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2:アズマVSシャバリェ&ミートドラゴン

 

「うーん想定してたのと違うけどコレはこれで」


 リシャルは思いついた料理を試していた。箸で食うリゾットを想定していたのだがカリッカリに焼けてしまい、もう素手でも食べられるくらいになった。ただ案外カリカリの米にチーズの風味が合い美味しいのヨシ!としていた。


「とりあえず『コメーズ』と言う名前にしておこう」


「たまにお前は変な料理を作るなぁ……。そして名付けセンスがない」


「それは言わないで─」


 とりあえず出来上がった物を食べながら再びアズマが目を覚ますのを待つリシャル。クラヌは一年ぶりの休みを終え明日からガッツリ仕事&仕事の毎日が始まるので、仕込みをすると言い厨房に消えて行った。


「コイツ全然起きねぇな……。死んだか?ホレホレ全部食っちまうぞ~」


 顔にコメーズを近付けてみると目にも見えないスピードでそれは齧られる。ヒエッと一瞬身を下げたところで皿に乗っている残りの全てをあっという間に手にしてボリボリと平らげていく。人と言うよりは化け物に近い挙動である。


「焼きおにぎりみたい」


「─あっ!起きてたのかよ!?」


「……?あ、今起きた」


「そ、そうか……。で、旨いか?」


「凄い美味しい」


 目覚めたところで聞きたい事が山ほどあるので、まずは一番聞きたい事を聞くため料理で釣って話を聞くことにしたリシャル。


「─さてと……。まずお前……。なんで来た?」


「あ……。お魚取ってたら船ごと流された」


「いやごめんそこじゃなかった聞きたいのはだな……。お前、どうやって来た?」


「沖を目指して泳いだよ。港近くには鳥がいるからそれを目指して」


 この時点で少なくともバカみたいに海を泳ぐ事が出来るのは伝わった。魚か何かか?と言いたくなったが口を噤みこれからどうするのだと聞き始める。


「で、これからどうするんだ?ヒノモトからここらへん『ナーロッパ』まではだいぶ距離あるぞ?」


「んー……。地元には戻れないかな。別に良いけど」


「故郷に哀愁とか無いのか?」


「─もう家族いないんだ」


 話の途中で聞いちゃいけない感じの話題に触れてしまった事を感じ、キッチリ謝るリシャル。


「あぁ。……そりゃ悪かったな、聞いちまってさ……」


「良いよ別に。それよりこの国、美味しい物いっぱいある!?」


「お、おう。食いつきいきなりすげぇなお前……。あぁこの国ならではの料理は沢山あるぜ!どうだコレから食いに行くか?」


「ん!」


 アズマが気丈に振舞っているのはなんとなくわかる。だが分かったところでリシャルにはどうしようもない。ひとまず話もまとまったところで裏口から出ていく二人。すると何やら店の前が騒がしいことに気が付いた。


「なんだよ全く……って?!倒れてるじゃねぇかよ人が!おいさっさと応急処置をしろ!んで何があった『ジック』?」


 店の前にいたのは凄くボロボロになっている男。何かから逃げて来たのか背中の傷がとても多く、その手には立ち向かおうとしてへし折られたであろう剣が握られていた。野次馬をかき分けリシャルは何があったのか問い始める。


「─り、リシャルか……!大変だ……!今街に……『ミートドラゴン』の大群と『シャバリェ』が……来てる!隣町は……壊滅だ!」


「何?!……い、いつ来る?!いつだ!?」


「何とか逃げ延びたけど……も、もう一時間も無い……!に、逃がせ皆を……!」


 ミートドラゴン。全身が肉で出来ているという奇妙なドラゴン。ドラゴンと名前にあるがどっちかと言うかトカゲである。その肉は剣を通さない程に密集しており、更に絶対に集団で襲い掛かって来ると言う厄介な特徴がある。だが問題はそこではない。シャバルリェと言う竜である。


 シャバリェ。白銀の鱗に身を包みデカい翼で空を飛び、体長は約二十メートルを超える巨体でとても恐れられている。以前この街にそれがやって来た時死人が計五十八名、負傷者が二百人を超え街の八割が瓦礫と化したほどである。


 捕獲ランクと言う、現在判明している生物に付けられるランクがある。コレは『S>A>B>C>D>E』と分けられており、そこに『+-』を付けるのが基本になっている。ではシャバリェはと言うと捕獲ランクは堂々のA。コレは上から数えて五番目と言う程の強さである。野次馬はそれを聞いて一斉に街から逃げ出していく。


