怪しい彼らの魔道具作り
お選びいただき、どうもありがとうございます!人物の設定を頑張ってみようと思って書きました。
「じゃあ、今回のテストは、ジャスティン・ノースに頼んでみよう」
「いいだろう。丁度、悩んでいるみたいだから良い助けになるだろう」
「うん、彼はいいよね、騒がしくないし、真面目だし」
留学生用に整えられている寮の一室で、遠い国からやってきた黒髪・黒目の3人組、シウ、バリー、カナタは新しく作ったメガネを手にそう話し合った。
彼らの国『工国』は遥か東方にあり、そこはいつからかあちらこちらで追われ、流れ着いた『転生者』が身を寄せ合ってできた国、というか地域であり、そう多くはないがそれなりの人数が住んでいる。
魔法のあるこの世界で、彼らは前世の知識を生かして様々な魔道具を作り、他国に売ってひっそりと、だが豊かに自分たちの生計を立てているのだが、そのためには世界にどのようなニーズがあるのかを知り、それに合わせた魔道具の開発とテストが定期的に必要となる。
こうした理由から、『工国』では若いうちに外の世界に留学させ、人や文化について学ばせている。そして、この国、ドミナントには若いユン・シウと、その側近バリー・ルート、スズキ・カナタの三人が来ている。彼らに治安が良く経済的にも潤っているドミナント行きを命じたのは現在の『工国』の統治者でシウの父親でもあるユン・ヒョヌだ。
転生したら統治者ヒョヌの息子だったシウは、卒業までのあと2年でそれなりの成果をあげなくてはならない、と思っている。工国の住民は転生者の集団だから個人のもつ能力差には慣れているし、たまたまヒョヌの息子として生まれた子にシウが入っただけだと理解しているので功績なんてものはさほど気にしていない。ヒョヌが引退後は新たな統治者を決めればいいし、ほとんどの者はシウにその責任を負わせようとは考えていない。
だが、そこは統治者の子として大切にされながら育ててもらったことへの感謝やその他複雑な気持ちによってだろう、シウは自分の力を発揮し認められる必要があると思っていた。シウが前世で家電の開発を仕事にしていたことやそれに伴っていくつかの特許を取るくらい優秀だったことも関係しているかもしれない。真面目で社会の役に立ちたいと思っているのだ。
バリーとカナタは留学するには丁度いい年齢だったこともあり、もう少し簡単な気持ちでドミナントに来た。工国は魔道具によって快適だったが、いかんせん他国に比べれば狭く、人間関係も限定されているように感じられるようになってきていたタイミングだった。転生者としてこの世界への興味関心や野心を満足させるためにも若者のうちに留学と称して外に出すのは良い制度だということなのだろう。そういうわけで、深い部分ではそれぞれ理由はあるが、シウが行くなら一緒に行くのはどうかと家族やヒョヌに言われ、いい機会だと外国行きを決めた。もちろん真面目なシウを友人として大切に思っていたし、心配もしていたことも。
さて、3人は遠い東の国からの留学生ということで2年生に編入した。本当はカナタはひとつ年上なのだが、黒目黒髪の印象が強すぎるため年齢を偽ってもわからないのと、国同士の留学制度なので便宜を図ってもらえたことから同じクラスにしてもらえた。年度の始まりは物珍しさからかだいぶ耳目を集めていたのだが、それもいつの間にか落ち着き、そのうちいつも3人揃ってコソコソしている…つもりもないが友人がいないので必然的に3人でいる…ことから、周りからは遠巻きにされて今では「あの怪しい奴ら」と呼ばれている。
本人たちはピアス型の翻訳機と音声の増幅器で、あだ名で呼ばれているのは知っていたが、実際はたから見ればそのとおりだろうと放っておいた。そのうち親しい友人ができればまた関係も変わるものだとシウが言い、バリーとカナタも頷いた。そもそも彼らは最初の騒がしさに疲れて自分たちが目立たないように認識を阻害する魔道具を使っているのだった。
こうして少々硬い雰囲気の中で始まった新年度であったが、3人は早速新しい魔道具づくりに取り掛かった。10個ほどアイディアを出し、どれを作るか相談した。平和な国らしく、ドミナントの学生は恋愛や容姿に関する悩みが多いようなので、まずはそこに効くものを作ってみようということになった。
