6:VSスパイスツリー(2)
「ねー粗茶美味しい?」
「美味しくはない……」
「だよねー」
リョクバが一人レッドツリーを追っていた時、彼ら三人は呑気に秘密基地で茶を嗜んでいた。美味しくは無いが。それはそうと外を見ていたガオは外に何やら変な木が生えているのを発見する。見てすぐにわかる程の巨体である。
「ねーアサ!なんか生えてるよ!」「ホントだー!なんだろアレ!」
「何?」
窓から顔を出してみるとそこにあったのはビーツリーよりも巨大な樹。それが突如目の前に現れたのである。無邪気にはしゃぐ二人に対しアズマは漫然と嫌悪感をその木に覚えていた。何故かは知らないがロクでも無い何かだと。
「─あ」
秘密基地に巨大な大木が落ちて来た。
「何?!」「何々!?」
「逃げろ」
それが何かをすると把握した瞬間、アズマはアサとガオを抱きかかえ壁を壊しながら脱出した。見上げる程巨大なソレが何か把握するまで数秒もかからない。巨大な女性が木に埋め込まれているような、嫌と言う程歪な存在。
「逃げろ」
「何……?」「怖い……!」
「逃げろ!」
アズマがビームサーベルを抜いた時には既に大量の種子弾が襲い掛かって来ていた。ボーリングの球程度の大きさの実が雨の様に降り注いでくるのだ。何とか全ての種子を切り裂いたアズマだが少し無茶しすぎたせいか頬にかすり傷を付けられていた。
「……」
「に、逃げよアサ!」「う、うん!」
震えながらも村へ逃げていく二人。その二人に対し追撃してこようとする魔物だったがそれは切り落とされる。切り落とした枝からスパツリのイエローが生えてきているが些細な問題だろう。
「─で、なにこれ」
『貪種』。それは史上最悪の寄生生物である。植物から植物へ、大きさも数も形も変えただひたすら栄養を根こそぎ奪い去り増え続けるだけの寄生生物。元々はさほど強くは無かったが、ある種がスパツリに寄生した辺りからこいつはどんどん強く大きく危険になって行った。
今では数々の植物の性質の良い所だけを貪るだけ貪り、島一つくらいなら余裕で永久に枯れた土地に出来る程度の力を持つようになっていた。控えめに言って生きていてはいけない生物である。
「黄色は弱い。赤は普通。こいつはヤバい」
無尽蔵に増えるイエローツリーを切り倒し、地面に落ちた種から生えるレッドツリーを切り倒し。切られた端から増えていく。斬撃しか出来ないアズマにとって、この貪種と言う生物は明らかに天敵って生き物。
「─仕方ない」
そう言うとアズマは二本目のブレードに手をかける。だがただ二刀流にするのではない。一度刃を引っ込めると剣同士を合体させる。そして出来上がったのは斧の形をしたエネルギーの塊。それを両手でしっかり握るとレッドツリーを真っ二つに切り裂く。
「じゃ……五分でケリ付けてやる」
一方その頃村ではリシャル含めた村人がリョクバ隊の帰りを待っていた。だがリョクバが帰って来て事の顛末を話し始めると逃げる準備を固めていた。この場所は名残惜しいが命には代えられない。だがリシャルは狼狽えない。何ならカレーの味見までしていた。
「─つまり、お前が苦戦するレベルのレッドツリーより強いなんかがいると」
「あぁ。……いや逃げる準備しろよ!いつでも逃げられるだろうけどさお前は!」
「お前が言ってるのってアレだろ?見ろよ今アズマが戦ってる。─なら勝つよ?アイツは」
「あっリョクバ兄ちゃん!」「大変!今あの木が!」
アズマが斧モードを起動してから二分、貪種は怯えていた。切られた部分が再生しないのだ。こうなる為には燃やすか圧倒的な力でねじ伏せるかの二択である。このレーザーブレードと言う武器はあくまでエネルギーを凝縮して切ると言う物で、燃やしている訳でも異常なパワーが出る訳でも無い。ただエネルギーで無理やり切ってるだけである。
「─斧は木を切る物でしょ」
対して斧モードは通常の火力の二乗分の火力が出る。かつて山を切り開き滝を作ったとされる程に。コイツの欠点はレーザーエネルギーの消費が異常に激しい事。マックスでも精々三十分が限度である。その上でエネルギーの回復が出来ていない今、使えるのはたったの五分。しかしそれで事足りる。
