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恋人のように

翌朝


彰人はお腹のあたりに温かさを感じ目が覚める。見慣れない天井だ。しかもベッドの感触も違う。辺りを見回して自分の部屋ではないことに気が付いた。


そして自分のお腹のあたりには空が覆いかぶさるようになって寝ていた。なぜか左手には彰人のスマホを握りしめていた。


「(深夜に着信でもあったのかな?)」


もしそうなら電源を切っておくかサイレントモードにするべきだったと反省する。


時刻は朝の5時半。今日は月曜日で学校がある。早めに空の家を出て自宅へ帰り、制服に着替えるつもりでいた。みなもさんにもそのことは伝えてある。


「空、起きて」


空の肩をやさしく揺すり起こそうとする。


「んん?ううん・・・」


唸り声はするが起きる気配はない。このままでは動けないし、女の子に抱き着かれたままというのも精神衛生上よろしくない。強めに揺すって起こそうとする。


「空、俺もう行かないといけないから」


「ううん・・・あれ彰人・・・?もう朝なの?」


昨晩何かあったのだろうか。空は随分と眠そうだった。


「大丈夫?もう少し寝ててもいいんだよ?」


「・・・私も一緒に学校に行きます・・・でも眠い・・・」


二人でベッドから起きて1階に降りていく。まずは洗顔をして歯を磨いてからだ。


歯ブラシは新品のものをみなもが出してくれていた。色はピンクだけど、と言っていたが磨ければいい。


一緒に洗面台で歯を磨く。なんだか新婚夫婦みたいだった。


「・・・」


彰人は空だったらそんなことを言うかなと思っていたが、彼女は眠すぎてそれどころではなさそうだった。


そして二人でリビングへ向かった。そこには朝食のいい匂いが漂っていた。


「おはようございます。みなもさん」


「おはよう彰人くん、それに空も。昨日はよく眠れた?」


朝食はトーストとベーコンエッグだった。サラダもあり、一人暮らしの彰人にとっては豪勢な朝食だった。


「はい。おかげさまでゆっくり眠れました。ただ、空は眠そうなんですけど・・・」


「・・・」


みなもは眠そうな空を見て何かに気づいたように微笑んだ。


「緊張したんじゃないかしら。好きな人と一緒に寝るなんて初めてのことだもの」


”好きな人と一緒に寝た”と聞いて彰人は焦る。同じベッドで寝たことがバレているのか・・・。


「空ちゃん、ちゃんと起きないとダメよ。朝ごはんもしっかり食べること、いいわね」


「はぁーい・・・」


みなもに言われ返事をする空。そして3人で朝食を食べ始めた。




食事を終え、先に彰人は玄関を出る。眠そうな空の着替えをみなもが手伝っていた。


「それじゃあ、みなもさんお世話になりました。行ってきますね」


「・・・行ってきます」


「気を付けていってらっしゃい。またいつでも来ていいからね」


そうして二人で駅に向かって歩く。空は彰人の腕をつかんだまま頭を揺らしていた。


早朝の電車というのは人が少ない。スーツを着たサラリーマンや、何かのイベントに向かう人だろうか。荷物を抱えた人たちがちらほらと座席に座っていた。


空のことを気にしつつドア付近に立つ。ここから3駅の距離なのですぐ着く。


そういえば昨日はなぜ電車が動かなくなったのだろうか?気になって昨日のニュースをスマホで検索してみる。すると自分の利用している路線で”人身事故か?”という記事を見つけた。日付も昨日だ。気にはなったが電車はすぐに自分の降りる駅に着いた。


そのまま自宅へと向かう。その間ずっと二人は無言だった。




空も徐々にだが目が覚めてきたようだ。彰人の家の周りを確認している。


「ここが彰人の部屋?」


「ああ、ソファーに座って待ってて」


鍵を開け一緒に入る。空は男の子の部屋に入るのは初めてのことだったが、部屋は綺麗に整頓されていた。彰人の性格が出ているようだ。そこには彰人のパソコンもあった。


「これが彰人のパソコン?私とおんなじかな?」


「大きさは同じくらいだけど、性能は全然違うよ。空のほうが圧倒的に高性能だから」


空はパソコンのことを”大きければ強い”と思っていた。30万円したからあの大きさなのだと。だが、彰人のパソコンも自分のと同じくらいの大きさだ。空にはパソコンのことはさっぱりわからなかった。


ソファーに座り、彰人の部屋を見回してみる。彰人は制服を持ち脱衣所に消えていった。


「(なんか本当の恋人みたい・・・)」


そう思うと急に緊張してくる。そういえばスマホを見るためとはいえ一緒に寝たし・・・。彰人はどう思っているんだろう?少しは意識してくれてたかなと考える。


「お待たせ・・・ってどうしたの?」


空が顔を赤くしてうつむいている。彰人の言葉に焦った様子で答える。


「なっ、なんでもないよ!学校行こう!」


「?・・・そう?ならいいけど」


そう言って二人一緒に部屋を出る。こんなにドキドキしながら学校に行くのは初めての経験だった。





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