友情
翌日
学校に行けばいつも通りに知らない女子から挨拶され、教室へ向かう。
悟はすでにスマホの操作に追われていた。可憐さんだろう。
二人に声をかける。悟は生返事でそれに返答した。
浅村は彰人が来るのを待っていたようで、教室に来た彰人に声をかける。
「よう天河、今日はよろしく頼む」
「ああ、21時くらいには終わるからどこで待ち合わせする?」
「じゃあ、アーケードのダウンタウンはどうだ?着いたら連絡してくれ」
「わかった。じゃあバイトが終わったらダウンタウンに向かうよ」
ダウンタウンとは以前に彰人が立ち寄ったゲームセンターの名前だ。
あの謎のドスコイ使い・・・またいるだろうか。ぜひタカシでリベンジしたいところだ。
そうしているうちに空も教室にやってきて、それぞれ挨拶を交わす。そしてすぐ朱里のもとへ向かっていった。風花と柚も加わり、ウェイクミーランドの話で盛り上がっているようだった。
そうして滞りなく授業が終わる。浅村はお昼のときもずっとスマホを操作していた。悟はそれを見つめ「女か?」なんて彰人に聞いていた。おそらく相手は彩香だろう。浅村は本気のようだ。
そうして放課後。今日の一日も無事に終了した。悟、浅村にそれぞれ別れを告げ、ロッカーにしまっていたウェイクミーランドのお土産を持ってバイト先の本屋へ向かう。
事務所へ向かい、持ってきたお土産をみんなに見せる。
「みんなで食べてください。ウェイクミーランドへ行ったお土産です」
「おお、彰人くんデートかい?いや悪いね。みんなでいただくとしよう」
すでに事務所にいた凛が興味深そうに聞いてくる。
「彰人くん、誰と行ったの?ウェイクミーランドだし・・・女の子だよね?」
「えっと、女子5人と・・・」
「ブーーーッ!」
飲んでいたコーヒーを噴き出した。そして焦りながら言う。
「6P?!チーズかよ!」
「男子3人と・・・ってチーズ?」
「私は彰人くんをそんな男に育てた覚えはないよ!」
「いや・・・育てられた覚えもないんですけど・・・」
そんなやりとりをしながら凛にキーホルダーを渡した。
「これは?」
「ウェイクミーランドで売ってたやつで、願いが叶うように込められたキーホルダーって聞いてお土産に」
「・・・ねぇ、一体何人の女の子を誘惑すれば気が済むの?」
「え、誘惑ですか?」
「はぁぁぁぁ自覚なしかよー。まぁそこがいいのかもしれないけど」
「?」
「でもまぁ、ありがと。頑張るね」
凛は嬉しそうにキーホルダーをロッカーにしまった。
「そんじゃあ、今日も一日頑張るぞい☆」
上機嫌で売り場へ向かっていった。
お土産を無事配り終え、自分も支度をして売り場へと向かっていった。
21時。彰人のシフトが終わる。事務所にいる人たちに挨拶を済ませ、浅村が待つダウンタウンへと向かっていた。
店内にはちらほらとお客さんがいた。賑わっていたのはサラリーマンファイターⅡXの対戦台。ギャラリーもそれなりにいた。彰人もそれを見やる。
「(Gタカシとタケシが対戦しているな・・・)」
Gタカシとは”辞意の思惑に目覚めたタカシ”というタカシの派生キャラだ。
狂鬼というサラリーマンがいるのだが給料歩合制の会社の営業マンで、数億円規模の不動産売買に成功し、莫大な金額を得ることに成功。
その後会社を辞め、得たお金で山奥に家を買い悠々自適に暮らしている。
タカシには「さっさと会社を辞めろ。そうすれば自由が待っている」などと誘惑してくる。
タカシは会社を辞めて自由になりたいけど会社を辞めたら生きていけないので、その狭間で揺れ動き、やがてストレスで暴走してしまったのがGタカシなのだ。
Gタカシは通常のタカシに比べ動きが早く、普段つながらないコンボもつなぐことができる。攻撃力が高い反面、防御力がすこぶる低い。一撃が致命傷になりかねない超上級者向けのキャラだ。
二人は接戦を繰り広げていた。タケシの草薙波に反応して、Gタカシの真空草薙波を放つ。タケシの草薙波をかき消し、全弾タケシにクリーンヒットした。
タケシの体力を根こそぎ奪い、第2ラウンドはGタカシが勝利した。
「(やはりGタカシは強いな。うかつに草薙波を放つのは危険だ)」
ファイナルラウンドが始まり、お互いが探りあう。ずっと対戦を見ているわけにもいかない。
