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3食食べれてふかふかベッド付きの宿

「僕を仲間に入れて下さいお願いします!」

青髪の青年は勢いよく地面に頭をこすりつけて土下座をしていた。

「仲…え、仲間?はぁ?」

シーナはいきなりの出来事で頭を抱えながら土下座している青年を見ては隣にいるミアと正人に視線を行き来させる。そこへミアは首を傾げながら青年に声をかけていた。

「えっと…まずはお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

ミアのその言葉に土下座していた青年はハッと顔をあげて立ち上がり、綺麗なお辞儀をして…

「申し遅れました…僕…自分は『ユーノ・アタギ・カイ』と言います…!どうぞよろしくお願いします!」

元気が良すぎる自己紹介に少したじろぎ…めをぱちぱちさせる3人。正人はこの青年の立ち居振る舞いを見てなんとなく察しがついていた。

(貴族?…みたいな感じなのか?礼儀正しいというか…でもなんかどこか天然っぽさがあるような)

顎に手を当ててまじまじと見ていた正人だったが、シーナも薄々気づいたのか怪訝な表情を向ける。

「それで…どうしてあなた…その…」

「あ、ユーノとお呼びください!」

ニコニコしながら自分の名前を言うユーノにシーナは更に懐疑的な顔を向けながら声をあげた。

「ユーノぐらいの強さだったら他のパーティに入れると思うけど…どうして私達のパーティに入りたいなんて口走ったのよ」

シーナは気づいていた。このユーノという青髪の青年は弱くない。なんなら強い部類に入るというのを確信していた。それは何故か…『魔法の特性』というものは位の高い魔法ランクの人物か、貴族の人間にしか発症しないからだ。しかもその魔法の特性が初対面の相手に敵意むき出しにするとかいう訳の分からない特性。ユーノが他のパーティに入れないというのもなんとなく納得はできるが、それでも初対面でいきなりパーティに入れてくださいと言われてすぐ頷くということはできない。ミアと正人はその会話をただただ聞くことにした。

(まぁシーナはバカじゃないし、何かに釣られたりするような奴じゃないしな)

(シーちゃんならこういう交渉はうまいからね!頑張れ!)

ユーノは「いや~」と頭を掻きながらふにゃふにゃした笑顔で話し出す。

「自分魔法の特性がこんななので中々パーティには入れてくれないんですよ…誰かいないかなって探してたらものすごく強い人を見つけたので…つい…」

申し訳なさそうに視線を下に向けるユーノであったがシーナは手を左右に振りユーノに背中を向けながら言った。

「悪いけど…諦めることね。私達宿もなければお金もないの。ここで変にパーティメンバーを増やせないわ。」

至極当然の理由で断るシーナ。正人もミアもそのシーナの言葉に頷きながらその場を離れようとするが…ユーノはきょとんとした顔になりながら言い放つその言葉に正人たちの耳は大きくなる。

「え、宿ありますよ?」

ビクッと3人の体は動く。

「お金も結構あると思いますけど…」

歩いていた足を止める3人。宿、金…という誘惑全開な言葉に3人耳を大きくしながらも耐えるように爪を立てて拳を握る。

「3食ついてベッド付きですけど…」

はい。ノックアウト。

「 「 「ぜひよろしくお願いします!」 」 」

その誘惑に負けて3人はユーノに頭を下げていた。



街の出入り口付近のフリースペースにいた3人だったが、ユーノの後ろについていくように歩く3人。シーナと正人は顔を近づけながら小さい声で話していた。

「(ねぇ、嘘だったらどうする?)」

「(そりゃねぇだろ)」

「(もしもの話よ!)」

「(その時は頼んだぞ)」

「(あんたが何とかするのよ!)」

右足で正人を小突き、正人は「いてっ」と口にしてシーナを睨みつける。ミアは微笑ましくその光景を眺めているだけだった。

その会話を聞いていたかのように、前を向きながらユーノは口にする。

「大丈夫ですよ。もし僕が嘘をついていたら、その時は袋叩きにでもしてください」

「…袋たたきって…」

シーナは肩を竦めながらジト目を向ける…が、それと同時に視界に映るものが先程の街並みとは変わり、貴族がいるような…高級住宅街みたいな街並みへと変わっていた。

「すっご」

シーナは思わず口にしてすぐに羞恥心が込み上げてきたのか顔をそむける。先ほどの態度とは打って変わって自分たちがへこへこしているんだから当然だ。シーナの声に続けるようにミアも正人もその街並みを見て驚いていた。

「すごいですね!こんな所、始めてきましたよ」

「ああ…これはすげぇな」

高級感漂う街並み、そしてどこに目を向けても視界に映るのはものすごい家の数々。ユーノは3人の反応に少し苦笑しながら…

「僕の家はこんなたいそうなものではないので…あまり期待しないでください」

3人に視線を向けながらいうユーノだったが3人は「嘘つけよ」という顔を見て信じていない様子。

しばらく歩くと目的地に着く。

3人は口をポカンとあけながらその家…というよりかは館と呼べる場所を見上げていた。

「なんだこれ」

「家?学校とかじゃなくて?」

「ものすごいお家じゃないですか!」

「…ハハハ、ありがと」

門を開けて、その広々とした中庭に足を運ぶ。

「今は僕しかいないので、上がっちゃってください」

「お…お邪魔します」

こういうしっかりとした場所に来ると自然と体が伸びて、いつも出ない行動が出てしまう。正人は一例をして門をくぐる。続いて二人もくぐったところで門は自動的に締まり始めていた。

中庭から少し歩いたところに玄関があり…ゆっくりと歩き始める4人。

「そういえば…今はユーノさんしかいないといっていましたが、ご両親は不在なのですか?」

軽く首を傾げながらユーノに質問をするミア。

「そうですね…僕の両親は魔法学会というものに今参加してまして…しばらく帰ってこないんですよ」

「ふ~ん、先生なんだ」

シーナは何気なくその会話に交じり、ユーノと会話を進める。もうとっくにさっきまでの態度はどこへやら…ミアとシーナはユーノを向かい入れる気満々らしい。3人で会話している様子を後ろから見ていた正人は顎に手を当てながら思考する。

(何か企んでいるものでもあるのか?)

