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お宅訪問

そうして待ち合わせ場所の駅に到着する。駅の出口に向かっていくと一人の女の子が彰人に向かって駆け寄ってきた。空なのだが・・・


「(なんかすごい気合が入ってるな・・・)」


前会ったときよりもさらに”女の子”っていう感じになっていたのだ。かわいらしいキャミソールワンピを着ている。顔を見るとうっすらと化粧もしているようだ。


「彰人!会いたかった!」


そのかわいらしさに思わずドキッとしてしまう。動揺を隠しながら答える。


「今日は遂にゲーム配信の日だな」


「はい!でも彰人が一緒だから大丈夫です!」


そう言いながら隣を歩く。そこで気づく。


「(めちゃくちゃいい匂いがするんだけど・・・)」


香水でもつけているのだろうか。彩香とはまた違った匂いがした。


しかし「いい匂いがするね」なんて言ったら完全に変態だ。口にはしないことにした。




10分くらい他愛の話をしながら歩き、空の家に到着する。彰人は次第に緊張していった。


「彰人、さあどうぞ!」


「ああ・・・」


そう言って空が玄関ドアを開けて入っていく。彰人もそれに続いた。


そうして玄関で靴を脱いで向きを揃えていた時だった。後ろから声がかけられる。


「あなたが彰人くん?」


「あっ、お母さん!そうだよ、この人が天河彰人くんだよ」


空はなんだか自慢げだった。その様子に彰人は大いに照れた。


「はじめまして。天河彰人と申します。空さんとはネットで知り合いました。様々なご心配をおかけしたかもしれませんが・・・」


そこまで聞いていた空のお母さんは微笑みながら言葉を遮る。


「会いたかったわ。この度は本当にお世話になりました。なんてお礼言っていいか・・・」


そう言って空のお母さんは涙目になる。学校に電話した時も泣いてたと言っていたし、やはり嬉しかったのだろう。


「いえ、空さんの友達のおかげです」


「・・・そうね。立ち話もなんだから入って」


そう言われてリビングルームに通される。空とお母さん、その対面に彰人が座る。




するとお母さんは「お洗濯してきて空ちゃん」と言った。


空は意外だったらしく「どうして?」と駄々をこねる。


お母さんは両手をお合わせお願いしていた。すると仕方なさそうに洗面所のほうへかけていった。


「・・・さて、私の名前は橘 みなもと言います。この度は本当に娘がお世話になりました」


そう言ってみなもは深々と頭を下げる。だが彰人は会った瞬間から疑問に思っていることがあった。それは・・・


「(どうして童貞を殺すセーターを着ているんだ?!)」


そう、みなもは胸元が大きく開いたグレーのセーターを身に着けていた。


みなもの胸は非常に大きい。嫌でもその肌色の部分が見えてしまう。


彰人はネット上で童貞を殺すセーターが話題になったときに「これは果たしてファッションなんだろうか?そういうサービスのお店ではないか」と疑問に思ったほどである。何かこの服装に意味があるのか。知り合いの母に食われるとかどんなエロゲだよ、と思った。


「?どうしたの?」


みなもは視線を感じ、首をかしげながら言う。そこに返答に困っていると空がやってくる。


「お母さん!もうこの洗剤ないよ!」


それはありえない洗浄力のジェルボール洗剤の箱だったのだが、みなもはおかしいわねと呟き、


「いつもの場所にまだあるでしょ?」


「・・・」


そう言うと空は黙ってしまった。どうやら二人が気になって覗きにきたらしかった。そして顔を赤らめている彰人に気づく。


「その服、とっても下品だよね!」


みなもを指さして言う。みなもは「そんなことないじゃない」と微笑みながら言った。




実はこの童貞を殺すセーターを空がこっそり着てみたのだが、胸が小さいために胸元がしぼんでしまい、セーターの上のほうがナイフかなんかで裂かれたような非常に残念な結果になってしまったのだ。それ以来、空はそのセーターを忌々しく思っている。




