おまえたちの夜 #4
智「(戸坂さんが死んでからほとんど時間が経っていない・・・)」
サイドチェストの上には水の入ったピッチャーが2つあった。どちらも同じように見える。片方には空のコップが添えてあった。
なぜピッチャーが2つあるのか。水を飲むだけなら1つあれば十分なはずだ。
戸坂が死んだ状況を鑑みればおそらく・・・
智「(薬を飲むときに必ず水を飲むだろう。そこに毒が仕込んであったとすれば、この状況に説明がつく)」
ただし、この状況ではピッチャーの中に毒が仕込んであるかどうかの検証はできない。誰かが毒物を持っていたとしても、それが毒だと判断できる人がいないのだ。
里奈「私、中里さんを呼んできます!あと警察に連絡も!」
一ノ瀬「とりあえず、私たちだけじゃどうもできないわね・・・。ここはそのままにしておいたほうがいいでしょう」
雫「・・・」
雫は戦慄した表情をしていた。確かに人が死んでいるのを目の当たりにしたのだ。恐怖を感じるのも無理はない。
里奈はそのまま1階まで降りていったが、なかなか戻ってこない。
やがて中里が部屋の前までやってきた。その表情は憔悴していた。
中里「電話がつながらないんだ!こんなこと今までなかったのに・・・」
加奈「携帯も圏外だよ?!」
聖羅「それじゃあ・・・ここは完全に孤立してるってこと・・・?」
もうすでにゴンドラも動いておらず、街に戻れる術もない。今夜はここで過ごすしかなさそうだった。
OL3人組はみんな恐怖で震えていた。里奈、そして一ノ瀬も浮かない表情でこの状況を見ている。
中里「明日になったら皆さんで街に戻りましょう!今日のところはどうか我慢を・・・」
聖羅「そんなこと言ったって、ここには殺人鬼がいるかもしれないのよ?!」
一ノ瀬「・・・そういえば、田中さんがいないわね」
加奈「あいつが戸坂さんを殺したんだ!なんだか妙な気配がしてたし!」
智はこんな風になるんじゃないかと思っていた。田中はただ周りとの距離を置いていただけだったが、それは時に”異端”として認識されてしまう。
”自分たちと仲良くしなかったから”そんな理由で弾劾されてしまうのだ。
それは異常時に限ったことではなく、日常生活でも起こりうる。
もし田中が周りともっと会話をしていれば、打ち解けていれば・・・
智「田中さんを探してきます。事実がどうであれ、ここに田中さんがいないのは不自然です」
一ノ瀬「じゃあ私も同行するわ。彼は危険よ」
rア「一ノ瀬に同行してもらう」
「一人で行く」
このゲーム初めての選択肢が出た。ここで黙ってプレイしていた虚空さんが答える。
「この状況だと・・・一人で行ったら殺られるかもしれません・・・」
平「虚空さんは田中を疑ってたしな」
だいだい「殺られるwww」
たっちゃんパパ「さて、どうなるかな」
ステルス忍者「あまり深く考えなくても大丈夫だぞ」
「それじゃあ・・・」
虚空さんは「一ノ瀬に同行してもらう」を選択した。
智「じゃあ一ノ瀬さん、お願いできますか?」
一ノ瀬「わかったわ。一人よりはマシでしょう」
他のメンバーは各部屋で待機することになった。きちんと施錠して、何かあったら内線電話機で智が連絡をするという形を取った。外線とは別に各部屋と連絡ができるように備え付けてあるものだ。内線電話の機能は使えるのを確認してある。
一ノ瀬と共に歩く。OL3人組はかなり怯えていた様子だったが、一ノ瀬はあまり恐怖を感じていないようだった。今の智にはそれが心強かった。
一ノ瀬「ねぇ智くん、あなたは田中さんを疑ってる?」
智「・・・正直言って田中さんが犯人だとは思えません。ロビーで話しかけましたが、何の目的もなく人を殺すようには思えなくて」
一ノ瀬「2人の間に何かあったのかもしれないわよ?人間なんて心の底で何を考えてるかなんてわからないんだから」
そうして1階の倉庫になっている部屋に入った。そこには備蓄された食料やキャンプや登山で使うような物が置いてあった。智はランタンとその脇にあるパラフィンオイルとマッチの箱に目が行った。何気なくパラフィンオイルを手に取ってみる。オイルは半分くらいまで容器に入っていた。
一ノ瀬はその様子をじっと見つめていた。
虚空さんは不思議そうな表情をしている。そしてフォロワーに向かって質問してみる。
「パラフィンオイルってなんですか?何か特殊なものなのかな」
突剣階級「パラフィンが入ったオイルだろ」
並盛「パラフィン とは」
クソ汁「聖騎士のことだよ!わかんねーの?」
†ガイア†「それはパラディン」
マジレスくん「パラフィンオイルはランタンに入れる燃料の一種で、灯油と違って臭いやススが出たりしない。粘着性があって長時間燃えるのが特徴だよ」
二階堂紅しょうが「虚空さんの配信にはマジレスするやつがいて助かったな」
新帝国ニッポンポン「ほんとだよ!」
「つまりランタンに入れるための燃料ってことですね!ありがとうございます!」
