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奇妙なダンジョンに奇妙な人達

「あ、出来た」

「え…!?もう出来たの!?」

街へと向かっている道中、正人はユーノに与えられた課題をこなしていた。小さいボールを出す。この簡単な課題が出来なかったのだ。正人は強大すぎる魔力の制御ができず、どれだけ小さいボールを作ろうと思っても物凄くでかい正人の身長の2倍程度の大きさのボールが出来てしまっていた。

しかし…30分もしないうちにその課題はクリアしてしまった。

(これ、魔力操作の訓練に最適だなマジで)

正人は感心していた。小さければ小さい程魔力の操作が上手くなる…という訳では無いが、構築魔法を極めていけば化けるのを知っていた。

例えば物凄く小さな魔法を飛ばしたと思わせて実は核兵器並の威力のある魔法でした…とか。魔法陣を偽造させるとか…挙げたらキリはないが他にもできることは色々とあるのだが。…気になっているのは全員が立ち止まって正人に懐疑的な目を向けていることだ。

「……どした?」

「あんたずるしたでしょ?」

「いくらなんでも早すぎじゃ…」

「もう一度、見せて貰えますか?」

マジで疑ってた。さっきまでバカでかいボールが作られていたので無理はないが、少し正人としても悔しかったし悲しかった。

「あぁ…まぁ、いいけど……」

怪訝な顔をしながら少し手に魔力を込めて小さいボールを構築する。

「っと…こんなもんだな」

正人の掌の上には野球ボールよりも一回り小さいボールが乗っていた。

「すごいですね!正人さん」

そのボールを見て信用したのかミアはものすっごくいい笑顔を向ける。ユーノは正人の成長速度に驚きながらも賞賛していた。

そして…シーナは…

(悔しい!正人に勝てる気がしない…)

ぐぎぎっと奥歯をかみ締めてて悔しがり、触発されて子猫作りを再開した。

「本当に凄いですね…1日はかかってもおかしくない課題だったんですけど…」

「そんなに難しいのか?」

「ええ…まぁ、それなりに」

苦笑を浮かべながら返すユーノに少し頭を傾げる正人。その正人を見てユーノは続けた。

「シーナさんも才能がすごいんですよ。冒険始める前に魔法ランクBは正直いってずば抜けてます。特に、魔法学園を通っていたとしてもほとんどがCランクスタートなんです。」

「やっぱりそうですよね?シーちゃんはずっと凄いんですよ?」

(…なるほどな)

ミアもこの反応をしているとなるとお世辞でもなんでもなく本当のことなのだろう。正人もシーナのポテンシャル…かは分からないが気づいていた。シーナ・アングレアという人物を演じているような感じ。天才なのにそれを表に出さない。そして未完成だったが上級魔法を1度使っているところを見ている。

(俺と似ているのか似ていないのか…わからんな)

きっと似ている。でもどこか抜けている所があるのも事実。だからこそ…シーナになんて声を掛けてあげればいいのか分からなかった。

「まぁ要するに、あなたが異常なんですよ。正人さん」

正人は「ハハハ」と誤魔化すように言って肩を竦めた。

「んで、俺の次の課題は?」

「ん〜…そうですねぇ…」

今回は少し長考している様子。それはそうだ…1日はかかってもおかしくないと言っていた。寝る前や夕ご飯の時にでも考えようとしていたのだろう。

(正人さんは教えれば教える程上達して、なにより教えたこと以上のことをやってしまいますからね…)

ユーノは顎に手を当てて考える。数秒が経過した時、ハッと何かを思い出したような顔をして正人の方を見る。

「次の課題は…魔力を体に纏い続けてください。」

「そんなんでいいのか?」

「はい。ですが魔力といっても薄〜い魔力が体に流れてるイメージで…」

「そんな難しいこと指せるんですか?」

ユーノから発せられた課題を聞いて思わずミアは身を乗り出してしまう。

「ミア…これは難しいのか?」

肩を竦めながら言う正人だったが…ミアは乗り出していた体を今度はぐわっと正人の方に近づいて言った。

「難しいなんてものじゃありませんよ!薄い魔力というのは…分かりやすく言えば粘膜ですね。」

「…粘膜?」

「はい。正人さんが戦闘の時にまとっているものは敵意を感じる魔力…ですがこれは『ただの魔力』を体に纏わせるんです。」

話を聞きながら魔力を込めて纏う。ミアの言う通りその魔力は『青と黒』で作られたものだった。

「どうやったらこれを無くせる?」

「感覚と慣れ、でしょうね」

正人は方を縮めてため息を着く。感覚、慣れ…感覚はまぁなんとなく分かるが慣れに関してよく分からなかった。

(まぁいくら考えても仕方ねぇ…とりあえずやるか)

──の前に。

「この薄い魔力を極めたらとまうなる?」

「簡単です…数段階上の強さになれます。防御も身体能力も跳ね上がり、これはシンプルに戦いに役に立ちます。」

「なるほど、たしかにそれは欲しい」

そこまで言ったところで力を込めて始める。

だがやはり最初の段階だ…あまり上手くは行かなかった。

「ま!こんなんホイホイやられたらたまったもんじゃ無いわ!」

「さすがに僕もそれには同感です…」

「ですね…」

全員が俺の方へと苦笑して言った。


そこから更に30分ほど歩いた段階で…

「あれ何?」

シーナは怪訝な顔をしながらとある場所を指さした。3人ともそちらに視線を向けて確認する。

「まさかこんな所にダンジョンですか…」

「どうしたしますか…1度入ってみますか?」

ユーノは優しい笑みで答えた。歩くのも飽きてきたところだったのでいいタイミングだと思い、全員でこのダンジョンの中へと入っていった。


(なんだこのダンジョン…普通の四角いものかと思ってたとに、めちゃくちゃクネクネしてる)