着いたことを知らせるメッセージを送った。すると対戦していたタケシが動きを止める。
浅村「入口付近で待っててくれ」
彰人はそれに「わかった」と返信し、店の外に出て待っていた。
するとすぐに浅村が出てきた。
「悪いな。疲れてるだろう」
「それは全然大丈夫。じゃあヨドダシ行こうか」
二人で駅前のヨドダシへ向った。数分歩き到着してパソコンなどが置いてあるフロアへ向かう。
そこで価格と性能のバランスが取れたものを吟味する。8インチタブレットで値段は9800円ほど。あとはmicroSDカードもつけたほうがいいだろう。
浅村はよくわからないので彰人に任せることにした。
ヨドダシで買い物を済ませた二人は浅村の部屋へ行くことにした。
タブレットの初期設定や電子書籍の購入など、彰人はできることをやってから帰ろうと思ったのだ。
そうしているうちに浅村の部屋に着く。浅村も一人暮らしをしている。
浅村の部屋にはあまり物がなく、最低限の家具などが置いてあるシンプルな部屋だ。
「天河、腹減っただろ?今から作るから自由にしててくれ」
「いいのか?じゃあその間に設定とかしとくよ」
浅村はキッチンに立ち、パスタをゆで始めた。
彰人はタブレット端末を開封し、スマホでテザリングをしてネットにつないで電子書籍サイトへと接続する。
浅村からは「とりあえずドラゴンズボールは絶対で。あとは彰人のおすすめで」と話がしてあった。コンビニで買った電子マネーカードも受け取ってある。
彩香と話したいんだろうし、ドラゴンズボールが好きなら秀英社のマンガを読んでいるのではないかと推測し、おすすめのマンガを購入していく。
・ドラゴンズボール
・ゴールデンダンク
・シヌノート
・孤独の刃
・お月様は告らせたい
基準としてはすでに完結している作品をメインにした。他の作品については二人で話し合って決めたほうがいいだろう。
ダウンロードををしていると浅村がパスタを運んでくる。
浅村特製のボロネーゼだった。
二人で席に着き、早速いただく。
「うまいなこれ、市販のソースじゃないだろ?」
「まぁ、レシピ通りに作っただけだ。天河でも作れるぞ」
そんな会話をしつつ、浅村が真剣な面持ちで言う。
「天河、俺は彩香さんが好きだ」
「・・・ああ、そう、みたいだな」
「でも彩香さんは天河のことが好きなんだろ?」
そう言われて返答に迷う。確かに好意はあるようだがきっかけがいまいちわからない。マグダナルダでいきなり声をかけられて今のような仲になっただけなのだ。
「好き・・・なんだと思う。でも俺もどうして好かれているのかわからないんだ」
「彩香さんとの出会いはどんな感じだったんだ?」
「空と初めてマグダナルダで会ったときに偶然店内にいて・・・それで話すようになったんだ。他のグループの人と一緒に来てたみたいだけど」
「その日のことはステルスで見ていた奴がいて、天河たちに目をつけていた」
「そうなるな。そこでステルスのことを教えてくれた人にも出会ったんだ。俺たちに”警告”をしに来てくれてさ。その人はいい人だったんだけど」
浅村は考える。本当に偶然だったのだろうか。彰人が”どうして好かれているかわからない”というのは本心だろう。であれば、何らかの方法で彰人たちのことを事前に知っていた可能性が十分ある。
「浅村?どうしたんだ?」
「え、ああ・・・ちょっと考え事してた」
「彩香は空に学校に行くようにアドバイスをしてくれたみたいなんだ。空が今充実しているのは彩香のおかげなんだよ」
「橘さんが・・・そうか」
「だから俺は彩香に感謝してるんだ。その恩返しをいつかしないとなって思ってる」
浅村の中に”ある仮定”が生まれたが、確証があるわけではない。彰人にはもう少し時間が経ったら相談しようと思った。
「天河、もし彩香さんをめぐって俺と戦うことになったとき・・・その時は絶対に手を抜いたりするなよ?そんなことをしたら・・・」
「わかった。俺は浅村に嫌われたくないんだ。戦うっていうことがどういうことかは知らないけど、ちゃんと正々堂々と戦うよ。でも殴りあったりするのはごめんだからね」
そう言って二人はお互いに約束を交わしたのだった。




