門番は辛いよ
勇者達が滞在している街の詰め所にて、
「お〜い、交代の時間だぞー!」
「やっとか」
「早くクリアちゃんの尻でも見ながら酒でも飲みたいぜ!」
「ったく、お前いつかクリアちゃんに嫌われるぞ」
「お前」
「なんだ?」
「それがいいんだよ」
「…………」
「あ〜、交代するが何か注意する事あるか?」
「いや、コイツの頭くらいかな」
「そりゃ違いね!」
「お前ら酷いぞ!」
これは門番がいつも通り、夜間警備をしている時間帯。
5年前から果てなき森に『迷いの大規模魔法』が貼られてから、魔物の侵入も減り、盗賊もここ最近は出現していない事もあり、彼等の警戒は少しだけ緩んでいた。
「はぁ、今日が夜勤とはなぁ〜」
「先輩!気を抜き過ぎですよ!」
「お前は今日が初めての夜勤だったな?」
「はい!」
「じゃあいい事教えてやるよ」
「何ですか?」
すると、長年門番を務めた中年の男はやる気ある後輩が笑いながら言った。
「夜勤はな、程よく手を抜く事が大事なんだよ」
「それ、サボりたいだけじゃ……」
白い目を向け出した後輩を見て、慌てて信頼を取り戻そうと話を続けた。
「違う違う!夜勤ほど手を程よく抜かないと失敗するんだよ」
「でも、手を抜くと街に入られる可能性が…」
「それがな、逆なんだよ逆」
「え?」
「気を張りすぎると全体を見れなくなるんだよ。夜勤の時は特に周りを見て、違和感をなんとなく感じる事が大事なんだ」
「なるほど!」
「余裕がないと、周りなんて見えないだろ?だから程よく気を抜くんだよ。ほら、居酒屋でもらってきたこのツマミでも食っとけ」
「ありがとうございます」
そう言って、骨付き肉を男2人は食べながら夜勤に勤めていた。
「しかし、本当に先輩の言う通り何もないんですね」
「そりゃそうだろ、毎晩何かあるなんてそれこそ問題だろ」
「それはそうですね!」
「まぁ、平和が一番だな〜」
「そうです、え?」
すると、後輩と呼ばれた男はある事に気付いて固まった。
「そうだな、これが終わったら朝食くらいは奢ってやるぞ。そこで俺の教訓でも聞いとけ!」
「あ、あ……」
そこで、後輩がなかなか返事しない事に気づいて後輩の方を見ると、後輩が驚くほど真っ青になり、汗を大量に流している姿を見た。
「おい!どうした?顔色が悪いーーー」
そこでやっと自分の役割を思い出した後輩の男は、先輩である男に伝えた。
「……先輩!森の方からとんでもない魔物が攻めてきます!!」
「…………は?」
これが今まで魔王軍と人類同盟がしていた牽制合戦ではなく、本格的な戦争の始まりだった。




