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この世界にはどうやらランクってものがあるらしい

なんやかんやありまして…無事(?)にミアとシーナのパーティに入った正人。3人はぶらぶらと街を歩き、色々なものを目にしてミアとシーナは目をキラキラと輝かせていた。

「ねぇ見てミア!あれすっごくない!?ドラゴンジュース!」

「わぁほんとだ!学園の先生がたまに買ってきてくれたやつだ!懐かしい!」

テンションの高い二人を眉間にしわを寄せながら見る正人…

(ドラゴンジュースって…なんだ?)

聞いたことのない組み合わせのジュースだと思いながら首を傾げて想像をする。

想像するだけで背筋がゾクゾクっとする感覚が襲い掛かり、正人は身震いをした。先ほどまで上半身がドラゴンだった奴と戦っていたのだから当然の反応ともいえる。

そして満を持して正人は二人に聞いた。

「そのドラゴンジュースって…一体どんな飲み物なんだ?」

正人は怪訝な表情で二人に尋ねると、シーナは「あんたしらないのぉ?」と言いながら片手を腰に当て、もう片方の手で人差し指を立てながら解説をするように語りだす。

「ドラゴンジュース…別名炎のジュースはキャップをプシュッて外すと炎が出る飲み物で、その出る炎によって味が変わるの!」

「そうなんですよ!子供からは大人気で、私達も小さい頃よく飲んでたんですよ」

「へぇ~…なるほどな」

「絶賛好評発売中!」

「何してんだお前」

サムズアップをしながら意味の分からないことを言うシーナに正人は素早くツッコミを入れる。そしてニコッと笑みを浮かべて語っていたシーナも、テンションが高くなっていたミアも一瞬にしてシュンとなり、正人も二人の反応を見て察する。

(そっか…俺達金がねぇから何も買えねーじゃん)

そう…服を二人に買ってもらったはいいものの、ミアもシーナも手持ちのお金がそれで尽きてしまったのだ。このままではいけないと思い、正人はシュンとしている二人にあわただしく声をかける。

「と、とりあえず!座るところを探しませんか?」

二人は正人に今にも泣きそうな顔…子供がお母さんにおもちゃを買ってほしそうな顔をしているようにも見えるその顔を見せながら、シーナは諦めたのかため息をつく。

「そうね…ないものねだりをするくらいだったら、何かできることを探さないとね」

「そ、そうですね…座れる場所を探しましょうか」

ミアとシーナの切り替えに、正人は安堵し胸をなでおろす。しかし、咄嗟に座るところと言ってしまったがそれはよかったのかと少し視線を空に彷徨わせながら首を傾げる正人であった。



「よっこいしょっと…」

街の出入り口付近にあるフリースペースのような…居酒屋のような場所に座る。

「まぁここなら別にお金を使わなくても座れる場所だから…」

「そうですね…」

ミアとシーナは顔を合わせて申し訳なさそうに座る。正人は周りに視線を向けると、これまた色々な人の姿が視界に入る。

「おーい!早く酒もってこい!」

「そんでパーティの件なんだけどよ…」

数々の客の話声…酔っている人間の声から、パーティ勧誘の話やらが飛び交いここは本当にフリースペースなんだと肩を竦めながら理解する。

(フリーすぎる気がするんだけど…)

頭をポリポリと掻きながら見渡していた視線を前方に座っているミアとシーナに向ける。そして正人は真摯な表情で告げた。

「これからどうしようか」

「 「……!?」 」

正人の思いがけない言葉に二人は目を見開いてぱちぱちする。状況を理解できていないのだろう。そして正人もその真摯な表情をずっと保ったまま。少しの沈黙が続いたのち、シーナは頬杖をついて視線を逸らす。

「何よ…なんか秘策とかあるんじゃないかって期待しちゃったじゃない」

「え普通に何もないけど…」

「あんたねぇ!…はぁ、もういいわ」

指をさしながら声を荒げようとしたのだが——周りの視線を一気に浴びて我に返ったのか再度頬杖をつく。ミアはその様子を見ているだけで何も言おうとしなかったのだが…シーナが頬杖をついたタイミングで正人に真剣な顔を向けながら語っていた。

