酒をくれる人はいい人
訂正しました4/7(金曜日)
男が目を開けると、自然が全てを支配している大森林の中に立っていた。
「ここが異世界か……て、なんで神様が居るんだ?」
「え、いや君と一緒じゃないといけないんだよ」
「じゃあなんでさっき別れるみたいに言ったんだよ!」
「雰囲気出るじゃん」
「………」
「………」
転生前の空気を返せ、と思う男であった。
「まあ、いきなり君を放置するのもアレだから、僕の知人に君を鍛えてもらう予定だよ」
「それはありがたいけど、その人?は引き受けてくれるのか?」
すると神は間髪を入れずに言った。
「それは大丈夫だよ、絶対に。それに拒否権なんてないから」
「………」
にこやかな笑みを浮かべる神に対して、不信感を抱いた男であった。
「ここがその人の家か?」
「そうそう、ネルーーー!!」
神がそう叫ぶと年を重ねたお爺さんか出てきた。容姿は仙人のようで、立つ姿は何千年も成長してきた巨樹を連想させた。
格好は褌だけと見苦しかったが。
「おお、なんじゃ神よ久しいな」
「うん、久しぶりだね」
「千年ぐらいかのぉ?」
「前の転生者からかなり経ってるね」
「話は中で詳しくするとして、その坊主はなんじゃ?」
ほんの少し、神とネルと呼ばれる老人が話している間に、男は近くにある水溜りで、茶髪で彫りが入った自身の外国人顔が気に入り、キメ顔をしていた。
「あぁ、彼ね。ほら、君が手紙で欲しい欲しいと言っていた弟子だよ。転生の権能を使って連れてきたんだ」
「おぉ!!ありがとう神よ。これでわしの技術を後世に残せる!さぁ、坊主!ウチヘ入りなさい、茶も出そう」
「むふふぅ、ん?あぁ、了解」
男はポージングを辞めて、何事もなかったかのように家の中に三人とも入って行った。
ちなみに、男が旅に出るのは凡そ百年後の話だ。
「ーーーと、いうわけで君を呼んだんだよ」
老人、ネルの家に入り神は男に呼んだ理由を教えていた。ネルはかなり昔から亜神であり、あと数百年ほどで神になる資格が出る。しかし、ネルは己の流派の技術を今まで教えていなかった事を思い出して、
「だれか寿命が長くて丁度いい奴はおらんかのぉ?」
と、かなり前から神に相談してたそうだ。しかし、神は立場上動く事が簡単に出来ないので、千年に一回の転生権を使って男を呼び寄せた。更に、転生により魂が自然と強化されて上位種へと最初から進化しているらしい。
「進化って何だ?」
「そうじゃ。わしの流派は『万水流』と言ってな、ありとあらゆる状況でも戦える流派じゃ。ただのぉ、あまりにも俗世を離れすぎて教える弟子がいないんじゃ。」
「なるほど」
(俺の意見を聞く気ないな)
男は神どもの理不尽を感じつつ話の続きを聞いた。
要約すると、というか一言で言うと「弟子になれ」だった。
話を終えてから妙に視線で刺してくる、二人、いや二柱を横目に男は考えていた。
(そうだなぁ、せっかく転生したのにすぐに死ぬわけにいかないしなあ〜)
「わかりました」
「と、ということは?!」
「弟子に」
「「弟子に?」」
「なろうかなぁ〜、と」
「「よっしゃぁああ!!」」
そう男が言うと神と老人が抱き合って喜んだ。老人にとっては最後のチャンスであり、神にとっては千年に一度という貴重な機会を失わなかったことができ、感極まっていた。
「よし、今日は宴じゃ!」
「そうだね、神界の自宅からいい酒をもってくるよ!」
そういい、老人はキッチンへ、神は神界へ酒を取りに行った。男は酒と聞き、前世での飲み損をせずに済むと分かり、謎のダンスをわざわざ外に出てし始めた。
男は何がしたいのだろう、いや、考えたら負けだ。