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交わる視線

彩香は空をじっと見つめた。ストールを剥いだのは単純に暑かったからである。

しかし、空は意外な反応を示した。胸元に手を当てて彩香を見つめ返してきた。

それは”睨んでいる”と言っていいほど強い眼光だった。


「(ふぅん・・・?もしかして気づいている?)」


風花も凛もただ者ではなかった。そして空も”彩香も”周りには言ってないことがある。

彰人は気づいているのか、いないのか。気づいていて敢えて触れないでいるのか・・・。

彩香にはその判断がつかなかった。

でも、空の視線で決心がついた。今日、彰人に確かめたいことがある。

彰人が一人になるタイミングを見計らっていた。


一方の空はというと・・・


「(どうしてお母さんはあんなに大きいのに私はこんな・・・)」


自分の胸板に手を当てて、一人嘆いていた。

二次元キャラというのは総じて胸が大きい。空が普段プレイするゲームもずいぶんと胸が大きい設定が多かった。

現実のフェミニスト団体が献血で貰えるポスターのキャラクターの胸がでかすぎるという理由で抗議するほどである。

文字通り”次元が違う存在”にキレてもしょうがない感じはするけれど、それくらい胸の悩みは深刻なのだった。

別に彩香を睨んでいたわけでもなんでもなく、ちょっと目がキリッとなってしまっただけである。


「(これはもう彰人に揉んでもらうしか・・・で、でもっ・・・)」


想像するだけでなんかもういろいろとダメになりそうだった。


クウカ姉妹と彰人はこれから歌う風花の正面の位置へと座った。

彰人がクウカのスマホを使って詩亜の歌っているところを録画することになった。

クウカを挟んで彰人と日和が座る。彰人は凝り性なので、恐らく二度とないであろうというこの機会に大げさではなく命をかけて挑んでいた。


「彩香が歌う番だった?ごめんね。先に私がいいかな?」

「謝んなくてもいいよ。あたしも詩亜の歌声聴きたいしねー」


彩香から浅村のスマホを受け取り選曲を始める。最近のカラオケにはボカロ曲であったり、同人サークルの曲をカバーしているところも多い。

ハーヴェスタムーンももれなくカラオケ配信に対応していた。


「これでよし・・・。彰人も準備はいい?」

「スマホの設定もOK。いつでも言ってくれ」

「お姉ちゃん!ついに始まるみたいだよ!」

「・・・」


風花はあらかじめみんなで持ってきていたドリンクを口に含み、歌う準備に入った。

彰人はいつ曲が始まってもいいようにスマホを構える。

日和は大好きなお姉ちゃんの大好きな人が歌うのを心待ちにしていた。

クウカはすでにHPが尽きかけており、返事はなかった。


「それじゃあ・・・」


風花の声と共にディスプレイに曲名が表示される。遂に詩亜の生歌が披露される。

彰人は録画ボタンを押し、石膏ボーイズさながらのポーズのまま動かなくなった。


イントロが流れ、静かに曲の始まりを告げる。この曲はナローな感じ(Narrow・狭く、細いの意味)で作られており派手さはないが、真夜中にゆったりと聴くのに適した曲として月の民でもこれが1番だと言うファンも多い。


風花のボーカルにも熱を帯びていく。彰人は決して動かないがテンションは爆上がりになっていた。

それに対しクウカはというと、あまりの衝撃に耐え切れず気を失っていた。

隣にいた日和がそれに気づいて声をかけようとするが、彰人がそれを静止する。


「(お姉ちゃん!お姉ちゃんが!)」

「(日和ちゃんダメ!今撮ってるから!)」


彰人と日和は声を出さずにボディランゲージで言葉を交わしあう。

彰人に至っては右手でスマホを固定したまま、左手のみで日和を静止していた。

それはさながら退魔師が魔を祓う仕草に似ていた。彰人は本気である。

日和は彰人の圧にビビりつつ、肩をゆすって起こそうと懸命に救助活動を行っていた。


その様子を遠巻きに見ていた4人は撮影の邪魔にならない範囲で語り合う。


「俺は天河のこういうところが好きなんだよ」

「こんな真剣な彰人初めてみました!」

「あたしはもっと他のことに情熱を注いでほしいと思うけど」

「彰人くんは真面目だからねー」


そして風花が最後まで歌い切り、シンフォニック・オーバーレイ2023Mixはこれにて幕を閉じた。

カラオケマシーン特有の採点機能が得点をただき出す。


「ジャン!96点!もう少しで本人の域です!」

「私、本人なんだけどなぁ・・・」


風花は苦笑しつつマイクを置いた。

クウカはハッと目を覚ます。


「気が付いたら曲が終わっていたッ!何を言ってるのかわからねーと思うが・・・」

「お姉ちゃん・・・全然起きてくれなくて・・・」

「クウカさん、ちゃんと録画しといたからね?必要ならクラウドにバックアップとか取って・・・」


彰人はこの録画データの重要性をクウカに説明し始める。

クウカは言われるがままクラウドデータサービスにバックアップを残した。


「でもすごかったねー。詩亜の生歌が聴けるなんて思ってなかったし」

「普段の風花とは違う一面が見れた気がします!」


空と凛はそれぞれ感想を風花に伝えた。


「風花、ちょっとアレンジ加えた?原曲とは歌い方が違うなって思って」

「アレンジっていうか・・・今の私の歌い方になっただけ。昔の私は今聴くとぶっちゃけ下手よ」


彰人の質問に笑いながらそう返した。

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