「とりあえず、私達がするべきこと…順を追って話しますか」

「…だな」

3人が同時に頷き、そこから話が始まった。宿の確保、食べ物と飲み物…正直この辺は全員しばらく野宿を覚悟していたし、飲食も何んとなかるだろうと思っていたのだが…問題はまた別にあった。

「服の汚れも魔法でどうにでもなるので…」

「便利すぎるだろ」

「魔法なんて日常でいっぱい使うわよ?」

「…まじで?」

怪訝な顔を向けるが、シーナはあたりを見渡しながら指をさす。

「ほら…あそことか」

シーナが指をさした方向を見て、正人は思わず眉間にしわを寄せてしまう。そこに映っていたのはジョッキに酒を注ぐ店主、そして入れ終わったら魔法で注文した人まで飛ばすというものだった。

(確かに魔法使ってるけどさ…なんかシュールだな)

ふわ~ッとしながら飛んでいくジョッキを見てこぼれないかと一瞬心配になってしまうが、シーナは付け加えるようにして話す。

「あ~あれこぼれないから安心しなよ、ちゃんとその周りに薄いバリアみたいなの張ってあるから」

「ハハハ…なるほどな」

そう口にしながら飛んでいくジョッキを眺める。そんな変に難しそうな魔法をするくらいなら攻撃魔法とか極めたらいいのにと考えてしまうが、目の前にいるミアを前にしていうことでもないのでそれを胸の内にとどめておく。

(まぁ適材適所ってやつか…)

攻撃特化専門の魔法使いもいれば、ミアみたいに回復専門の魔法使いもいる。それと同じで個々の街の人たちも自分の今できることをやっているのだと正人は勝手に解釈していた。

「後は…パーティの申請ですかね…」

「…パーティの申請?」

顎に手を当て、少し気難しそうに話すミアを見て正人は肩を竦める。シーナは何かを察したのか、眉にしわを寄せて正人の方を見た。

「んだよ」

「いや~…あんたのあの出会いからがあんなんだったから申請できるのかなって」

「…どういうこと?」

そう…問題とはこのことだったのだ。正人はまだ何も理解していない様子だったが、二人はなんとなくわかっていた。なぜならミアもシーナも正人に会う前にパーティ申請をしていたから。

「パーティ申請に書くのは、出身、自分の魔法ランクを書いて提出するの。そんで今のパーティの平均ランクが書かれた紙がもらえる。それを宿に見せることで無料で入れたりするのよ」

「え、めっちゃ便利じゃん」

「そうよ?魔法のランクのくらいが高かったら基本どこでも無料だし…でもあんたって…」

そこで正人はやっと気が付いた。自分の今置かれている現状に。

「…そういうことか。俺はパーティ申請が出来ないと、言いたいんだな?」

「そういうことよ。別に…パーティ申請は強制じゃないし、あると楽ってだけなんだけどね。」

(日本でいう所の運転免許みたいなものか…)

あるとめちゃくちゃ便利だけど別に強制じゃない資格的なもの…。正人はどうしたものかと顎に手を当てて必死に頭を回転させる。正人一人だけならパーティ申請をする必要もなかっただろう。そして野郎パーティだとしても同じだ。でも女の子がいる…女の子の前でずっと野宿なんて言えないし、ミアもシーナも嫌なんだろうなというのは正人も薄々感じていた。

「とりあえず…二人のその平均ランクの書かれたカード?見せてくれよ」

「はい、こちらです」

ミアから渡されたカード、大きさは本当に運転免許書ぐらいの小さな紙だ。そこに書かれていたのは『Cランク』と書かれていた。

「Cランクってどれくらいすごい?」

「一番下だけど?」

「…なんかごめん」

「何で謝るのよ!」

ふーっと怒りをあらわにするシーナの顔を見ながらごめんごめんと宥めてカードを返した。確かに二人は基礎魔法しか教えてもらっていないといっていたし妥当なランクかと納得する。