3人が開発した今回のメガネは『人の心が漫画のように吹き出しで見える』機能がある…はずだ。と言うのも、まずはと試作品を3人で使ってみたが、転生者の自分たちにはどうも効かないようで何も見えなかったのだ。転生者に様々な魔道具の効果が効かないことはよくあることなので仕方がない。そこで、学園の誰かに使ってみてもらおうと考えた時、白羽の矢が立ったのが領地経営の授業で一緒になった3年生のジャスティン・ノースだった。出会って1ヶ月で彼が好感のもてる人物であることはわかっていた。
ジャスティン・ノースはその名の通り北に領地をもつ家の嫡男で、何においても手堅い人物である。真面目にやらなければ寒い地域ではすぐに命に関わる問題がおきるからだが、父親の教え通り、家の方針通り、ジャスティンは勉学に、魔法に、剣術に真面目に取り組んできたし、力もつけてきた。婚約者もおり、卒業した後は数年すれば結婚し、領地を共に守り、盛りたて、やがては領主となるだろう。そんなふうに、傍目には何の問題もなく、いやむしろ羨ましいくらいの立ち位置にいるのがジャスティン・ノースだった。
しかしである、18歳になろうとする男子であれば当然悩みはあるもので、彼の場合、それは婚約者のシャロン・ケージ伯爵令嬢についてだった。いや、本当はシャロンにではない、自分自身についての悩みであるのだが、そこは若者、なんとなく問題を相手に見つけたいような複雑な思いだった。
ジャスティンは透けるような白に近い金髪で上背があり逞しく、それでいて少しだけ茶色が入った緑色の瞳が優しい、言ってしまえば少し幼い感じの顔をしている。北の領地にいれば特に気にすることはないのだが、ここ中央では高位貴族は暗い色の髪や瞳を持つものが多く、この6年間でジャスティンはなんとなく引け目を感じるようになっていた。シャロンはまさしく濃い茶色の髪に黒い瞳の貴族然とした令嬢で、中等部に入学した時にはジャスティンもその姿にポーっとしたものだったが、中央ですごすうちに、自分の姿はシャロンに比べて色も薄く、物足りないのではないかと考えるようになってきたのだ。
ジャスティンは周りの友人たちに
「シャロン嬢はいつ見ても『これぞ貴族令嬢』って感じだよな」
「だからって気取っているわけでは無いし、誰にでも親切だし、本当に、ジャスティンがうらやましいよ」
「でもジャスティンも親切でいい奴だからなぁ。勉強も運動もできるし、全く二人はお似合いだよ」
そういった言葉をかけられるたびに、『シャロンと結婚するのは俺で本当にいいのだろうか』と心にチクリと痛みを感じるようになった。それでも、将来は領主となるのだから、それにふさわしい力をつけよう、またシャロンに似合う男であろうとジャスティンは努力をしてきた。
しかし、高等部の3年に上がってすぐに、シャロンの家に進級の報告しに行くためにと教室に彼女を迎えに行った時に、ジャスティンは、シャロンが同じ伯爵位のヴィクター・ウェラーと教科書を開き、頭を寄せ合って何やら嬉しそうに話しているのを見て、激しく動揺した。ヴィクターは中央からさほど離れていない商業の街の領主の息子で、茶色い髪と目を持つ、サラリとした雰囲気の男である。似た色を持つ二人は楽しげで、ジャスティンは心臓をギュッと掴まれたように苦しくなった。
『俺はシャロンにふさわしいのだろうか』
『遠い北の地にシャロンを連れて行って幸せにできるほどの力が俺にはあるのだろうか』
『そもそもシャロンは俺をどう思っているのか』
恋する若者は時として愚かな行動を取る。ジャスティンは心に生まれた疑問をシャロンに聞けば良かったのだが、答えを聞くのが怖くて、少しずつシャロンと距離をおくようになってしまったのだった。そしてそんな時に、タイミング悪く、中央にあるノース家の別邸に行儀見習いとして、クロウリー男爵家に引き取られた遠縁の子、フィオナ・クロウリーがやってきた。彼女は水色の髪と紫色の目をもつフワフワした感じの子で、高等部の1年に入学したが、まだ礼儀作法が身についていないということで平日は寮で、休みの日はノース家の別邸で過ごすことになったのだった。
ジャスティンはあっけらかんとしたフィオナの雰囲気にホッとして、気安く話しかけては邸の者たちからたしなめられていた。曰く『行儀見習いが必要な子のレベルに合わせてどうするか』である。ジャスティンもそれはわかっていたが、フィオナが楽しそうに話を聞いてくれるので、『この話をシャロンにもしたらこんなふうに笑ってくれるかな』と思うとついつい反応を見たくて同じ女性であるフィオナに話しかけてしまうのだった。