「ふ、ふざけんな!まだ二年も経ってないのに来るのかよ!?」「早く逃げないと!」「おい子供やお年寄りから逃がせ!まだ一時間あるから焦るんじゃない!」


 リシャルは二年前の悪夢を思い出す。平和に過ごしていただけの街が無残に焼かれ、クラヌの店も粉々にされたあの悪夢を。今すぐ走って逃げだしたい足を無理やり押し付け、出来るだけ多くの住民を避難させて逃げようと踵を返したその時。


「─おいアズマ!?」


「強いの?それ」


「─!お前まさか……!戦う気か?!ダメだ無駄死にだ!以前の戦いじゃ翼を貫いて撤退して行ったが……一人の人間にどうこう出来る生き物じゃない!しかも今回はミートドラゴンまで……!」


「……。僕にはそれがどれだけ強いのかは分からない。けど僕には恩がある。殺してくるよ─そいつ」


 アズマは一人森の中へ駆け出していく。軽々と山の中を飛びながら駆けていると、その内シャバルリェが見えてくる。知能があるのかミートドラゴンを火で誘導しながら街に追い立てている様子である。つまりこのミートドラゴンの大群に街は壊滅させられたのだと、アズマは理解し腰に下げた機械を抜き放つ。


「─全部切る」


 起動した瞬間に機械から刃が出てくる。黒く光る刀身に、一メートルはあろうかと言う刃渡り、そして何よりもすさまじい音を立て現れたそれを、我々はこう呼ぶ。


()()()()()()()()と。


 シャバリェは下に広がる惨状に満足している様子だった。二年前の襲撃で羽を片方破かれたこいつは、自ら襲撃するのではなく数に物を言わせ蹂躙すると言う術を覚えた。元々他者を蹂躙し悦に浸ると言う奴だった。

 リシャルらのいる『ポリナ』の隣町は圧倒的に武力は上だった。しかしミートドラゴンの大群相手には成すすべなく轢き殺された。数百匹もいるのだ、数の暴力に押しつぶされてしまったと言う訳だ。


 そんなシャバリェがほくそ笑んでいるとミートドラゴンの前に出て来たアズマを発見する。バカが死にに来たかと死に様をよく見る為に瞬きをした。


 ブゥンッと、一度何かが動く音が聞こえた後目を開けてみると。


 そこには数百匹いたはずのミートドラゴンの死骸が大量に存在していた。


「次は─」


 そう聞こえた気がしたシャバリェは即座に空高く逃げる。この竜は五百年生きているのだが、それほど生きた理由は臆病だから。龍一倍逃げるのが早く、龍一倍狡猾なドラゴン。それがこいつなのだ。アズマが届かないだろう場所に逃げると言うのは当然の事だった。


 だが見渡せど見渡せど、アズマの姿がどこにもいない。一旦どこに……。と落ち着いたところで背中に重量を感じる。既に背に乗られていると、シャバリェは勢いよく横旋回をしようと体を捻った。捻ったところで気が付いた。


 自分の胴体が自分の視界の上にあると言う事に。


 何が起きたのか、なぜ自分の胴体が上にあるのか。それを考える間もなく─


「死ね」


 アズマは背から飛び降り脳天にレーザーブレードをぶっ刺したのであった。


「落ちた……」


「え?」


「─シャバリェが、落ちた」


 ポリナで観測していた男がそう言うと街は騒めき、次第に声は大きくなって行く。歓喜の声が上がった時にはアズマは既にシャバリェとミートドラゴンの死体を解体し始めていたのであった。


ミートドラゴン:捕獲ランクC-。一人で戦うのは難しいと言った感じだろう。全身筋肉で覆われている為か、斬撃も打撃も妙に耐性がありその上群れで生活するのでかなり厄介。しかし肉は旨いため一度市場に出るとそこそこ高値で売れる。

シャバリェ:捕獲ランクA。五百年生きてきたドラゴン。火を噴き空を飛び、逃げるとなったら一目散に逃げていく。厄介なうえその巨体は剣も槍も矢も通さぬ堅牢な鱗に守られている。かなりの知能がありそれを他者を痛めつける為だけに使っている。肉は旨いらしい。

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