「んー……。横薙ぎなら行けるかな?」
軽い縦薙ぎ一つで貪種の半分が再生不可能レベルまで破壊されていた。
「うわ、赤いの嗾けて来た」
もはや貪種が出来る事はレッドツリーを大量に押し付け自分は逃げる事だけ。だがそれも叶わない。横薙ぎの一撃でレッドツリーはおろか貪種まで全てが行動不能になった。後ろにある山まで真っ二つである。
「……ま。無駄だけど」
振り抜いた後エネルギー切れになった機械を腰に戻し、これからどうしようかと一人ため息を吐き出すアズマなのであった。
村では貪種が真っ二つにされた辺りで皆ドン引きしていた。リシャルだけはまぁ分かってたって感じで米を焚いていた。
「あ、終わった?」
「……ねぇ、キミの友達ってさ。何者?」
「ヒノモト出身のアズマ。俺は詳しい事はそれ以上知らねぇんだな。ほらカレー出来たぞ!」
アズマが持ち帰って来た物はレッドツリーの種子と貪種が今まで詰め込めるだけ詰め込んで来た種。戦闘中に種から溢れた粉を嗅ぎすぐさまスパイス系列の何かだと判断したアズマは、とりあえず食えそうな物を持って帰って来た。
「久々に怪我しちゃった」
「おぉい!流石に放っておいても良い事無いだろうし……おい回復魔法頼む!」
頬を掠っただけで若干シワシワになっている顔。一応治せるのは知っているので回復魔法を使ってもらい傷が直った。その後リョクバから釘を刺されてしまう。
「キミねぇ……!もし仮にそれが足とかに当たってたら死んでたよ!ホントに!まぁ僕らは魔法が使えるから良いけどさ……」
「へー……。あ、じゃあコレ充電出来るかな?」
そう言ってリョクバらに充電を頼むアズマ。初めて見る機械に困惑しながらもなんとかやってみると総出で充電しようとしている。アサとガオの二人はアズマが帰って来た事を喜んでいた。
「よかった!」「生きてた!」
「ん。この通り」
「よーし村の危機も去ったところで飯にするか!グリーンカレーだ食って行けよ!」
そんな訳で充電の為にもう一晩この村に泊る事になった二人。何でも充電自体は出来るがフル充電に一晩かかるとの事。寝る為にリョクバの客室に再び泊る事になった二人。リシャルはここで遂に腰に下げてるレーザーブレードについて聞き出そうとする。
「そう言えばあの機械って……何?」
「レーザーブレードだけど」
「誰から貰ったん?」
「殿様。凄くエライ人」
「はぁ……」
どうやら詳しい事は知っていない様子である。一応使い方は知っているが名前とか製造方法とかそう言うのは一切知らない様子。ヒノモトには一応殿様と言うか将軍と言う奴がいるのは知ってるが、それから直接……?と。
「─殿様?」
「なんかエライ人だってさ」
「そ、そりゃ偉い人だろうけども……?何やったのお前?」
「ん-……。覚えてないんだ」
「あぁそう……。まぁ覚えて無いならしょうがないか」
コレは多分聞いてほしくない話なんだろう。アズマの暗い表情からそれを察しこれ以上聴かないことにした。ホントは覚えているのだろうが人の聞きたくない話をわざわざ聞くほどリシャルは野暮じゃない。そもそも聞いたところで多分相槌しか打てない。
「─よし!んじゃ明日はガチスパイスカレーを作ろう!」
「おぉ」
「そうと決まればお前の持って来たレッドツリーの実、確認させてもらうぞ」
実を割り粉を舐めると大体どういうタイプのスパイスなのかを把握、色別に瓶で分けて保管する事にした。
「じゃ……寝るぞ!」
「おやすみ……」
貪種:捕獲ランク最低S越え。他の植物に寄生しその植物の都合のいい部分だけを奪い後は命令に従うだけの機械へと変えてしまう。通常のスパツリにハイバオバブを枯らすほどの魔力吸収は出来ない。元々はレッドツリーが他のスパツリを従えていたが雑に使われていた。厄介なのはどれだけ破壊しようが種を取らない限り何度でも復活する点にある。……まぁ今まさに割られて食われてるんですけど(笑)
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