デカい屋敷のお風呂に美女二人
「それではこちらへ」
「あ…はい」
「ありがとうございます」
メイドの一人がそういい、ミアとシーナをお風呂へと案内する。浴場まで迷路みたいな通路を歩いていた二人だが、メイドは二人の事を気遣い話をしていた。
「お坊ちゃま…いえ、ユーノ様とはいつお知り合いになられたのですか?」
前を歩いているからメイドの表情は見えない。しかし雰囲気で二人は察していた。きっと…本当に友達や仲間というものにユーノは出会ったことがないのだろう。どこか心配そうに質問をするメイドだったが、シーナは遠慮なく答える。
「さっき会ったばかりなんですよ…その、私とこの子…ミアが敵に襲われて仲間が助けてくれたんですけど、そこで話しかけられたって感じですね」
「…そうですか」
シーナはあったことをそのまま話していたが、ミアは少しだけ申し訳なさそうにしながらシーナに続けて話していた。
「えっと…その…全然お邪魔でしたら私達は—」
「いえ…遠慮はしなくて大丈夫です」
ミアの言葉を遮るようにメイドは答えていた。そこから数秒沈黙が続き…3人の足音だけが通路に響いていた。
シーナは怪訝な顔をしながらミアの顔に近づける。
「(私の言い方が悪かったのかな)」
「(まぁでも、それ以外言いようがなかったししょうがないとは…思う)」
気まずそうに前を歩いているメイドを見ながら話す二人。
「…ユーノ様は…」
前を歩いていたメイドがいきなり話し出して、二人の肩がビクッと動く。
「はい!」
思わずメイドのその言葉に反応して声を出してしまうシーナだったが、メイドは意に介さず話を淡々とし始めていた。
「ユーノ様は、魔法の特性が少し特殊なせいで…友達や、それこそ仲間というものを作ったことがないんですよ」
シーナとミアもユーノの第一印象を思い出し、頷く。
「ですが…この屋敷にあの子一人だけでなく、仲間と言ってあなたたちを紹介してくださった時…私は思わず涙を流しそうになったんです。」
メイドはそう言いながら振り向き…優しい笑みを浮かべていた。涙をこらえるように…初めての仲間…友達を自分の家に呼んで喜んでいる母親みたいな顔をしていた。その優しい笑みに二人は何も言えなかった。
完全に仲間と言える仲ではないし、友達でもない。さっき会ったばかりの他人なのに…そんなことを言わせてしまっていいのかと、罪悪感が込み上げてきていた。きっとそれはこのメイドの人もわかっているはずで、わかっていて尚言ってくれていたというのも二人は理解していた。ミアは勇気を出して声を発すように…メイドに言っていた。
「これから!その…ユーノさんとはこれからどんどん仲良くなっていくと思います。私、なんとなくわかるんです!」
何の根拠もない発言。もしかしたら正人が否定したり、残された二人が部屋で喧嘩をして仲間にならない可能性だってある。でも…ミアは真摯に告げていた。長く、白い髪をなびかせながらじっと見てくる赤い瞳に…メイドの人は少し驚いていたがすぐに目をつむって優しい笑みになっていた。
「ありがとうございます。どうかうちの坊ちゃまと仲良くしてください」
立ち止まり、二人に懇願するように頭を下げるメイド。二人は慌てながら頭をあげさせ、シーナはそのままメイドに笑顔を向けていた。
「ユーノの事、大好きなんですね!」
その言葉を聞いてメイドは目を見開いていたが…
「えぇ、私達メイドや執事の…子供同然と言ってもいいですからね」
「確か、ご両親は魔法学会に行っているのでしたよね」
ミアは首を傾げながら口を開き、メイドもその言葉に頷いていた。
「はい…当主様はここの屋敷に顔をめったに出さないのです…なのでユーノ様は私達メイドが育てたといっても過言ではありません。」
