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9:マーロ料理大会(マジ)

 

「さてと。……遂にホントの料理大会が始まるか」


 待機室で料理大会が始まるのを待つ参加者達。だが色々あったせいで今回出場しているのはなんと五人だけ。そもそも言っちゃなんだが五百人以上やるとかよっぽどヤバい大会くらいなので、規模から人から全部アレだったのだ。


「さて……行くか!」


『どうも!司会者の『リラ』っす!隣には主催のクラヌ氏が来てるっすよ!』


『よろしく。さて……それでは参加者五名!前に出ろ!』


『まず一人目、リシャル・『ワーワー』選手!そう言えばクラヌ氏の息子って聞いたっすけど……?』


『……まぁな。だが息子でも厳しく採点するつもりだ』


 一人目。どこか緊張している様子のリシャル。明らかに先日と違いド緊張している様子である。そりゃまぁ尊敬している親父の前で初めて料理を出すのだ、当然と言えば当然だろう。騒がしいのか一部名前が聞こえなかったがまぁ仕方ない。


『続いて二人目『ミライナ=エール』選手!昨日の予選からリシャル選手と同じように解毒を完了させている選手です!』


『実を言うと私も一目置いている、中々いい料理人だ。良い料理を期待しているよ』


 二人目。無駄にデカいシェフ帽子を被った奴。先日のアレにも参加しておりその時はきっちりリシャルと同じように解毒を完了していた。ただならぬ気迫を出しながらリシャルの隣に並ぶ。年齢は20。


『三人目は『カリャナーク・マ・ゼロンド』選手です!クラヌ氏が来ると聞いて緊急参戦したらしいっす!』


『私のフォロワーか?であれば期待しよう』


 三人目のゼロンドはなんと女性。だがその実力は確かで昨日の大会には出なかったが、クラヌが主催をやると聞いた瞬間店を休みやって来た。若干17歳にして副料理長を任されている実力者である。


『さて四人目『ジア』選手!仮面を付けているが果たしてその奥に何を見ているのか!?』


『どうでもいいが仮面のデザインが微妙じゃなぁ……』


 四人目は仮面を付けている奴だった。顔を見られたくないのか、それともただ単に好きで付けているだけなのか。それは分からないがともかく腕は確からしい。少なくとも年齢も性別も分からないが実力者だと言う事だけは分かる。


『そして最後の一人『エナメル・ライン』選手!前マーロ大会優勝者ですが果たして!?』


『アイツの弟子だが料理の腕は確かだ。まぁアレだけ痴態を見せられたからか、既に弟子を止めているがな』


 最後の一人はリアマの弟子で前大会の優勝者であるライン。だが既に師を見限り一人の料理人として旅立とうとしている様子であった。ちなみに19歳である。


『以上!五名がこのマーロ大会の優勝トロフィーと名誉を賭け!戦うっすよ!』


『さて……では今回のテーマを発表する。今回は『マーロで取れる有名食材』をメインに一品作ってもらう!店で買うもよし狩りに行くもよし、とにかくマーロで取れるならそれをメインにして良し!料理にかかる時間を考慮し三日後、午後1時までに調理を終え提出する事!そして上位3名が決勝戦へと進むことが出来る!……以上だ!』


『あ、ちなみに料理は提出順に出るとかそう言うのは無いっす!完全ランダムで決められるっすから気を付けるっすよ!じゃ早速……料理開始っす!』


 それを聞き一斉にバラける参加者達。リシャルは一人何をメインに何を作るか考えていた。と言うのも、今回のテーマだとだいぶ何でも作れてしまうが故に逆に何を出せばいいのか分からない。そんなリシャルの元にアズマがやって来る。


「大丈夫そう?」


「あー……。なんにするか決めかねてる。一応作りたい料理……と言うか、欲しい食材はあるが……。店で売ってねぇんだよな」


「なんて食べ物?」


「え?『ナナコッコ』って鳥でよ……。親父の誕生日に初めて作ったのがその鳥のローストチキンでな?……俺にとって思い出の味を作りたいのさ」


「ん。じゃ……僕が狩るよ」


 誰もがそれでいいだろと思うような一言。だがリシャルは今回一切の妥協を許さないつもりである。ここでアズマに『じゃあ狩って来てよ』と言うのは簡単。だがそれほど彼の気持ちは簡単ではないのだ。