上下左右うねうねと動き、動いたと思ったらピタッと止まるダンジョン。

「ここ意外と広いわね」

「はい、油断せずに行きましょう」

「そうですね」

全員息を呑んで先に進む。歩けば歩く程に魔力がどんどん強くなり、近づいていっているのが分かる。

そして何より…

「…臭っ!」

「モンスターが死んだ時の匂いですね…」

「ええ…」

シーナは鼻を押え、ユーノとミアは花を軽く押えながら手をプラプラと振る。正人はそんな素振りは見せず、前方にいるであろう『人物』の方をジッと見ていた。

ダンジョンを突き進むと、その奥の部屋で死んだモンスターの上に乗りムシャムシャと生肉を頬張っている男の姿…肌は褐色で髪は純白。目の色は紫。そしてその左に女性が一人、耳の尖り具合からエルフなのだろう。問題なのは…右側の…男か女か分からない人物…背中には白い羽をぶらりと下ろしている。その2人が褐色の男を挟むようにたっていた。

正人達は一瞬で『こいつらは強い』と悟った。

(まて…なんだこいつ…ダンジョンで戦った得体の知れない敵とは段違いに強い)

(この人たち…強い…)

(…なんでこんな奴らがここに…)

(…どうしましょう)

逃げる。という選択が頭をよぎった。だが正人は分かっていた。逃げたところですぐに追いつかれて殺される…と。ユーノも殺意剥き出しを最小限に抑えて今は冷静を保っている。そのユーノが1歩前に出て口を開いた。

「あなた達…冒険者ですか?」

「…んぁ?そうだが?」

褐色肌の男はペッと食べていたものを吐き出し「まじぃ」と言いながら乗っていたモンスターからおりる。

「ダンジョンに入るならちゃんとパーティランクの証を翳さないといけませんよ。こうやって別のパーティが入って来てしまうので…」

ユーノは淡々とダンジョンのルールを述べる。

「悪いが…その必要はねぇんだわ」

口の周りに付着しているモンスターの血を舐めとると次の瞬間…勢いよくユーノに接近していた。

ユーノはすぐに危険を察知し右手を前に出して詠唱する。

「『水の──』」

「はいドーン」

褐色のやつは魔法の詠唱もなしに…独自の唱え方で魔法を出し、その場を爆破させていた。

(その詠唱だけで…この威力…)

左腕でギリギリ守れていたユーノだったが、褐色肌の男は体をくるりと回転させてガードしていた左腕の上から強烈な蹴りを繰り出した。

「クッ……」

スザーッという音を立てながら飛ばされるユーノ。即座に右手で魔法を出して自分の動きを止めた。

「へぇ〜器用だな…俺の魔法にも耐えたし、相当な腕だ」

ニヤリと笑みを浮かべながらいう褐色肌の男。

「あなたも…そうとうやりますね」

冷や汗が頬を伝いながらこちらも笑みを浮かべて返すユーノ。

「つ…強い…」

「…ユーノさん」

ミアとシーナは目を見開いて驚いていた。あのユーノが、今まで服に傷一つ付いていなかったあのユーノが…爆破魔法を守った左腕の肌が見えている。

「コラッ!ルディック!ちゃんと自己紹介はしないといけないでしょ!」

「ってぇな!いきなり叩くなよリュイエット!」

「ごめんなさい…うちのリーダーが…」

耳が尖っていて金髪ロングの青目のエルフ?が褐色の肌、ルディックとかいうやつの頭をポンと叩き。男か女か分からないオレンジ色の髪の毛をして白い羽を生やしている人が謝罪してきていた。

そのなんとも意味わからん光景に全員思わず目が点になった。

「えっと……え?」

シーナは「どゆこと?」といいながらその人物たちを見ていた。

「自分は『天使族』キューライと申します。こちらは『エルフ族』のリュイエット・ミヤリー」

「…どうも」

「こちらはこのパーティのリーダーである『魔族』ルディック・カルサナイトです」

「急に襲って悪かった」

天使族のキューライから紹介を受けてこちらも自己紹介をする。

一通りの自己紹介を終え、早速…ツッコミどころ満載のこのパーティにシーナとミアが目を輝かせながら尋ねていた。

「エルフ族と天使族…魔族なんて初めて見たわ!」

「ここら辺の地域になぜ来られたんですか?」

身を乗り出しながら聞く2人に正人とユーノは額に手を当てて頭を軽く左右に振った。

「え…えっと、始まりの街に少し用事があってきたんですよ…」

天使族のキューライははにかんでいる様子を見せながら言った。その様子を見てエルフ族のリュイエットが2人に問うていた。

「そのお二人は…ミアさんとシーナさんはどうしてここに?」

「私たち今日から冒険することになって、風の都に行く途中なんです!」

その会話を聞いていた正人はと言うと…

「(おい、この世界になん種族いるんだ?)」

「(えっと20種族はいるんじゃないんですかね)」

「(マジかよ)」

人族しかいないと思っていたが…異世界なので当然と言うべきか。あまりの急展開にさすがの正人も驚いていた。

(つか、天使族とエルフと魔族ってどんな組み合わせだよ)

絶対にまじ合うことのない種族がいる。それもエルフ族が魔族を頭を叩いていた。もしかしたらこちらが思っているより…案外普通なのかもしれない。

正人とユーノの話を聞いていたのか、ルディックはその二人に視線を送り、次の瞬間には暖かかった空気が一変した。

「おい、てめぇはなにもんだ?」

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