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4:旅の始まり

 

 宴も終わり寝静まった頃、明日の仕込みがあるはずのクラヌは何故かリシャルの部屋にやって来ていた。


「リシャルよ」


「なんだよ親父」


「そろそろお前も本格的に修業をする日が来たようじゃな」


 机の前で日ごろから作っている料理レシピを眺めながら暇をつぶしているリシャルは、唐突な話に思わず二度見してしまう。勢いが良すぎて椅子が倒れてしまう程に。


「……え!?マジ!?それってお誘い?」


「あぁ。明日にでも出発するから準備しろ」


「しゃぁっ!そうと決まれば早速準備だ!」


 まるで明日遊園地に行くようなテンションで旅用のバッグに荷物を詰め込んでいくリシャル。色々と詰め込んでいる間にどこへ何をするのかも聞いていないのにこのテンションは不味いのでは?と思い直して聞き返す。


「─そう言えばどこに何しに行くんだ?」


「やっぱりそれを聞かない内からはしゃぎおってからに……。お主に課せるのは五か国で行われる料理大会じゃよ」


「料理大会!?そう言えば『マーロ』でも来月辺りに行われるって聞いたけども……」


「あぁ。お前には『マーロ』『イチャナ』『ヒノモト』『キンコゥ』『リカメア』の五つの主要都市で行われる料理大会で優勝する旅に出てもらう」


 それは普通の人間なら無理だろ!と言う程に難しい事だった。どのくらい難しいのかと言うと、こちらの世界で言うなら『世界一周しながらそこで行われる有名スポーツ大会でそれぞれ優勝して来い。ちなみに旅費は優勝した時に出る賞金でな』と言うような物。特にリカメアに関しては開催は五年に一回。去年行われたので四年後にしか挑めないのだ。


 だがリシャルは目を輝かせながらそれに挑めることに感激している様子であった。


「マジかよぉ……!滅茶苦茶にして良いんだな!?全部勝って来ていいんだよな?!」


「あぁ!じゃがそれを制覇するまで……むしろ帰って来るな!制覇するまでお前はこの店を出禁にする!」


「へぇっ!?」


「そのくらいの覚悟が無ければ出来んぞ優勝は!……だが帰って来たら、ワシの跡を継いで料理長にでもなんでもなると良い。自分の店だって持てるじゃろお主なら……」


「─分かった!行ってくるぜ親父!あっでも一人で行くのか?別に俺は良いけど……」


「そこはちゃんとあ奴に説明しておる。アズマ」


 盛り上がっている最中にリシャルの部屋に呼ばれたのでやってくるアズマ。相変わらず何かをもちもちしている様子であった。


「ん」


「リシャル。こやつを護衛に付ける。元々こやつは行く場所がない。じゃが帰る場所はあるはずじゃ。ヒノモトはこやつの故郷。そこまででもいいから一緒に行ってはどうじゃ?」


「あーそうか。ヒノモトはお前の故郷だったな!」


「ん。まぁ……よろしくね」


「おう!よろしくな!んじゃさっさとパッキングの続きを……」


「そこじゃがリシャル。お前に渡したい物がある」


「えっ何?腕輪?」


 そしてリシャルは再び荷物を集めようとするがクラヌに謎の腕輪を手渡される。シンプルな銀色の腕輪だが、アズマは見覚えがある機構でも見つけたのか一人盛り上がっている様子だった。


「なぁ親父コレなんだよ?」


「それはワシが昔旅をしてきた時、ヒノモトで出会った女性から貰った『ポータブルキッチン』じゃよ」


「えっそんなのあるの!?」


「使い方は説明書があるからそれを見ると良い。コンロからオーブン、水道にミキサー大体のキッチン用品は揃っておるぞ?」


 ポータブルキッチンと言うだけあり、水が出るシンクからガス&IHヒーター、その他よっぽど使わんだろコレってくらいのキッチン用品以外のほとんどはこの中に仕舞われていた。空間魔法とか言うのを加工して作られたのがこれらしい。既にテンションがおかしい事になっているリシャル。