「─いや。俺も付いていく。一緒に狩らせてくれ」


「なんで?危険でしょ?」


「……そりゃ、そうさ。けど今回ばっかりは俺の目で見極めてから狩る。……俺が欲しいのはナナコッコのメス。それも出産してないメスだ。俺なら遠目で見ただけで分かる」


「……じゃあ行こうか。どこにいるの?」


 アズマもそんなリシャルの気持ちを理解したのか、手を出し一緒に行く事を受け入れる。とりあえず生息地まで背負われながら二人は駆けだしていく。大体半日後に辿り着いたのはマーロ近くの崖山。名前は獄門鳥(ごくもんちょう)と言う物騒な名前である。

 様々な鳥が集合しているこの場に、明らかに変な鳥が洞窟の中に入って行くのが見える。


「あれだ!あの虹色の羽を持ってる奴!あいつが……ナナコッコだ!」


「アレは?」


「─いや、アレはオスだ。そもそも外に出るのは基本オス、メスは中央でオスどもからエサ貰って子供を作るのみだ」


 話を聞き、まるで女王蜂だな。とか思ったアズマ。だがそれは同時にあの中に入らなければいけないと言う事、そして出産前のメスがどれほどレアなのか理解する。


「……じゃあ無理じゃない?出産前のメスって」


「あぁ。だから希少価値が高いんだ。だが時期がいい。今の時期は生まれたメスが成長し、あと少しで子を産めるようになる時期。故に今を逃がせば次は無い!」


「分かった。─で、突入する?」


「まぁ待て。アイツいるだろ?あのやたら輝いてる奴」


 そう言ってリシャルが指さした先には、一際煌々と七色に輝くトサカと尻尾を持ったナナコッコがいた。凄い派手である。よくクジャクの雄がすげぇ派手と言う話を聞くが、アレと同じような生態系らしい。


「あのやたらめったら派手なオスは巣の中でも最も強い奴だ。強い奴ほど光り輝き派手になる」


「敵が見たらヤバいって退散するんだね」


「あぁそうさ。だから基本的に俺らでもあぁ言う光り輝いてる奴がいる巣には近寄らねぇ。アイツは恐ろしい程強い。……だがその分、あいつらは出産前のメスを守る習性がある。見ろ巣に入って行くぞ」


 しばらく追っていると一つの巣の中に入って行く。中からは鶏の鳴き声と何故か人間の叫びも聞こえてきた。恐らくノコノコと巣に近寄ってメスの食料にされたのだろうと、リシャルは結論付け同時に中に出産前のメスがいると確定する。


「よし。……あの中にいる」


「よーし突撃」「いや待て待て待て!!!」


 いると分かったや否や、レーザーブレードを構え即座に特攻しようとするアズマを必死に止めるリシャル。


「せめてあのオスが出てってからにしよう?!な!?」


「ん-……。しょうがない」


 そして一晩経ち夜明けも近い頃、オスが巣から飛び立ったのを見た二人は一斉に巣に入って行く。巣の大きさはこの二人が同時に入っても全く支障がない程の大きさ。人位なら啄めるレベルの大きさなのである。


「急げ!あのオスが帰って来るまでどうせ時間はない!」


「─ところであのオスぶちのめせばよくない?」


「ところがそうも行かねぇんだコレが!と言うのも昔あのオスを一回殺した奴がいたんだがよ、そいつは地の果てまで他のナナコッコに追い詰められてぶっ殺されちまったんだと!」


「コワ」


「だろ?!だから俺らの地方じゃオスのナナコッコに手を出す奴はほぼいねぇ!メリットもねぇしな」


 巣に入った後奥へ奥へと進んでいくと、そこには美しく金色に輝くナナコッコのメスがいた。どうやら寝ているのかこちらに何の反応も示さない。リシャルはそれを見ると活〆用の針を手にして恐る恐るメスに近寄って行く。


「暴れるなよ……暴れるなよ……」


 そしてリシャルがメスの頭部近くにまで接近した瞬間。


 ナナコッコが一斉に鳴きだした。


ナナコッコ:捕獲ランクA

獄門鳥ごくもんちょうと呼ばれる崖に住む鶏……と言うか七面鳥の一種。でも鶏の遺伝子もあるのか朝になるとバカ程鳴く為ほとんどの人間はこの崖に近寄ることは無い。戦闘能力は啄んで来たり蹴って来たりと一見高く見えないが、オスは約3メートルもある巨体を持つ為人程度なら首をブチッと出来るし蹴って床のシミにする事も出来ると言う非常に強力な奴。

なお、メスは約1メートル程度の大きさで標準的な鶏よりデカい程度でしかない。だがメスを狩りに行くと同時にオスも対処する必要があるため、夜明け前にコッソリ狩りに行くかオスを全部ぶっ殺す勢いで行くしかない。

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