師を倒すために
最初に男がネルの首へと斬りかかるフェイントを入れ、本命である右腕の関節を狙ったが、ネルはそれを地面の方へと受け流し、逆に男の左腕関節を狙った。
「魔弾」
男がネルの顔に向かって魔法を使った。
「?!」
ネルは対象を魔弾に切り替えて真っ二つに切り、流れるように間合いの外へと離脱した。
「それが魔法か!!」
ネルは弟子が知らない事をこれからしてくるという興奮を覚えた。
「師匠、そんな所いたら危ないぞ?」
その瞬間、ネルの右足付近から魔弾が急にネルを襲った。
「ちっ?!」
ネルは右腕に『流れ』を纏わせて魔弾を受け流そうとした。
その時、魔弾が大爆発した。
その際の熱量は凄まじく、ネルが立っていた場所は一部がガラスへと変化していた。
「やっぱり、避けられるか」
煙が晴れると、左手を失ってはいるがそれ以外は無傷のネルがいた。
「はははは!!怪我をするのは一体化何千年振りかのぅ?ワシの弟子はこんな遠慮しない化け物だったとはのぉ?」
「奇襲をしてそれだけしか損傷してない師匠の方が化け物だろ!」
男が放った魔弾は、バラットと共同開発したオリジナル魔法の一つだ。この世界は適正属性は存在するが、殆どの属性を使うことができる。
それを利用して、元々発動が早い『魔力弾』を改造し、その中に属性を圧縮して閉じ込めたのが男の魔法の正体だ。
この魔法は属性を閉じ込めるという、常に魔力操作が必要不可欠なものでコントロールが難しい。それは相手に当たるまでコントロールを間違えるとただの魔力弾となるからだ。
その難易度の高さはあるが、それ以上に威力は計り知れない。魔法で圧縮という行為は威力を増幅させることに使われる高等技術だ。
火属性であれば、先程のようにマグマ並みの火力を瞬間的に出すことができる。
しかし、それをネルは爆発の『流れ』を左手に集中させる事で、大きな被害を免れていた。
コンマ一秒も無い中で冷静に取捨選択を行い、左手を失う選択をしたネルはまさに一流の武人であった。
(練習によってマグマ並みの温度を持っていたのに、左手だけで済ませるなんて化け物かよ)
(流石に焦ったのぉ、あんな高火力な魔法を無詠唱且つ高い精度で行使するとは侮らんのぉ。我が弟子ながら化け物じゃな)
二人の化け物はそんな事を考えていた。




