持ち悪い上辺だけの言葉。反吐が出そうになる。その気持ちをグッとこらえ、貴族らしく、高貴に振る舞うユーノ。

「お初にお目にかかりますハック・ヒューロン陛下。わたくしの両親…アイナ、ルーノがお世話になっています。」

左膝を地面に着けて右手を胸の前にし顔を軽く下げるユーノ。現在魔法も魔力も使えない状態というのもあり、今現段階ではハックの靴しか見えない。

ニヤリと笑みを浮かべてハックは右足を上げてユーノの顔面を蹴り飛ばした。後ろにある藁まで飛ばされたユーノはよろけることなくまた同じ姿勢に戻す。

ハックはフンッという音を鳴らしながら言葉をこぼす。

「やはり気に食わん…今のも避けようと思えば避けれただろう。その上から目線のような態度が気に食わん。お前の親もそうだ!」

「…申し訳ございま──」

「黙れ!今わしの部下がお前の所有する屋敷に向かっておる…わしはずっと決めていた。お前がこの街に来たらその屋敷を消すとな!」

「…っ!?」

顔は地面を向けていながらも少し動揺するユーノ。それを見ていたハックはすぐに気づき、肩に手を置いて耳元で囁いた。

「お前の仲間も今日限り…次に会う時は墓だろうな?」

その言葉を聞いた瞬間…ユーノは気がつけば殴りかかっていた。ハックはすぐに魔術を唱えて防御魔法を展開させる。

「何故だ!僕を殺せばいいだろう!!!」

バリアのようなものを素手で叩きながら怒号するユーノを見てハックはますます嫌な顔をうかべてバリアを勢いよく押してユーノを藁に叩きつけた。

「わしが見たいのはお前の悲惨な姿ではない。仲間が苦しんでいるところを見るところだ」

なんとも屑のような返答が帰ってきてユーノは絶望した表情になる。

「お前の両親に苦しめられたわしの気持ち…そしてお前が与えたわしの息子の気持ち。それと同じ苦しさをお前もそこでゆっくりと味わえ」

ニヤリと笑みを浮かべて告げたハックはスッキリした顔でこの地下牢を去った。

「……クソッ!」

藁を思いっきり殴り地下牢に響き渡るユーノの声。

これはユーノが想定していたより、大事になっているのかもしれない。

甘く見てしまったと…ユーノは理解した。

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