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朧月

「お風呂いただきました~」


風呂から上がり、リビングにいるみなもに声をかける。着替えを渡されたときから気になっていたのだが・・・


「お湯加減ちょうどよかった?そのお洋服もぴったりね」


「あのこの服って・・・?」


男性もののスウェット上下で、まだ封がされたままだった。このために買っておいたのだろうか?


「・・・これね、私の旦那のために買っておいた服なの。もう必要ないんだけど、どうしても捨てられなくて」


みなもさんは寂しそうに言う。それを見た彰人が申し訳なさそうにつぶやく。


「すみません。旦那さんの服なのに俺が着てしまって・・・」


みなもは”そんなことないのよ”と言って明るく振る舞う。


「このままにしててももったいないし、誰かに着てほしかったの。それが彰人くんで本当によかったわ」


「ありがとうございます」


彰人はここでずっと気になっていたことを聞いてみることにした。


「ところでみなもさんのその服って・・・?」


”童貞を殺すセーター”なぜこれを着ているのか知らないままでは眠れないと思ったのだ。みなもはさも当然のように言う。


「かわいかったから。それに普通のお洋服って胸元がきついからこういう服はなかなかなくて」


彰人はまたしてもみなもの胸元に視線が行ってしまう。


「もしかして・・・似合ってなかったかしら?」


みなもはしょんぼりしながら言った。その様子を見て彰人焦る。


「いえっ、その!めちゃくちゃ似合ってます・・・はい・・・」


正直似合いすぎて怖いくらいなのだが、これ以上どう褒めたらいいかわからなかった。


「よかった!あのね彰人くん、今度時間があったらスマホの使い方教えてほしいな。ネットにはもっとたくさんのお洋服があると思うの!これより素敵なお洋服があるかも!」


彰人は理解した。スマホに変えたばかりだとネットショッピングが楽しい。様々な物がネット上にはあふれている。みなもさんもそうやって検索していった結果、このセーターにたどり着いたんだろうなと思った。


「わかりました。じゃあ今度使い方教えますね」


そう言っておやすみの挨拶をして2階へ上がっていった。




そうして空の部屋戻る。彰人のスマホはベッド脇にあるサイドチェストの上に空のスマホと並んで置いてあった。


「あ、彰人!おかえりー」


空は本を読んでいるようだった。何の本を読んでいるのか気になってみてみると


”人生で一番役に立つ言い方大全”という本を読んでいた。


それを見た彰人は、空も自分のトーク力をなんとかしたいと思っていたんだな、と努力している彼女を見て心が温かくなる。


「じゃあ私、お風呂行ってきますね」


そういって空は1階に駆けていった。




やがて空がお風呂から上がり、時間もいい頃合いなので眠ることになったのだが・・・


「俺は床で寝るよ」


「ダメ!一緒に寝る!」


空のベッドはダブルベッドで2人で寝ても広さ的に問題はない。だが、だからと言って男女一緒に寝ていいことにはならないのだ。


「流石にまずいって!わかってくれ」


「何もしませんから!隣にいてくれるだけでいいんです!お願いします!」


空から並々ならぬ圧を感じる。床で寝るよりベッドで寝たほうが熟睡できるだろう。このままでは埒が明かない。彰人は折れることにした。


「はぁ・・・わかったよ。でも、もし寝相悪かったりしたらごめん」


「大丈夫です!そんなの全然気にしませんから!」


空はホッと安堵した。あとは彰人が眠るのを待つのみ・・・。


「おやすみなさい彰人」


「ああ、おやすみ」


そう言って部屋の電気を消す。真っ暗ではなく常夜灯をつけた状態だ。


彰人が部屋の壁側に寝て、空が入口のドア側に寝た。空のそばにはサイドチェストがある。


お互いに緊張していた。特に彰人は空からお風呂上りのいい匂いが漂ってきていて気が気じゃなかった。目を閉じて無心になるよう務める。


「ねぇ、彰人」


「・・・ん?」


「無理・・・しないでね」


それは自分が今ちょっと興奮していることを見抜かれたのかと思い、内心焦る。


やがて空は彰人の服の裾をつかんだまま眠りに落ちていった。


彰人もそれを確認してからゆっくりと眠りについた。




深夜3時。空は一人、体を起こす。そしてサイドチェストに置いてあった”彰人のスマホ”を手に取った。彰人はぐっすり寝ているようだ。ずっと寝顔を見ていたいなと思ったが、今はそれどころではない。ゆっくりと慎重に動く。


そして彰人の右手の親指に彰人のスマホの下部を当てた。


「(お願い!うまくいって!)」


ロック解除するにはもうこの方法しかなかった。浮気を疑う奥さんがやるような手だなとは思ったが、どうしても彰人に送られたLINEの詳細が知りたかった。


やがて何度か試してロックが解除される。


「(やった!)」


早速LINEのトーク画面を確認していく。その中に”彩香”があった。


メッセージは”そっか。把握”となっている。もちろん彩香とも友達だし、LINEのやりとりも当然あるだろう。それでも自分の知らないところで二人が連絡を取り合っているというところに嫉妬してしまった。


悪いとは思いつつ、彩香の名前をタップする。


”彰人、今もしかして空と一緒?”


どうしてわかったんだろう?と疑問に思う。彰人はこのメッセージになんて返信したんだろう、と不安がよぎる。そこには・・・


”ああ、今一緒にいるよ”


空は泣きそうになってしまった。噓偽りなく言ってくれたことがすごく嬉しかったのだ。


そして一度トーク画面に戻り確認する。そこには”朧月”とあり、メッセージ欄に”お前は誰だ?”と表示されていた。


”お前は誰だ?”なんて友達に向かって言うはずがない。こいつが犯人だと確信した。彰人はおびえていた。空は恐る恐るメッセージをタップする。


{!!!」


朧月「おまえをみているぞ」


その下には空がマグダナルダで壁ドンされている画像と駅に向かう途中の道で彰人と彩香が抱き合っている画像の2枚が添付されていた。


「どうして・・・?!」


思わず声が出てしまう。そこでハッとなり口をふさぐ。


彰人は空と彩香を守るために言わなかったのだ。もし空に危害を加えようと考えているのなら、直接空にメッセージを送ることもできただろう。


彰人にだけメッセージを送ってきたのであれば、誰でもない彰人自身が標的にされているのは明らかだった。


空はそのまま彰人の体に抱き着く。不安でどうにかなってしまいそうだった。一人で抱え込まないでほしい。一緒になってこの状況を打開したい。


そうして抱き着いているうちに空は眠りに落ちていった。

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