「・・・空ちゃん、お母さんはちゃんとお洗濯してほしいな。別に彰人くんを取ったりしないから、ね?」


「ううう・・・」


おそらく学校に行かなかった期間もあり、母親には逆らえないのだろう。肩を落としながら戻っていき、やがて2階にあるベランダへと上がっていった。


それを確認し、みなもが口を開く。


「ごめんなさいね。あの子、彰人くんのことが好きみたいで」


「あ、いや・・・それは・・・」


”好き”と言われて返答に迷う。たしかに空からはLINEで好きだと言われていたが、彰人は自分の気持ちを伝えていない。友達以上の感情だとは思うが、まだ自分の中ではっきりとはしていなかった。




「あの子が自分から学校に行くって言ってくれた時は本当にうれしかった」


そのままみなもが続ける。日に日に学校に行きたがらなくなっていき、やがて完全に行くことをやめたと。理由を聞いても教えてくれず困っていた。そんな時に教頭先生から電話があった。


「今彼女は人間関係で悩んでいる。だから無理はさせないでほしい。そして彼女の言うことを聞いてあげてほしい」


教頭先生はそう言ったそうだ。だからみなもは空に「何が欲しいの?」と尋ねた。すると


「あの子ね、パソコンが欲しいって言い出したの。しかも30万円くらいする高いやつって」




彰人はそれを聞いて納得する。VTuberとして活動するならある程度のパソコンのスペックは必要になってくる。マシンスペックが上がっているのもあるが、スマホやタブレットの普及によりパソコンの値段が上がっている昨今、どうしてもそれぐらいの額が必要になる。




「だからね、将来のための貯金を崩して買ってあげた。空ちゃんが必要としてるのなら金額なんて関係なかった。その時にあの子は”ありがとう”って言ってくれたのよ」




彰人はいいお母さんだな、と思った。娘のためにそこまでしてくれる親も最近では少ない。しかも金額が金額だ。よほど空を大切に思っているんだなと感じた。


「みなもさんはそのパソコンで空が何をやっているか知ってるんですか?」




これはVTuberをやっているのかどうかの確認でもある。親に内緒で配信しているVTuberも多い。勝手に事情を話すわけにもいかないと思った。


「ええっと、女の子がしゃべるゲームでしょ?それから・・・」


”女の子がしゃべるゲーム”の部分でエロゲがバレてないよな、と他人事ではないとひやひやした。そしてみなもは続ける。




「ブイトゥビアー?とかいうやつをやってるんじゃないかしら」


「(V(Victory) to beer(ビールに勝利・・・?)」


聞きなれない単語を思わずエキサイト翻訳していた。




「えっとそれ、VTuberって言います。ブイチューバーです」


あらそうなの?と照れるような顔を見せた。でもこれでみなもさんは空がVTuberをやっていることについて知っているんだなと判断した。


「知ってるんですか?VTuberを」


「よくは知らないのだけど・・・空ちゃんが部屋で一人、誰かに向かって話していたから・・・」


これは実家住みのVTuberあるあるだ。部屋で配信していると親が聞き耳を立てていることがある。最悪の場合はその場に乱入してきたりする。なかなか環境を変えることは難しいし、お互いの理解が必要になってくる。




「・・・彰人くん、それってどう書くのか教えてくれるかしら」


彰人はカバンに入れていた生徒手帳とボールペンを取り出す。そして生徒手帳の後ろのほうにある空白のページを破り”VTuber”とペンで書いて渡す。


それを見てみなもが申し訳なさそうに言う。




「生徒手帳のページを破いちゃうなんて、ごめんなさい」


彰人はなぜ謝られたのかわからず答える。


「?こういう時に使うものじゃないですか?」


それを聞いたみなもは大事そうに紙を受け取り、そのまま自分の胸元へと持っていき微笑んだ。


その様子を彰人は食い入るように見てしまった。その動作がやけに色っぽく見えたのだ。そうしているうちに空が戻ってくる。


「お母さんっ、全部干してきたよ!もういい?彰人・・・」


そのみなもの胸元(正確にはその前にある紙)見ている彰人に気づき・・・


「おっぱっ・・・おっぱっ・・・」


と言いながら彰人のほうへダッシュしてくる。そして彰人の腕を取り、


「私だって!お母さんみたいなおっぱいになるもん!」


そう言って彰人の手をしっかり握りしめたまま2階へ上がっていくのだった。

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