頭の中に咄嗟に出てきた疑問がこれだった。見た所ちゃんと貴族らしいし、初対面での敵意むき出しが原因でパーティが出来ないのなら、別に他にやりようはあるはずだ。それでも…正人のパーティに入りたいと懇願してきたユーノ。さすがの正人も警戒せざるを得なかった。

(衣食住が手に入るからってのこのこついてきたんだけどな…)

…と、正人は肩を竦めながら3人について行った。




ガチャンっと扉を開けるとその中も素晴らしく…アニメや漫画でよく見るお嬢様がいる館っていう感じのものが視界に広がっていた。サイドには階段があり、色々な通路が見える。その圧倒的な光景に3人は目を見開いて固まっていた。

「改めてだけど…本当にすごいわねこれ」

「私達が…こんなすごい家を使ってしまっていいんですか」

ミアとシーナは目を輝かせながら辺りを見渡してそう口にする。正人は前方から人影が見えてそっちの方へと警戒心高めで視線を向ける。それに気づいたユーノが弁明をするように両手を振って慌てていた。

「あ、えっと…両親はいませんが…その執事やメイドはこの屋敷にいるんですよ!」

「まぁこのデカいお家を管理するのに一人だとできないもんね」

「執事…メイド…!」

シーナはなんとも驚かない様子でユーノに話していたが、その隣でミアは目をキラキラと輝かせていた。ユーノが帰宅したと連絡が入ったのか、ぞろぞろと玄関に並ぶメイドと執事…一例をしてユーノに労いの言葉をかけていた。

「おかえりなさいませユーノ坊ちゃま。えっと…そちらの方々は?」

一人の執事が質問をしたところでユーノは正人たちの方を見て紹介していた。

「えっと…パーティメンバーでいいのかな?詳しい話はまたするんだけど、いったんはそんな感じ」

「左様でございますか…あの坊ちゃまにパーティメンバーが…」

涙を浮かべ、真っ白のハンカチを手に取り拭いながらしくしくと言う執事やメイドの方々。その様子を見て正人は「俺の考えすぎか…」と先程の疑ってしまった事に対して反省をした。

そして一人のメイドが前に出てお辞儀をしながら3人に告げた。

「パーティメンバーとなればあなた達もこれから私達メイドや執事をこき使ってください」

何やら引っかかるような引っかからないような言葉に首を傾げながらも3人は頷く。

「そうだ。3人お風呂に入りますか?詳しい話はその後でも…」

ユーノのその提案にミアとシーナはまたも目をキラキラさせながら同意した。

「お風呂入りたい!」

「こういう場所のお風呂…ものすごく気になります!」

正人はその二人を見て額に手を当ててため息をつく。

(もう少し警戒はしろよ)

「正人さんはどうしますか?」

首を傾げながら問いかけてくるユーノを見て、一瞬思考するが…

「いや…俺はいい」

「そうですか」

ユーノがそう言ったタイミングで一人のメイドがミアとシーナを浴場まで案内し始めていた。

「それじゃあ正人また後でね!」

「行ってきます」

「…おう」

シーナは愉しそうにしながら手を振り、ミアは小さく一礼をしてその場を後にした。そして周りにいたメイドはいなくなり、玄関には正人とユーノ、そして数人の執事が立っていた。

(何これ…めっちゃ気まずいじゃん)

心の中でそんなようなことを吐露して、その気まずさを誤魔化すように辺りを見渡す。壁には絵やこの館の当主だったであろう人物たちの顔写真が貼られていた。

「ここではなんですので…ゆっくりできる部屋に案内しますよ。そこで二人を待ちましょう」

「…そうだな」

警戒しているせいなのか…それとも気まずいせいなのか。正人はぎこちなく返事をしてユーノの後ろへと付いていった。

部屋に案内され、ユーノはその扉を開ける。そこには少し長いテーブルにソファが並んでいて、その机の上にはクッキーなどのお菓子、そして人数分の飲み物も用意されていた。

「すげぇな」

正人は若干引き気味に用意されているものを見ながら言った。

「うちのメイドと執事は優秀なんですよ。さ、入ってください」

「失礼します」

一礼はせずにその言葉だけ発する正人。ユーノは先にソファに腰を掛けて促すように前の席に視線を向ける。

そのソファに正人も腰を掛けて思わず声を出してしまう。

「ふかふかすぎだろ…」

なんともふかふかなソファ…力を入れなくても指が沈んでいくソファに正人は驚いていた。しかし、ユーノはその言葉には反応せず、正人を睨みつけるようにし…口を開いた。

「早速本題なんですけど…あなた、何者なんですか?」

聞かれると分かっていたので正人は何の動揺を見せずに事実だけを伝える。

「すまん俺にもわからん」

「…はい?」

睨みつけていたユーノの目が点になり…頭の上にクエスチョンマークが出ていた。

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