第4話
入り組んだ廊下を全力で走り、突き当たりの窓を体当たりで破る。
私の身体は重力に引かれて落下し、車のボンネットをクッションに着地した。
建物の外は見慣れない街だった。
時刻は正午くらいだろうか。
光量が自動調整されているのか、太陽を直視しても眩しく感じない。
仰天する通行人を横目に私は駆け出す。
(二人を殺した奴らが近くにいる。絶対に逃がさない)
頭の中で着信音が鳴り響く。
視界のポップアップ表示は、城島からの通信を示している。
脳にスマートフォンでも埋められたようだ。
感心する間に通話が開始した。
『寝起きなのに元気だね。いやはや、素晴らしいことだ』
「雑談は不要です。強盗グループの現在地を教えてください」
『既に送信してあるよ』
視界の中に簡略化された地図が出現した。
地図の北東で赤い光点が点滅している。
これが強盗犯の居場所らしい。
私は地図の光点を目指して走る。
自分でも驚くほどのスピードが出た。
走行中の車を次々と追い抜かして進んでいく。
『移動中に強盗グループの異能力を紹介しよう。戦闘の参考になるはずだ』
「お願いします」
『強盗グループは四人で全員男だ。リーダーは"炎熱操作"を扱う。他の三人は"腕の巨大化"と"衝撃波"と"重力操作"だ。それぞれの発動条件は――』
「すみません、もう接敵します」
前方から車が走ってくる。
光点の位置と一致――強盗グループだ。
妻と娘を殺した犯人が、すぐそこにいる。
私は道路のマンホールの蓋を掴み、力任せに外して投擲する。
高速回転する蓋が車のフロントガラスを粉砕し、運転手の顔面を木端微塵にした。
制御を失った車がクラッシュして近くの建物に激突して止まった。
(残り三人……)
近寄ろうとした瞬間、車内から真っ赤な炎が噴き出した。
私は避けられずに高熱を浴びる。
苦痛は感じなかった。
ただ視界にダメージ状況が文字化されて映し出された。
直後に巨大な腕が私を殴り飛ばす。
私は受け身も取れずに転がって街頭に頭をぶつけた。
装甲が少し凹んでいるが身体機能に問題はない。
かなり頑丈に設計されているようだ。
横転した車の前に三人の男がいる。
赤髪を逆立てた男は、両手に炎の球を持っている。
サングラスをかけた長身の男は、肥大化した片腕を掲げていた。
ジャージ姿の男は下卑た顔で舌なめずりをしている。