「ちなみに私はCランクでシーちゃんがBランクなんですよ」

「あんたもいちいち言わなくていいでしょ!」

「え~?だってパーティメンバーなんだから話さないといけないじゃん」

シーナが言わなくていいといった理由は、ミアのランクがCだから…それをわざわざ言わなくていいと言ったのだろう。彼女なりの優しさが感じ正人は少しだけ申し訳ない気持ちになる。平均ランクCって目にしたとき…正人はもう少し上なんじゃないかと思っていた。あのダンジョンで戦った時のシーナは大魔法というものを使っていたし、無理くりの作戦ではあったが一番下のランクのはずはないと思っていたが、Bと聞いて少し納得した。

「ランクってのはいくつまであるんだ?」

ふと気になり、質問をする。シーナは人差し指を顎に当てて視線を空に彷徨わせながら答える。

「基本はA~C、BとCの実力はそう大差ないんだけど、AとBは天と地ほどの差があるのよね」

「ふ~ん、基本ってことは…もっと上があるのか?」

正人が怪訝な表情を浮かべて質問をし、ミアが続けて語る。

「ありますよ。この魔法界で3人しかいないSランク…しかもその3人は『世界の謎』をしる人物でもあるらしいんです」

「……世界の謎…」

(もしかしたら現世に帰れる手がかりがあるかもしれない)

妹に会うために…現世に戻るためにこのパーティに入った正人。意外にも、少しずつだが手がかりを掴めていることに対して安堵するが、それと同時に絶望もしていた。

(どうやってSランクに会うのか…それか俺がSランクになるか…だよな)

簡単に思いつくのはこの二つだが、前者はともかく後者は今の正人ではきつい。それは本人も重々承知しているので諦めるが…何はともあれその情報が聞けたことがよかったと思うことにした。

「ちょっと聞いてるの!?」

「あぁごめん…ちょっと考え事しててな」

「ちなみにだけどSランクの奴に会う方法って…」

正人はどう返ってくるのかわかっていたが、一縷の希望にかけてダメもとで聞く。シーナの口がひくつき、その表情を見て正人は「ですよね」と理解する。

「そんなの私が知るわけないじゃない」

「ですよね」

シーナはため息をつきながら顔をそむける。ここの場所で状況を整理がてら次の行動を考えようとしていたのだが、思いのほか色々と情報が頭の中に入り込んできて正人は整理するのにやっとだった。パーティ申請をどうするのか、この世界には魔法ランクというものが存在し、その頂点に立つ3人の魔法使いは世界の謎を知るものと来た。近道はできないが目指すべき場所が分かったというのは収穫として大きい。…できる出来ない、会えるか会えないかはおいておいて…。

正人は目を閉じながら順を追って整理していて、目の前で起こっていることに気づかなかった。

「いたっ…ちょっと!何をするのよ!」

その声が耳に聞こえて正人は目を開く。正人は目を見開き席を立とうと体を動かそうとするが…体はピクリとも動かない。

「んだよ…これ…っ!?」

どんだけ力を入れても動かない、金縛りのような変な感覚が体全体を包んでいた。ほんの…一瞬の出来事だったはずなのに。

「わりぃな兄ちゃん、この娘たちは貰ってくぜ?」

つるっぴかの大男がにやにやしながらシーナの腕を持ちあげて話す。シーナは抵抗しようとするが何もできずに足をパタパタとさせるだけだった。ミアも同様、大男の仲間らしき人間から囲まれて連れ去られようとしていた。

「…っく!」

正人はその光景をただじっと…見ることしかできなかった。何か…何かしなきゃいけない!そう体を動かそうとするもびくともしない。正人が感じていた怒りにはどこか昔にも感じたような…怒りだった。


またこれだ。周りの人間が不幸な目にあって…自分は何もできていない。怒りを大男たちに向けていたが同時に…自分にも、向けていたものでもあった。


「クソが」

思わず正人は…そう言葉を漏らしてしまう。

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