鳥は駆ける大地を駆ける
「ーーー皆さん配置につきましたか?」
果てなき森の出口付近に、魔族の男が一人立っていた。
『問題ありません。いつでもどうぞ』
『僕の方もいい作品ができたよ』
「わかりました。それではーーー進軍せよ」
次の瞬間、果てなき森に迷いの大魔法が掛けられているにも関わらず、森の中から魑魅魍魎の大量の魔物が出てきた。
男は駒の進軍に参加して、遠くに見える街を見ていた。
「さて、我々の為に消えてもらいますか」
ここに魔王軍との戦争の狼煙が上がった。
「ヤバい」
場所は変わり、外が喧騒に囲まれたある宿の中、一匹の鳥と一人の人間が宿泊していた。
彼らは先程起床して朝食を頂いていた。硬めのパンが主食としてあるが、ボアのシチューとサラダと共にだされ、客の胃袋を鷲掴みにするいい香りが漂っていた。
しかし、いつもならこの匂いに釣られて続々と宿泊者が降りて来るはずだが、今日は一人も降りて来なかった。
そう冒険者御用達の宿であるここの客は、皆既に魔王軍との戦いに参戦していた。
その事実を寝坊した二人は店主から先程知らされた。
それでユースは焦っていた。
『ご主人様〜、これお代わり〜』
「仕方ないな、俺も一緒にお代わりしよう」
………いや、そこまで焦ってはいなかった。
『それにしても、ご主人様は早く行かなくていいんですか?戦場に』
「流石に約束した次の日に来るとは思わなかったし、多少遅れても大丈夫だーーー」
「女将さん!北区の冒険者達が続々治療班の所に運ばれてるらしい!もしかしたら突破されるかもしれないから、ここら辺の住民は避難しろってさ!」
「なに!わかった、準備するわ」
「…………」
『……どうします?』
「死ぬ気で急ぐぞ!」
『了解〜』
血相を変えたユースはお代わりした朝食をかきこんだ後、全力で担当の北区へと向かった。
「ペル!」
『なんですか〜』
「お前はあの約束した女性覚えてるか?!」
『覚えてます!』
「機嫌を取る為に急いで支援してこい!」
『えぇ〜なんでですか』
先程からおどけた身振りをするペルに若干イラッ、としていたが無視をしてた。
「美味しい食い物食べれなくなるぞ!」
『了解です!!』
敬礼をしたペルは、北区の反対の南区へと駆け出した。
『全く、ご主人は人の扱いが雑なんですから』
何故かわからないが自分をしっかりものだと考えているペルは街の中を駆け抜けていた。
避難する人を避ける為に壁を走ったり、人の間をすり抜けたり、カッコつける為に屋根を走ったりして大地を駆けていた。
『それにしても、なんでかわかりませんが私の通った後に何か投げられているような?』
ペルは気付いていなかった。現在は魔王軍と戦っており、その兵の殆どが魔物であることを。
そして、ペルは忘れていた。自分もまた魔物であることを。
その結果、駆け抜けた先々を混乱させているペルであった。
『まぁ、私の魅力に気付いたんでしょう!』
変な自信が漲るでかい鳥である。