ジャスティンがフィオナと親しくなり始めたことは、瞬く間に3年生の間で広がった。もちろんジャスティンがシャロンへの恋心を拗らせている本心は伝わらず、『ジャスティンが1年の子に心変わりしたらしい』という内容で。そんな噂にシャロンは心を痛めていたのだが、貴族令嬢としての矜持もあり、どうして良いのかわからずにいた。
ケージ家の長兄と長女のパトリックとアイリーンは妹のシャロンを気遣って何度もジャスティンに連絡を取ろうかと言ってくれたが、シャロンが
「ジャスティン様はそんな方ではないのです。何か事情がお有りなのだと思います。大丈夫、私から聞いてみます」
と断るので、キリキリしながらも見守ることにした。
そんな様子を見て行動をおこしたのが、シウと、バリー、カナタの3人である。領地経営の授業後、教室に引き止め、自分たちが試作した『人の心が漫画のように吹き出しで見える』メガネでシャロンの気持ちを見てみないかと声をかけたのだ。まあドミナントの人々は『漫画』を知らないので『人の心が文字で見える』とだけ説明したのだが、当然ジャスティンには不審な目で見られた。
「そんなものがあるとは信じられない」
「…でしょうね」
シウの返事にジャスティンはしばらく無言で向き合っていたが、後ろのバリーとカナタも至極真面目な顔で立っているのを見て
「…もう少し説明してもらってもいいか?」
と歩み寄った。こういうところがジャスティン・ノースの良さであり、白羽の矢が立った所以である。『他言無用でお願いしたいのですが』と前置きして、自分たちが魔道具の制作を学んでいること、人々の役に立つものを作りたいこと、今回はジャスティンの今の状況に役立つのではないかと考えて声をかけたことを当たり障りのないように伝えた。
「ノース先輩は、見たところちょっとお困りの様子でしたので」
「えっ?俺がかい?特にそんなことはないけど」
シウの言葉にジャスティンは驚いたようだったが、
「ええと、ノース先輩、周りからはクロウリーさんに心変わりした浮気者認定されつつありますけど…お気付きでない?」
「…ない…」
バリーの言葉に顔を青くした彼に、本当に気付いていなかったようだと気付いた中身が大人な3人は苦笑した。恋愛に悩む男子とはいえ、これではやはりメガネが必要だろう。
「本当は悩みが深いのはケージ先輩の方だと思ったのですが、女性に僕たちがいきなり接近するのはどうかと先輩のところに来たのです…でも困っていないなら…」
「いやっ、いいんだ!俺は困っている!困っていることに今気付いた!あの、そんなことになっているなんて、本当に知らなくて」
「でも、今、相手の気持ちを知りたいと思っているのはシャロン・ケージ先輩の方ですよね、きっと。婚約者が自分とあまり話さなくなって、でも入学してきた女の子には楽しそうに声をかけて、しかも休日は同じ邸ですごしていて、やっぱりその子の方が好きなんじゃないかしら…って」
バリーが芝居がかって言うのをシウとカナタは笑いを堪えて見ていたが、ジャスティンはそうではなかったようで
「っおっ、俺は、シャロンが好きだし、将来も一緒にいたいと思っている!浮気なんてとんでもない。フィオナのことは、彼女の反応を見て楽しそうならシャロンにも同じように話そうと思って…」
慌てて3人に説明し始めたが、カナタに
「…そういうことは僕たちではなくシャロン様に直接お話されたほうがいいですよ。まあ、その勇気がないからこんなことになっているのでしょうけど…ということで、どうですか、僕たちのメガネでシャロン様の気持ちを知ってから行動されては。その方が安心でしょう?」
と諭され、ジャスティンはコクコクと頷いた。実験は次の週末、3人の寮部屋で行うことにした。
「ようこそ、ノース先輩」
「ああ、お邪魔するよ」
最上階の3人の部屋は広く、魔道具の試作ができるスペースもあった。ジャスティンは外から見た大きさと実際の部屋の広さに違和感を覚えたが、口には出さなかった。勧められて飲んだ冷たいお茶はきれいな緑色で、東方のものだと教えられた。
「では、こちらを」
シウに手渡されたメガネはレンズが分厚く、フレームも無骨で重たいものだった。
