おまえたちの夜 #8
犯人がわかったところでタイトル画面に戻る。
配信を開始して3時間ほど経過していた。アクセス数は500を超えた辺りから増えたり減ったりして均衡を保っていた。
「犯人がわかりましたし、一ノ瀬の狙いもわかりました。でも、どうして一ノ瀬は戸坂さんを殺そうとするのでしょう・・・?」
”続きから”を選択しゲームが始まる。だが、いつもの智の部屋ではなく女性の影が二人あり、会話するところから始まった。
「美也子・・・私、赤ちゃんが出来たんだよ?美也子よりに先に嫁いじゃうかも」
一ノ瀬「何それ、私に対する当てつけなの?しっかし・・・あんたに男ができるなんてね」
「ひどい!私だって男の人と付き合ったりするんだよ~。でも・・・男の人ってみんなあんなに乱暴なのかな・・・」
一ノ瀬「えっ・・・?」
「あっ・・・別に変な意味じゃないよ!でも私、そういうの疎くて」
一ノ瀬「・・・ねぇ、今度会わせてよ。どういう奴と付き合ってるのか知りたいし」
「う、うん・・・幸次さんに聞いてみるね・・・」
一ノ瀬「(しばらくして突然行方不明になった。携帯もつながらないし、住んでいたアパートにも行ってみたけどもぬけの殻だった・・・)」
美也子はゆっくりとベッドから身体を起こす。親友との最後の会話・・・それがずっと悪夢となって繰り返されていた。
美也子が”会わせてほしい”と言っても頑なにそれを拒んでいたように思えた。
あの時に止めておけば、もっとちゃんと話を聞いてあげてさえすれば・・・。
数週間後、親友は湖から遺体となって発見された。検視の結果”自殺”だと断定された。
美也子は他殺の線を何度も疑ったが、状況から判断して自殺で間違いないと警察から言われた。でも、それでも自殺するなんて到底受け入れられない現実だった。
美也子は取材と称して親友と付き合っていた”幸次さん”を探すことにした。
おそらくその男が何かを知っている・・・嫌な予感がしていた。
”戸坂 幸次”は案外簡単に見つかった。でも彼には妻子がいた。
それも高校生になる娘がいたのだ。そんな人間が他の女と結婚するはずがない。
美也子は確信した。親友が自ら命を絶ったのは・・・
一ノ瀬「クソッ!クソクソクソクソ!私がもっとちゃんとしていれば!あいつが悲しむことも・・・死ぬこともなかったのに!」
テーブルに拳を乱暴に叩きつける。美也子の部屋は掃除がされず、荒れ放題になっていた。彼女は戸坂に復讐することしか頭になかった。
”親友しか知りえぬ情報”を使い、戸坂をおびき寄せることができた。
すべては親友のため・・・せめてもの報いを受けさせるため・・・。
そうして遂に計画を実行する日が来た。
ゲームをプレイしていた虚空さんはそこで指を止めた。
「・・・」
だいだい「ちょっとシナリオ重すぎんよ~」
突剣階級「このゲーム全然キッズ向けじゃないじゃんw」
ステルス忍者「スーパー家庭的機械がキッズ向けだといつから錯覚していた?」
鬼ムシャムシャ「なん・・・だと・・・」
たっちゃんパパ「これも時代かなぁ・・・シナリオが火曜サスペンス劇場だね」
並盛「テテテッ!テテテッ!テーテー!⤴⤴⤴」
クソ汁「擬音だけじゃ伝わんねーよwww」
イッチ「コメントがないと精神が持たない(ノA`)」
☆おるてが☆「これは戸坂が殺されても全く同情できない」
†ガイア†「だな。一ノ瀬は田中の正体も知っている・・・その上で殺すのなら、田中にも何かあるんだろうな」
そこまで黙ってコメントを読んでいた虚空さんが話し出す。
犯人を突き止めるのを目的としていたが、一ノ瀬の事情を知ったことで変化が訪れた。
「一ノ瀬は大切な親友のために今回の計画を考えたんですね・・・」
アバターの虚空さんはずっと俯いていた。
「私にも大切な親友がいます。不登校になっていた私を励ましてくれた人・・・」
悪男「ヘヴィだぜ・・・」
二階堂紅しょうが「ぼっちで陰キャって設定じゃないのかよ」
戦慄の旋律「なっていた、ということだから今は大丈夫なんじゃ?」
バレル「(´・ω・`)ガンバレ」
イッチ「それでも好きだ!」
「私が一ノ瀬の親友だったら、こんなこと絶対に止めると思います。だから・・・一ノ瀬に人は殺させません!この計画を止めて見せます!」
大帝国ニッポンポン「虚空さんに突然の主人公属性・・・!」
ステルス忍者「このゲームでは実質主人公だろ」
病んでるとグレてる「この世界は自分こそが人生というゲームの主人公さ!」
鯵さんま「は?おめー良いこと言ったと思ってんの?」
バレル「クラナドは人生(`・ω・´)」
彰人は”親友”の言葉を聞いて彩香のことを思い浮かべていた。
初めてマグダナルダで空と会った日、空と彩香が出会って二人は何かを約束していた。
その約束の内容は彰人にはわからない。でも、空が学校に来てくれたのは彩香のおかげだ。だから彰人は彩香に感謝を伝えなきゃいけない。
彼女の力になれたら、そう思っていた。
彩香はそんな空の声を聞いていた。
「大切な親友・・・私が?」
彼女は自虐的に微笑む。自分のことを想ってくれる友達がこれまでいなかったわけではないと思うが、彼女は確実に疲弊していた。
人を信じることにどこか諦めを覚えていた。どこかで自分を利用しようとしているんじゃないか、本当の自分じゃなくて”演じている自分”しか必要とされていないんじゃないか。
今だってこんなことをしている自分に嫌気が差す。こんなこと親友なら絶対にしないはずだ。
それでも、どんな手を使ってでも彰人を手に入れる。
その考えに迷いはなかった。
それが彼女の生きる理由になっていた。
映し出されるモニタの向こうにもう一つの世界がある。
ジリリリリリ!
そうして主人公は部屋で目を覚ます。
おぼろげな記憶と確かな感触、まるで現実で起こったかのような絶望の余韻。
仮に人生をやり直せるとして、その人生が繰り返されていることを知らなければ、やり直しとは言えないのではないだろうか。
プレイヤーに導かれて主人公はまた雪深いペンションへと向かう。
そこで起こる惨劇を食い止めるために彼は何度でも繰り返す。
里奈「・・・え!ねぇってば!」
智「え?ごめん、ボーっとしてた」
里奈「もう!しっかりしてよね。ここが叔父さんが経営するペンションだよ」
智「・・・」
里奈「どうしたの?具合とか悪いの?」
智「いや、大丈夫だよ。心配させてごめん」
今度の彼の選択は・・・