虚空さんは手を合わせてお辞儀して対応した。疑問を解決し、ゲームに戻る。
2人は倉庫を後にし隣の部屋に入ろうとするその時だった。
一ノ瀬「そういえば智くん、里奈ちゃんとは上手くいってるの?」
一ノ瀬は声を張りつつ智に向かって話しかけた。その様子に少し驚きながら智は答えた。
智「え?・・・ええ。今日も里奈の誘いでここに来たんです。こんなことになってしまいましたが」
一ノ瀬「そっかぁ。話したいことがあるなら今日中にしといたほうがいいわよ?」
智「話したいこと・・・ですか?そうですね・・・」
智は一ノ瀬の言葉の意図がわからず、あいまいに返事をした。
結局、2人で探し回ってみたものの田中を見つけることはできなかった。
そのことをフロントで全員の部屋の内線電話に連絡し、そのまま就寝することになった。
部屋に戻った智は一ノ瀬の言葉を思い出し、里奈の部屋に内線電話で連絡を取ることにした。
10コールほど経ってつながった。
里奈「・・・もしもし?」
智「里奈、俺だけど」
里奈「なぁんだ智かぁ。こんな状況だから怖くって」
智「不安かなと思ってさ。大丈夫?ちゃんと鍵は掛けてる?」
里奈「大丈夫だよ。ごめんね、こんなことになっちゃって・・・」
智「里奈のせいじゃない。それに明日になれば戻れるだろ。だから気に病む必要はないよ」
里奈「ありがと。ねぇ、戸坂さんを殺したのは誰だと思う?私は雫ちゃんが何か知ってるんじゃないかって思ってるの」
智「誰が犯人かはわからない。でも俺も雫さんが何か隠しているように思える」
里奈「私、犯人なんかどうでもよくて、早く普通の生活に戻りたいな・・・」
智「いろいろあって疲れただろ?もう休んだほうがいい。それじゃあ・・・」
そうして通話は途切れた。
智は今の会話を反芻する。雫が何かを知っているのは間違いない。
でもこの事件の真相より、智も早く普通の日常に戻りたかった。
そしてそのままベッドに入り眠りについた。
ジリリリリリ!
智「なんだ?!」
突然の警報器の音に目が覚める。慌てて廊下に出てみると1階から悲鳴が聞こえてきた。急いで向かおうとするが、なんだか焦げ臭い。どこかで火が出ているようだった。
煙を吸わないようにしながら進むとキッチンのほうから火が出ていた。
それを確認して1階の廊下にある消火器を取りに戻る。消火器を手にしたのだが・・・
智「(消火器ってこんなに軽かったか?)」
火元へ行き消火器のノズルを向けてから安全ピンを抜き、レバーを握ったのだが・・・
智「え?どうして?!」
消火器から消火剤が出ることはなかった。そうしているうちにどんどん火が大きくなっていき、手を付けられないほどまで延焼してしまっていた。
智「みなさん!外に逃げてください!」
すでに室内には黒煙が立ち込めていた。全員が出入口のドアに向かう。
そうしてスライド式の木製のドアを開けようとするが、何かが引っかかって開くことはない。
「ゴホッゴホッ!」
煙が立ち込め、視界もほとんどなくなっていく。
そんな中、誰かがドアを叩きながら叫んだ。
「どうして?!」
やがて建物全体を火が包み込んだ。叫びと悲鳴が上がっていたが、それもやがて聞こえなくなった。
END01 業火に焼かれながら
虚空さんは呆然としていた。これはつまりバッドエンドである。
歴戦のエロゲーマーにとって、バッドエンドとはあるまじき行為だった。
「そ、そんな・・・この私が選択肢を間違うなんて・・・」
戦慄の旋律「まぁ、これが始まりみたいなもんだし」
クソ汁「ショック受けすぎわろた」
ステルス忍者「虚空さんはプロエロゲーマーだからな」
鯵さんま「なんのプロだよ?!」
鉄也「俺は戦闘のプロだぜ?外しはしない!」
ダイソン「グレートなやつは帰れ」
「私、エロゲーマーですけど、プロじゃないです!」
並盛「エロゲーマーのところは認めるんだな」
たっちゃんパパ「エロゲーマーの部分を否定してほしかった・・・」
☆おるてが☆「虚空さんって現役JKじゃ?」
MASSHU「消されるぞ」
合法ロリ「虚空さんは高校でも大学でもない「学園」に通ってるんだよ!」
だいだい「じゃあJKってなんの略だよ?」
鉄也「ジャイアントキラー<大物食い>のことさ」
マジレスくん「Giant KillerなのでGKです」
二階堂紅しょうが「戦闘はプロだけど英語力は3級以下だな」
病んでるとグレてる「この作品はフィクションであり人物、団体、およびこれらの事象に関わるものとは全く関係ありません。また登場人物は全員18歳以上です」
新帝国ニッポンポン「俺はいつの間にかエロゲーの世界のモブになっていたようだ・・・」
イッチ「世の中にはモブが主人公を駆逐するラノベもあるらしいから頑張れ」
虚空さんは勢いとは言えばらしてしまったため、あきらめることにした。
「うう・・・どうやって買っているかは想像にお任せします!」
†ガイア†「虚空さん、次から本格的に推理が始まるぞ?」
虚空さんはあらためてゲームをスタートすることにした。