「すみません、まだ試作品なので。実物はもっとスマートになるはずです。今日は本当に考えが文字になって見えるかどうかを確かめたいと思います。かけたら窓から外を見てください」
ジャスティンはメガネをかけて、シウたちを見た。レンズのせいで心持ち姿が小さく歪んで見える他は何も見えない。そんな考えが伝わったのか
「僕たちにはその機能は効かないみたいなんです。さあ、こちらへ」
とバリーに手を引かれた。窓から外を見ると、中庭に数名の姿が見えた…
「あ…友達のローランドがいる」
「どうですか?その人の頭の上に何か浮かんでいませんか?」
「うーん…あっ?…浮かんで…いる…!」
「良かった!文字は見えますか?」
中庭を見下ろすジャスティンにバリーがウキウキと声をかける。
「ええと…遠くてよく見えないが…丸い風船のようなものの中に…文字だな…でも」
「でも?」
「外国の文字なんじゃないかな…」
「あ〜」
「そうか、翻訳が必要なんだ」
「タッチで切り替わるようにするか」
「どれだけ離れていても見えるか知りたいな」
ジャスティンの言葉で3人は彼を囲んで相談し始める。あれこれ話しているのを近くで見ていると黒い色味にばかり目が向いていたが、実は3人の容姿が驚くほど整っていることに気が付いた。
短く整えられた髪のシウは、丸みのある奥二重の瞳がきりりとした眉の下で輝いている。中性的な顔立ちだが顎はしっかりしており、時折見えるきれいに並んだ真っ白な歯が眩しい。
バリーは彫りが深くタレ目が可愛らしいが背は高く肩幅の割に細身の身体のシルエットが美しい。日に透けると茶色に見える巻き毛が顔にかかっているのは物憂げで、薄い唇が笑みを形作るのは何やら色っぽい。
メガネをかけているカナタは切れ長のややつり上がった瞳が知的な印象を与える。前は長めだが後ろはスッキリとしている髪はサラサラしていて思わず手を伸ばしたくなる。滑らかな肌も相まってちょっと近寄りがたさを感じるほどだ。
スラリとした3人を見ていると、なぜ今まで気が付かなかったのかと不思議だった。カナタのメガネも良く見ると普段街中で見かけるものとは違って随分と洗練されている。どこで手に入れたのだろうか。
そんなジャスティンの考えをよそに、3人はすることを決めたようで、メガネに何やら当てられると友人の頭の上の文字が読めるようになった。
「あ、読めるようになったぞ…」
「よっしゃぁ!」
「ここからでも見える?読めますか?」
バリーとシウがグイグイくる。
「…あ、ああ…ええと…『明日の…デートの、プレゼント…買って、ない、な…』だって。…へぇ、ローランドはミリアムとうまくいってるんだ…んー…『そろそろ…』…っっ!?」
ジャスティンが言葉に詰まって赤くなる。カナタが首を傾げて尋ねる。
「どうしたんですか?」
「…いや、何でもない」
「…」
「…ええと、そうだ、見えるのは中庭のあのベンチの辺りまでだ。丸いのは見えるが文字は読めない」
口を片手で覆ってモゴモゴと答えるジャスティンの様子から、3人は顔を見合わせ、彼の友人が恋人との関係を進めたいと考えていたのだろうと想像した。
「そうですか、ありがとうございます。参考になりました。次回までにはもう少し見た目と掛け心地の良いものにしておきます…っと、次回もお願いできると思っていいですか?」
「ああ、こちらこそお願いするよ。そのシウ君…ありがとう」
「そんな、まだまだ途中ですから」
「メガネのことじゃなくて…いや、メガネのこともだけど、その…まあいいや。次回もよろしく頼むよ」
ジャスティンが帰った後、3人は翻訳機能を持つ部品をフレームに埋め込み、レンズを薄くする作業に取り掛かった。それは次の日の朝、学校が始まるまで続けられたのだった。
週明け、午前の最後の領地経営の授業後、シウたち3人に囲まれたジャスティンは、窓辺で、これならかけて歩いてもそこまでは目立つことはないだろうとかろうじて思えるようになったメガネをかけさせられた。
「すごいね、昨日の今日でこんなにできるなんて」
「いえ、メガネ自体はカナタもかけているし元になるものはたくさんあるので。それでもこれではまだ人目を引きますよね。折角ノース先輩のアドバイスで改良できてきたのに…さてと、どうですか?」
