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白だの黒だの

凛は空と彩香をそれぞれ一瞥した。空は彰人の隣で明らかに落ち込んでいた。

風花の歌を聴いて(`・ω・´)シャキーンとなっていたのだが、歌唱が終わり風化が彰人に話しかけているうちに(´・ω・`)ショボーンになってしまった。

何がきっかけでそうなったのか凛は考える。最初の視線は”憧れ”だったはずだ。

それがどうして落ち込んでいるのだろう。その様子をじっと見つめていた彩香も気になる。

彰人は凛に対して「空が学校に来てくれるようになった」としか言ってなかった。

それ以外の部分については話さなかったし、凛もそのことについて言及することはなかった。

彰人は他人の個人情報をベラベラと話すような人間ではないことを凛は誰よりも知っている。


「(ここは年長者として私がなんとかすべきだよね)」


髪の毛を意味ありげにファサァとしてから立ち上がり彰人のそばへと向かった。


「私、すっごく喉が渇いたな~・・・というわけで彰人くんを借りてくね!」


そう高々に宣言し彰人の腕を引く。彰人はされるがまま凛に従って立ち上がった。

そんな二人の様子を見た全員の反応は様々だった。


空は(´・ω・`)ショボンヌのまま動かない。

風花は何も言わず目の前のウーロン茶に口をつける。

日和は「お姉ちゃん!凛さんが動いたよ!」と興奮しつつ小声でクウカに詰め寄っていた。

彩香は二人を目で追っていた。その目には苛立ちがあるようにも見える。

浅村はそんな彩香を横目で見ていた。


二人で部屋を出てドリンクバーが備えてある場所まで行き・・・そこで止まらずに階段を上り始める。

そこまで来て彰人は凛に声をかけた。


「あの、凛さん?ドリンクを取りに来たのでは・・・?」

「はー・・・彰人くん、ここまで来ても気づかないの?」


凛は盛大にため息をつく。男女混合でカラオケに来て女の子が男の子を誘って抜け出したのだ。

そこで彰人はハッとなった。彼女は・・・北条凛は・・・


「飲み物を取りに来たはずなのにグラスを持ってきていない・・・ッ!」

「いや、そこじゃねーよ!」


もー!と頬を膨らませる凛。ゴスロリファッションも相まって完全に萌えキャラだった。

目の付け所がシャープな彰人は本気でわからないという表情だ。


「空ちゃん、落ち込んでたでしょ?気づかなかった?」

「なんとなく元気がないなって思ってましたけど・・・GOODYを歌ってたときは嬉しそうだったのに・・・」

「ねぇ彰人くん、空ちゃんが何か隠し事をしている様子とかないかな?」


隠し事・・・彰人は思案する。自分と出会ってから充実している、幸せだと言っていたはずだ。ただ、いじめにあっていたとき・・・


「・・・学校でいじめられていたときに実の母親にも相談しないで抱え込んでいたんです。空は嘘がつけない。それは今までの付き合いでわかります。だから・・・」

「誰にも相談できない・・・か、なるほどねぇ」


凛はうんうんと一人ごちる。そしてゆっくりと口を開いた。


「ねぇ彰人くん?好きな人ができたらどんな人になろうとするかな?」

「えっ・・・自分をよく見せようと努力する・・・とか・・・」

「うんうん。自分をよく見せようとするってことは”弱い部分を見せないようにする”ってことだと思わない?」

「俺はなんでも相談してほしいって、そう伝えています」


「相手を頼るってことは自分の弱い部分を相手に包み隠さず晒す必要があるんだよね。それってかなり勇気がいることだと私は思う」


凛は彰人を相手にファイティングポーズをとってみせた。そして微笑む。


「相手がこんな風に構えていたら、無意識のうちにファイティングポーズとっちゃうでしょ?根強い自己防衛の意識ってやつだよ」

「俺が・・・空を追いつめていた、と?」


人差し指を立てて彰人の眼前で振って見せる。


「彰人くんが責任を感じる必要はないんだよ。ただ空ちゃんが人を信じられるようになるには、まだまだ時間がかかるってこと」

「俺は・・・」


そうして二人が見つめあっていると階段へと続く入口付近に倒れこむ男の子がいた。


「ちょっ・・・押すなよ!ふざくんな!」

「いてて・・・もう少しでスケベな展開が・・・」


男子高校生3人組が彰人と凛の様子を観察していたようだった。

このカラオケボックスは雑居ビルの3階と4階にあり、一般的にエレベーターを使ってフロントへ行くのだが、上の階への移動や非常時のときなどのために階段は開放されている。

そして彰人と凛は階段の踊り場で話し合っていた。男女が階段の踊り場で見つめあっているなんて相当なイチャコラの現場である。

なぜか他人の恋愛事情が見たくてしょうがない人というのがいるものだ。

3人組もそんな野次馬の集団らしかった。


「アッ、俺たちのことは気にせず続きをどうぞ・・・!」

「ふふふ(ニコニコ笑顔」


凛は笑みを絶やさない。だが、よく見ると先ほどから両手を開いたり閉じたり意味ありげに繰り返していた。それは有名格闘ゲームのラスボスの立ちポーズを彷彿とさせた。


「「「ご・・・ごめんなさいぃぃぃ!!!」」」


3人組は一目散に逃げ出した。美人がキレると本当に怖いのだ。


「ふー!ふー!」

「凛さん落ち着いてください!別に何も見られたわけでは・・・」


ブチギレた野良キャットのように威嚇していたが、やがて時が解決した。

そうしてしっかりと凛をクールダウンさせてから部屋に戻った。


「おかえりー。ずいぶんと遅かったじゃない?何かできそうなくらいに」


そう言ったのは彩香である。彰人は黙秘を貫くことにした。ここはアダルトな女性である凛に任せるしかない。


「えっと・・・ちょっとなにを飲もうかなーって・・・(∀`*ゞ)エヘヘ」

「凛、あんたさぁ・・・グラスを持って行ってないし、持ってきてもないじゃん。喉が渇いたんじゃないのかな~?ふっしぎだなー」


日和の顔から表情がなくなり、やがてこう言い放った。


「姉さん、黒です」


彰人は大いに頭を抱えたのだった

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