「すげぇ何でもあるなぁ!ブレンダーも包丁もある!しかも包丁は十種類あるじゃねぇか!……え、ホントに貰っても良いのか親父?」


「無理難題を押し付けているんじゃ、そのくらいしなければ親ではない。金は……まぁそれは自力で稼いでみろ。そのくらい出来なければ料理人には成れんぞ」


「そりゃそうか。けどまぁそのくらい俺に期待してくれてるって訳だもんな……!よっしゃ!じゃやって来るぜ親父!待ってろよ四年後には帰って来るからな!」


「ワハハ!楽しみに待っているぞリシャル!」


 今にも飛び出しそうな勢いだが夜中なんで一休みしてから旅に出る二人。まずはクラヌの知り合いがいると言う村『マローグ』へ向かう。ここから歩いて約十分程の場所にあるその村は、地図には載っているが何故か何もない。


「?」


「あぁここか?ここはエルフの村があるところなんだよ。まぁ待て今来るはずだ迎えが」


 しばらく木の下で待っていると上からエルフの男がやって来る。ロープウェイに乗って。弓を構えながら警戒している様子だったが、リシャルがいると分かると弓を下ろして近寄ってくる。


「なんだリシャルか!クラヌの所の……息子さんだっけ?」


「まぁな。隣のこいつは俺の旅仲間アズマ。悪い奴じゃない」


「そうかリシャルの友か。私は『クロバ』だよろしくな」


「ん。よろしく」


 挨拶もそこそこに二人も上へあがって行く。そこには村が存在していた。村の人口は約五十人、木の上だと言うのに畑が作られていると言う奇妙な状況が出来上がっていた。


「この木は『ハイバオバブ』って木でな?何でもこの上で暮らすエルフは割といるんだってよ。んでも今は色々あって……確かここ以外だともう一つしかないんだっけハイバオの群生地」


「へー」


 その後クロバと別れクラヌと知り合いのエルフの元へ行く。ここの長の息子で最も強いエルフ。


「よっリシャル。でそっちが友人のアズマくん……だっけ?」


「ども」


「よぉ『ベリア』!んであいつらは元気か?」


 家から出て来たのは緑髪のエルフ。戦士のエルフは髪の色を緑にするのが基本なのだ。だいぶ知り合いなのかどこかフレンドリーである。


「ん?あいつらなら……」


「おーっ人間!しかも二人いるよ『アサ』!」


「だね『ガオ』!ねー兄ちゃん!こいつら秘密基地に連れてって良い!?」


 そう言ってアズマの背中に飛び込んでくる『アサ』と『ガオ』。双子兄妹なのか見分けがつかない。とりあえず右にリボンのがアサで左にリボンがガオである。まぁ二人のタックルを食らってもアズマはびくともしないが。


「お前らなぁ……。そのタックル止めとけよ俺一回死にかけたし……」


「別にいいよ。気にしてない」


「まぁ良いけどさ……。さーて早速飯を作るか!何かリクエストあるか?」


「そうだな……。じゃ羊肉が無駄に余ってるからそれで何か頼む!」


「─!ラムチョップを作ろう!」


 この村には一日滞在する予定である。食料を補給した後マーロへと向かうのだ。そんな感じでゆるゆると料理して気が付けば夜。


「ヘイラムチョップ!『ドラム』肉焼いて『バロトマト』を煮たのをかけた奴だ!」


「骨付きラム肉って良いよね!」


「うまうま」


 飯を食った後は風呂に入って寝るだけ。


「ボクこの兄ちゃんと一緒に入る!」「ボクも!」


「あー……。頼めるか?」


「いいよ」


 この村には温泉がある。かつてクラヌが旅をしていた頃に技術提供を行い作った物だ。それからポリナとマローグの付き合いが始まったのだ。


「おいコラ!風呂場ではしゃぐな!」


「ヤダー!」「やー!」


「……」


 風呂に来たアズマらだったがアサとガオの二人は大はしゃぎ。しょうがないのでアズマはガッツリ体を押さえつけて風呂に入れ始めた。そんな二人をよそにリョクバはリシャルと会話していた。


「……なぁ、スパイスツリーって……知ってるか?」


「─スパイスツリー?」


ハイバオバブ:クソデカい樹。力士が百人乗ってもだいじょーぶ!捕獲ランクA+。

ドラム:どこでも育つしどんな土地でも増える羊。家畜にはピッタリ。しかも旨い。捕獲ランクE+。

バロトマト:バロメッツって植物あるじゃん。アレのトマトバージョン。羊関係ないの。捕獲ランクE。

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