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報奨金

次の日


普段通り学校で過ごす。相変わらず知らない女子から声をかけられたりするようになっていた。隣のクラスの女子のようだが、彰人には詳しいことはわからない。


特に気にもせず過ごしていた。


そのまま自分の教室へと入っていく。そして悟に声をかけた。


「おはよう」


「よ、彰人。聞きたいことがあるんだが、この前本屋で何かあったか?」


悟と浅村には駅前の本屋でバイトしていることは伝えてある。たまに本を頼まれることもある。


「何かってなんだ?」


悟が言いよどむ。


「あー・・・なんつーか”変わった客”が来なかったか?女で百合漫画買うみたいな・・・」


それだったら心当たりがある。自分と同じくらいの身長のあの女性だ。


「”やがて私になる”を全巻買っていった女性の方ならいたけど・・・」


悟が「やっぱりな」という声を漏らす。あの女性のことを何か知っているのだろうか?


「いや、彰人が接客したんだろ?めちゃくちゃ喜んでてな・・・本屋の会社にも電話したらしいんだわ」


「そうなのか?確かに嬉しそうはしてたけど・・・」


この前言っていた”知り合いのVTuber”だろうか。あの人がVTuberの配信者ならぜひ見てみたいと思った。


「あの人と知り合いなのか?」


「えっ、ああ・・・まぁ・・・そんな感じだ」


なんだか悟がはっきりしない。他人の人間関係を詮索するのも良くないだろうと思い、そこからは何も言わなかった。


「とにかく彰人、バイトの給料日にいいことがあるかもしれないぜ」


「そういえば今日、給料日だ。楽しみにしとくよ」


そういって授業の準備をした。




放課後


今日はバイトがある日だ。制服のまま駅前の本屋へ向かう。


そして本屋に到着し、そのままバックヤードへ入っていく。


「お疲れ様です」


「おっ?彰人く~ん久しぶり~!この前はありがとね!」


そう声をかけてきたのは北条ほうじょう りんという彰人と同じくらいにアルバイトを始めた同期の女性だ。


「こんにちは凛さん。大丈夫ですよ。困った時はお互い様ですから」


「うんうん。いい言葉だねぇ。実はこの前、オーディションの2次試験受けてきてね、それで代わってもらったんだよ」


凛は声優になるために養成所に通っている。ここの本屋で働くのもある程度融通が利くからで、店長もわかってくれている。みんなが凛を応援しているのだ。


「おっ、じゃあ1次は通ったんですね。手ごたえはどうでしたか?」


「うーん、毎回全力でやってるつもりだけどねー。ライバルが強力すぎてなんとも・・・」


声優という職業は思っている以上に厳しい世界だ。一つの役に何人もの応募がある。その中から役を勝ち取るというのは本当に大変なことなのだ。


「凛さんなら大丈夫ですよ。俺が保証します」


凛は本当に働き者で、客からの評判もいい。そのことは働いているみんながわかっていた。


「ありがとー。でも”俺が保証する”って恋人みたいじゃない?」


からかうように言ってくる。凛は彰人よりも年上でちょくちょく彰人をいじってくる。彰人はいつものやり取りに安心していた。


「からかわないでください。それくらい信頼してるってことですから」


「ふふふ、じゃあそんなに想ってくれてる彰人くんのためにも頑張らなくちゃね!」


そうして凛は店内へと向かっていった。


「彰人くん、今日はお給料の日だよ。いい知らせもある」


そういって店長は給料の入った封筒とは別に”報奨金”と書かれた封筒を渡した。


「店長、これは?」


「ああ、うちの本社のほうにね女性の方から電話があったそうなんだ」


悟の言ってたのってこれかと思いつつ店長の話を聞く。


「なんでもうちの天河という男性店員の接客がとても優秀だったと。とても感謝していたそうだよ。だからこれは本社からの指示だ。好きに使ってね」


中を確認してみると5000円札が入っていた。


「ありがとうございます」


自分の接客で誰かを喜ばせることができたのなら良かった。そう思いながら仕事へ向かった。




今日も店内の見回りと書籍の整理、売れた本のチェックなどを行っていく。


そういえば最近になって「VTuberを始める本」なんていうVTuber専門誌などもよく見かけるようになった。最新のVTuberの人たちを紹介したり、自分がVTuberになるにはどうすればいいかなど、様々な角度からVTuberのことを知れる雑誌が増えている。またVTuberを題材にしたマンガやライトノベルなども見るようになったし、レジをしている時も結構売れているなと感じていた。




「(虚空さんの次の配信はどうしようかな・・・)」


ゲーム配信ではnyちゃんねらーがメインではあったものの、見てくれる人は劇的に増えた。あの配信は結構良かったんじゃないかと感じている。虚空さんは見事に”超初見プレイ”をやってのけた。視聴者と一緒にゲームをクリアする様はなかなか響くものがあったと思うのだ。


そういえば空は煽りなどにも動じなかった。空に煽り耐性があるとは思えないが、3カ月間でどういった感じだったのか気になった。今度聞いてみよう。




そんなことを思いながら仕事をしていると、彰人に声がかけられる。


女性の方が本を探しているようだ。本の名前と出版元を確認し売り場を案内する。「ありがとう天河くん」と言ってレジのほうへ向かっていった。


なんだか最近、学校でもバイト先でも女性から声をかけられることが多くなったなと感じる。バイト先では”天河”というネームプレートをつけているし、それを見てお礼を言ってくれるんだろうと思った。




仕事を終え、部屋に帰ってきた。夕飯を済ませスマホでモウカリを見てみる。


虚空さんに何のノベルゲームをプレイしてもらうか考えていた。


そこで思いついたのが「おまえたちの夜」という有名なノベルゲームだ。


おまえたちの夜とは冬のスキー山荘が事件の舞台で、そこに一泊したときに猛吹雪に遭い閉じ込められてしまう。そこで様々な事件が起こるというサスペンスホラーだ。


これもレトロゲームであり、空はもちろん未経験だろう。


内容を知らない人たちでコメントしながら楽しめればいいなと思った。




モウカリでおまえたちの夜を探してみる。何点か見てみるとスーパー家庭的機械本体と一緒にソフトをたくさん売っている出品者を見つけた。その中にはサラリーマンファイターⅡXとおまえたちの夜も含まれている。


まとめ買いで値下げしてくれないかな、なんて思いつつ出品者にメッセージを送ってみた。こういのはダメで元々だ。割引がなければそのまま購入すればいい。


そうして10分くらい経った頃に返信が来た。


「それでは本体とソフト2本をセットで5000円でどうでしょうか?」


今日ちょうど報奨金の5000円が入ったばかりだ。何か運命的なものを感じる。


彰人はこれを購入することにした。お金はコンビニで支払えばいいだろう。


出品者に挨拶をし「翌日の午後にお支払いします」と伝えた。学校の帰りにでも支払ってこよう。


ふと、LINEを見て渡來さんに朧月のことを報告しておこうと思った。


渡來さんが言っていた「私以外にもステルスで閲覧していた輩がいるかもしれない」が当たってしまったのだ。


「渡來さんこんばんは。実は相談があって・・・」


朧月のこと、マグダナルダと駅前の写真のこと、脅しのようなLINEが来たことを渡來さんに報告した。渡來さんは社会人だし忙しい。返信はいつでも大丈夫です、と添えてメッセージを送信した。


浅村に言われた通り、朧月のことを深く考えてもどうにもならない。そう思い頭の隅のほうへ追いやった。

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