真骨頂
3月16日訂正
ネルは『流眼の巨人』を従えようとしている弟子を眺めていた。
(あやつなら人の身であの化身を従えれるだろう)
彼は男が『流眼の巨人』を従えると確信していた。
あの巨人は、そもそも神々に叛逆の狼煙を挙げ、数万年の間、現在の創造神が世界を取り返すまで君臨していた巨人の一柱である。
力自体は弱まっているものの、その力はまさに神に等しい力を未だに持っている。
神殺しをした事があるネルだからこそできた奇跡の御技である。
それを未だ人の身である男がする事は、無謀であり、亜神であろうとも挑戦する事自体が蛮勇である。
しかし、男は成し遂げた。
「やはり………!」
疲れ果て、膝をついて荒い呼吸をする弟子を見て、ネルは密かに微笑みを浮かべていた。
しかし、ネルは気付かない。
男の目の紋章が少し異なることにーーー
ネルは男に構えたまま、喜んでいた。
(今、まさにこの瞬間、お主はワシと同じ舞台へと登ったのだ)
ネルは今まで制限していた力の一部を解放した。
「さて、弟子よ。そろそろお主も奥の手を出せ。そうしないとーーー死ぬぞ?」
男はネルを見ていたはずがいつの間にか消えた。
「遅い」
「ぐぅぅう?!」
気づくと男はネルに剣の鞘で横腹を打れ、木へと衝突した。
「いつの間に目の前へ……!」
「これが真の万水流だ。川の流れとは見えているようで、実際は見る事はできない。見えているのは光の反射、物の動きと外部の要因によって見えてる錯覚をしてるな過ぎん。
川の水面が荒れる事なく、また水晶のように透き通っている時、その流れは誰も捉えることができない。
万水流の真骨頂は、相手に反応をさせずに死を与えることだ。この流派の前に敵対する者は、誰一人としてこれに反応する事はできん。ただできる事は、死を受け入れることだけだ」
ネルは持っていた剣を引き抜き、静かに構えた。
「お主はこの境地へと辿り着かねばならぬ。しかし、この瞬間では無理であろう」
男は顔を伏しており感情を読み取る事はできない。
「このままいけば、決して勝つ事はできない」
男は眠りから覚めていくように立ち上がった。
「この100年間は無駄であったのだなーーー」
ネルは弟子の放つ本気の殺気を感じ取り、これからの闘いに武者震いをしながら、しばらくして言った。
「ーーーこれで良いか?」
男は過去の事、そしてこれからの未来を想像して答えた。
「ーーー良くないな!!!」
次の瞬間、今までの戦闘がお遊戯であるかのように、本物の死闘が始まった。