そこまで言って、そのメイドは弁明するように話す。
「あ、ご両親とはすごく仲がいいんですよ?ですがやはり…ここまで一緒にいると自分の子供のように思えてしまって…」
気恥ずかしそうに頬を赤らめていうメイドに二人は微笑する。
(この人たちに育てられて、ユーノが悪い人なわけがないわね)
(ユーノさんはいい人達に育ててもらったんですね)
少し…うらやましそうにする二人だったがその私情は捨ててシーナが答える。
「安心してください!もし私達が風呂から部屋に戻って二人が喧嘩していたら私達が怒ってあげますから!」
ツンと顎をあげながら右腕のこぶをバシバシと叩くシーナ。ミアとメイドはそれを見て笑顔を見せる。
…とそんなことをしていると浴場にたどり着く。
「ここが、この屋敷の浴場になります。バスローブがございますが今着ている服を着て貰っても構いません」
「ありがとうございます!そうだ、お名前聞いていいですか?」
シーナは思い出したかのようにメイドに質問をする。メイドは「失礼しました」とつけて自己紹介を始めた。
「私…この屋敷のメイド長「アキ・キューヲ」と申します。自己紹介が遅れてしまい申し訳ありません。」
深くお辞儀をしてお詫びするメイド…アキを見て二人は少したじろいでしまう。
「アキさん。改めて私達を嫌な顔をせずに迎え入れてくれてありがとうございます!…その、これからはお世話になると思いますが、よろしくお願いします」
スッと頭を下げる二人を見てメイドは思わずにっこりしてしまう。
「私からも…ユーノ様の事よろしくお願いします。そしてメイド、執事をこき使ってください。それが私達の仕事ですので」
そう言いながら浴場から出て行くアキ…バタンと扉が閉まりミアとシーナは顔を合わせる。
「いい人だったね」
「そうだね…」
シーナとミアはそう言って、あたりを見渡す。広々とした空間に二人がぽつんと立っている状態。少しだけ落ち着かないなと感じながらも二人は服を脱ぎ始める。
「それにしても広すぎるわよね~…もうこれ大浴場じゃん」
「ハハハ…少し緊張するね」
よいしょっと言いながら全ての服を脱ぐシーナ。そしてゆっくりと服をたたみ、邪魔にならない場所に置くミア。幸いにも二人は大きめのタオルをもってその浴場の中に入る。もちろんいつもの宿で入るお風呂ではタオルで体は隠さないよ?なんか…今は隠さないといけない気がしただけで…決して恥ずかしいからとかじゃないよ?
これまた一段と広い浴場…本当に大浴場のような場所で、真ん中に大きい円形のお風呂。その右にずらーっと並んでいるシャワー。真ん中の大きめのお風呂の先には外風呂に続く扉があり、二人は目をキラキラと輝かせていた。
「これを二人で入るってすごい贅沢じゃん!」
「さすがにテンションが上がるね!」
お風呂に入る前にシャワーで体を洗おうとする二人…きゅっと捻ってお湯を出す。これまたちょうどいい温度感で二人はほっとするように体についている汗や汚れを流す。ミアは視線をちらっと横にいるシーナに向ける。その先の視線は言わずもがな…ぷっくらと膨れ上がっている胸だ。その視線を感じ取ったシーナはジト目を向けながら肩を竦めていた。
「なに?そんなにじろじろ見て…」
シーナの体型はものすごく女の子が憧れるといったものだ。デカすぎず小さすぎないお胸…すらっとしたくびれにお尻がいい具合にぷっくらしている。対してミアは華奢な体をしており、全体的にシーナより一回りサイズが小さい体。しかしながらその抱擁してしまいそうな体をシーナは内心押し殺していた。
(久しぶりに一緒にお風呂入るけど…ここで変なことはできない!絶対に!)