シウに促されて外を見ると、お昼に向かう生徒たちの頭の上には丸い枠が浮いており、中には文字が見える。
「おお、見えるよ!…ええと、『急いで食堂に行かなくちゃ』『お弁当忘れてきた』『…』っと…『…』『昼休みに午後の課題をしないと』…って感じだ。うーん…これ、ずっと見えてるのかな?自分で見たい時だけ見えるようにするのはできる?」
「なるほど」
「すぐにできます」
「…ずっと見えているのはダメですか?何か問題でも?」
直ぐに改良しようという雰囲気のシウとバリーとは違い、カナタは理由を訪ねた。ジャスティンは苦笑いして
「そうだね、誰の考えでも見えてしまうのは、ちょっと相手に対して申し訳ないって感じだからかな。さっきも君たちに伝えるのはどうかと思うようなことを考えている生徒がいたし、できれば俺は本当に気持ちを知りたい相手にだけ使いたいよ」
と言った。カナタは驚いた顔をしたが
「君たちだって、自分の考えを誰かがこっそり覗いているって考えたらイヤだろう?そんなことをされたってわかったら…あ…」
と続けたジャスティンの言葉に
「…そうですね、ノース先輩…」
とカナタも真面目な顔になり、二人で深く頷きあった。役には立つが人を傷つけることがわかっている道具は世には出せない。
結局、メガネは性能を見るためにとたった一度だけ、フィオナ・クロウリーに使ってみて、それ以降は言葉ではなく、感情が色で見えるようにした。嬉しいなら黄色、ドキドキしているならピンク、怒っているなら赤、眠い時は緑…といった具合で今のところ8色で、今後必要なら改良する予定だ。それだけでも相手が自分に対してどのような気持ちなのかは伝わってくるのだから十分だろうということになったのだ。
ちなみにフィオナに使うことにしたのはジャスティンが
「アイツは俺に何の感情もないと断言できる。そして絶対にたいしたことは考えていない」
と断言したからで、事実、ジャスティンがメガネをかけて見た邸内をノシノシと歩くフィオナの頭の上には遠くからでも大きな吹き出しに
『お腹がすいたなぁ、おやつはなんだろう』
『宿題と礼儀作法なんて面倒だわ、どうにかして逃げる方法はないかしら』
『ノースのお屋敷の人たちって真面目よねぇ』
『最近ドレスがきつい気がする…太ったかしら?』
といった文字がくっきりと浮かび、彼女がジャスティンの近くに来て彼がメガネをかけているのを見た時は
「ジャスティン様、御機嫌よう」
とスカートをつまみながら
『いつも実家のウィンディみたいなのに、今日はメガネのせいで人っぽいわ…変なメガネ』
と考えていたことがわかり、さすがのジャスティンも微妙な気持ちになったということだった。
「後から聞いたんだけど、実家のウィンディっていうのは毛の長い大型の牧羊犬だそうだ。気持ちを見せてもらったことにちょっとばかり罪悪感はあるが、犬認定されているならまあ許してもらえるだろう」
と笑うジャスティンに、3人は今回のテストを彼に頼んで良かったと心から思った。
ジャスティンは改良されて機能が制限された分スマートなデザインになったメガネをかけてシャロンに会ったところ、彼女の頭の上にピンク(好意でドキドキ)とグレー(疑い)のマーブル模様が見えたことから心から反省し、自分の外見についての引け目をシャロンに伝え、それでも彼女が大好きで生涯を共にしたいと告白したことで無事仲直りができた。シャロンの兄姉たちも心配していたことがわかり、大急ぎで謝罪に行ったようだ。その後ジャスティンは3人に今後はテストなら付き合うと試作品のメガネを返した。
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「魔道具って、性能がいいだけじゃあダメなんだって思ったよ」
「そうだね〜。本当に必要な物、人のためになる物は難しいってことだね」
「そして協力者はよくよく選ぶ必要があることもわかりましたね」
シウとバリー、カナタの3人は寮の部屋でため息をつきながら、一応の完成をみたメガネをガラスの嵌ったサイドボードの一番上の棚にしまった。転生者として様々な経験や力や技術をもつ3人だが、まだまだ留学生としての修行は続くことになりそうだ。
お読みくださり、どうもありがとうございました。パイロット・エピソードのつもりで書いたのですが、意外とまとまっていて、いいかもと思えるようになりました。




