修羅場にて
「・・・」
彰人と凛が部屋に戻ってきてから重い沈黙に包まれていた。
風花と浅村はなんとなく察している様子だったがどちらも何も言わなかった。
空はジッと彰人を見つめる。その視線に気づいていたものの、当の本人の話題だったので何とも言えず目を合わせることができずにいた。
「(まずい・・・これでは何かあったと疑われても仕方がない・・・何か場の空気を変える方法は・・・!)」
彰人は脳内Gooogle検索で[場の空気 変えたい]で検索をかけてみたがトップに出てくるのは「消臭の力」という消臭剤だけでまったく参考にならなかった。
このままではギスギスした空気のまま解散になってしまう。それだけは避けたかった。
その時、凛が声を張ってこう主張した。
「突然ですが歴史の問題です!1148年に起きた有名な出来事とは一体何?!正解したらイイコトあるかも!」
「1148年・・・浅村って歴史好きだよな?何かあったっけ」
「1192年なら定番だけど”1(い)1(い)9(く)2(に)作ろう鎌倉幕府”があるけど・・・1148年だとなんだろうな・・・」
彰人はとりあえず凛の問題に真剣に取り組むことにした。黙っていても埒が明かない。
浅村とともに腕を組んで(*・ω・)(*-ω-)ウンウンと唸って考えるが一向に答えがわからない。
とりあえず他の女子たちにも聞いてみることにした。
「クウカさんはどうですか?大人・・・だし大学も卒業してると思うので・・・」
彰人の「大人」発言にちょっぴり気を良くしたクウカもダビデ像のようなポーズで考えるものの答えは見つからなかった。
「うーん・・・勉強は得意な方だったけどわからない。こうなると語呂合わせじゃないのかも?日和はちょうどこの辺りを勉強してるんじゃない?」
「お姉ちゃん・・・ごめんね。私、偉人の肖像画にアレンジを加えるのに夢中で授業全然聞いてないんだ・・・」
「出たーwww肖像画にいたずら奴www」
凛は日和の発言に思わずツッコミを入れていた。クウカの日和を見る目がキリッとなる。これは家に帰ったら説教だろう。
みんな答えがわからずに悶絶しているのが楽しいらしく、左手を顎の下に持っていき貴族ポーズを取っている。
そんな凛を見て彩香はお手上げの様子だった。
「あたしは勉強とかしないし、したくもないから知らなーい。風花ならわかるっしょ?」
「1148年なら平安時代後期に当たるけど・・・これといった出来事はなかったはず。浅村くんの言う通り鎌倉幕府が制定されるのは1192年だし」
そんな風花の言葉を聞いて浅村はこう訂正した。
「1192年ではなく1185年(良い箱作ろう鎌倉幕府)が正しいとか言われてる。近年の研究によって訂正されることもしばしばあるから」
「へぇー・・・浅村くんほんとに詳しいんだねー」
「お、おう・・・」
隣にいた彩香がガチトーンで浅村を褒めた。突然の出来事に浅村は
「(歴史勉強しといて良かった!やったー!)」
と、心の中でまるでソシャゲでSSRを引いた時の男性の投稿みたいな感じになっていた。
「おやおやぁ、みんな降参かなぁ?ちょーっと難しかったかもね!」
「凛さん正解をお願いします!」
彰人はクイズ番組の司会者のような流れで促した。凛は嬉しそうにはにかみながら言葉を溜めて・・・
「正解は・・・1(い)1(い)4(よ)8(め)で”良い嫁作ろうキャバクラ幕府”でした~!イェーイ!」
「「「な、なんだってー!!!」」」
彰人、浅村、そしてずっと黙っていた空の3人は示し合わせたようにテンプレセリフを放った。
「ぶふふっ・・・キャバクラ幕府・・・あははっ」
「フフッ・・・そんなの・・・わかるわけ・・・ないでしょ・・・」
彩香は腹を抱えて爆笑し、風花は口に手を当て震えていた。
凛はそんなみんなの反応にうなずきながらTipsを付け加えはじめる。
「江戸でアルバイトしている青年がねー、お嫁さんが欲しくてキャバクラに通うんだよー!そのお店の名前は”夢俱楽部”だよ!」
「夢俱楽部・・・っ!一緒にお酒を飲んで意図的に酔わせたりするやつ!」
「お姉ちゃん!俺の女になったと思ったら、最後の最後で彼氏と結婚するやつだよ!絶対に許さない!」
空と日和はそれぞれヒートアップしていた。日和に関しては何か赤毛のホストガールに恨みがあるようなテンションである。
”夢俱楽部”の1作目が出たのは2009年であり、そもそも1148年にキャバクラなんて言葉はないはずだ。
彰人は呆れた目で凛を見やる。とりあえずさっきまでの悪い空気はなくなったが・・・
「凛さん、これ正解できたら怖いですよ・・・」
「えへへ・・・むしろ自分の才能が怖いよぉ」
凛は満足げな様子で体をくねらせていた。
浅村は真剣なまなざしで彰人に質問する。
「なぁ天河、江戸のアルバイトっていったらやっぱりお蕎麦屋さんが定番かなぁ?」
「そこ!真剣に考えない!そもそもバイトしながらキャバクラに通う前に、定職に就いてからお嫁さんを探すほうがよくない?!」
彰人は夢俱楽部が発売された当初から思っていたことを口にした。
「ブーブー!彰人くん”夢”がないぞー!」
「そうだそうだー!」
凛のブーイングが炸裂し、彩香はそれに乗っかりはじめた。さっきまで険悪だったはずの二人のコンビネーションアタックである。
「はぁ・・・」
彰人は思わずため息をついた。それでも、重々しい雰囲気が一転して明るくなったのを凛に感謝したい気持ちでいっぱいだった。