監視カメラというものは確実にないのだが、それでもここは人の家だからという至極真っ当な理由でその感情を頑張って抑え込んでいた。
しかしミアは自分の胸を見てはシーナの胸を見る。シャワーから出ているお湯がミアの綺麗な体を滴り、自分の胸を触るミア。
そして不満そうに…
「私もシーちゃんみたいにおっきかったらなぁ…」
「ミアはそのままがいいわよ」
シーナは耐えきれなくなり視線を逸らしながら口ごもる。ミアはバカにされたと思ったのか、頬をぷっくらさせてシーナに怪訝な顔を向ける。
「胸が小さい女の子の純粋な悩みなんだけど!」
体を近づけて今にも触れてしまいそうになるシーナだったが、奥歯をぎしぎしと噛みながら耐える。頑張って耐える。ちらっと逸らしていた視線をミアの方に向けると、ぷくぅっと頬を大きくし怒っているミアの顔…そしてその綺麗なすらっとした体に目がいってしまう。
(ダメよ私…ダメよ!)
「ちょっと!聞いてるの?シーちゃん!」
「っひゃ…ダメよミア!」
ついにミアの胸がシーナの胸に直に当たる。自分の心臓の音なのか…それともミアの心臓の音なのか判別できない程シーナはドキドキと感じていた。
ミアはシーナに対して二人の時は普通に接するのでミアはこれ見よがしにシーナの胸を揉みしだいていた。
「ちょ…ちょっと!ミア!…ここ人んちなのよ?」
「誰も見てないんだから大丈夫!」
シーナの顔は赤くなっており、先程まで耐えていた自分がバカみたいと感じながらミアを見ていた。
ミアはそんなシーナを見ることなく、自分の胸、そしてシーナの胸を揉み比べしていた。なんと贅沢。
「ん~…何が違うんだろう…食べてるものは一緒のはずなのに」
純粋な疑問を浮かべるがそれに関してはシーナも分からないため…誤魔化すようにしていたが、シーナは羞恥心が体全体を覆い、一歩下がって自分の胸を腕で隠す。
「はい!もうおしまい!さっさと洗って出るわよ!」
恥ずかしそうにしながら言うシーナは頭を洗い始める。ミアは「もう少し~」と駄々をこねていたが相手にされなくなったのでとぼとぼと自分の使っていたシャワーに戻り、髪を洗い始めた。
(危なかったぁ…危うく襲っちゃうところだった)
よく耐えた!と自分を褒めたたえて安堵する。しかしミアはいきなりそういうことをしてくるから少しだけ戸惑ってしまう。
(いくら慣れたとはいえ普段のあの感じからいきなりだとびっくりするのよね)
心の中でそう呟きながら洗っているミアに視線を向ける。何度も見ている体、そして髪の毛だがいつ見ても白い髪の毛がものすごく美しく…透明なんじゃないかと思ってしまう程のものだ。優しく噛みを撫でるようにシャンプー、そしてリンスをする姿を見てシーナは思わず息を呑む。
(なんか私、気持ち悪くない?)
ふと我に返り…一人で勝手に赤くなるシーナであった。
◇
体を洗い終え、しばらくお湯でゆっくりしていた二人…10分ほどでそのお湯から出て浴場から出ることにした。
「あんまり待たせるのもあれだしそろそろ出よっか」
「そうだね」
ガラガラと扉を開けてタオルを手に取る二人…水滴を優しくふき取り、置いてあるバスローブに手を通す。
「そういえば…正人さんは大丈夫でしょうか」
ミアは軽く首を傾げながら口にする。
「あ~まぁ、大丈夫なんじゃない?多少のいざこざはあると思うけど…」
シーナは視線を空にサマワ寄せながら答えていた。この屋敷にくるまでの正人は警戒心が強く、辛勝していない様子でシーナはそれに気づいていたのだ。だがしかしメイド長と話していた感じから何の根拠もないが大丈夫だろうと口にしてしまっていた。
「シーちゃん、私が髪乾かしてあげる」
「ん。ありがと」
ミアの長い髪の毛に対してそんなに長くはないシーナだが、ミアの髪の毛の乾かし方は好きなので断らずにやってもらっている。
(寝ちゃいそうになるのだけは気を付けないと)
気持ち良すぎるが故に眠くなってしまうのでそれを今日こそはという思いで決心するが…
「はい、できたよ~」
「……ん…あ~い」
ダメだった。ちゃんと寝ていたシーナでした。