9.駅前に集合!!
その後、グループチャットにて駅前の映画館とその前に買い物をすることに決まった。みんなで見る映画を決めようとしたが結局高橋さんの希望で恋愛映画を見ることになってしまった。
正直、俺としてはアクション映画などが良かったがこのグループの中心人物は間違いなく高橋さんだ。最後には高橋さんが強く推した恋愛映画になった。
ということで何時もなら家でのんびり家で過ごしている土曜日なのに外に駆り出されている。
「はあ~」
九月十二日、現在約束の10時15分前緊張からかため息をついてしまう。正直、女子と出かけるなど朱里が生きていた時に度々連れまわされたのを除けば初めての事である。
「お~い、杉下く~ん」
遠くから三波さんと吹本さんが手を振ってこちらに駆け寄ってくる。三波さんは白いシャツに黒いオーバーオールのドレスという可愛らしい服装で、吹本さんはデニムジャケットを着ている。
「お、おはよう」
「おはよ~、杉下君、早いね~、何時から待ってたの?」
「え、丁度今来たところだよ」
以前、アニメか映画かで女性には待ってないとアピールしたほうが良いと聞いたことがあるのでそれを実践した。これで合っているかは正直分からない。
「あはは、あれ?高橋さんはまだ?」
「う、うん、俺しかいなかったよ」
それからしばらく待って、時計台を見てみると10時を回っているが高橋さんは来ていない。結局それから5分くらい待った後、遠くから高橋さんが走ってくるのが見えた。
「ごめ~ん!!みんな待たせちゃったよね」
三人共、全然気にしてないよと高橋さんに声をかける。正直遅刻するなら連絡くらいしてほしいと感じていただろうが高橋さんに下手に機嫌を損ねても仕方ないので気を使ったのだろう。
「映画って昼からなんだよね?先にゲーセンでも行く?」
高橋さんの鶴の一声で駅前のゲーセンで時間をつぶすことになった。ゲーセンまでは徒歩で三分ほどなのでぞろぞろと歩き始めた。
「ねえ、遥斗ってゲーセンとかよく行くの?」
歩きながら高橋さんは俺に話しかけてきた。
「い、いや~、そんなにかな。前に朱里と来た時以来」
「朱里って、あ……、佐藤さんね」
しまった。みんなで遊びに行くというのに、朱里の話題を出してしまった。三人共、少し気まずそうにしてしまっている。
「あ、ああ、いやその時はクレーンゲームとかレースゲームとかしたかな~、あとダーツとか」
俺は慌てて、話題をずらした。
「え~、ダーツ!?遥斗格好良さそうじゃん、やろやろ」
高橋さんはパッと笑顔になって腕にしがみついてきた。
「えっ、高橋さん!?」
「え~、絵里香って呼んでって言ったじゃん」
「い、いや、ちょっと……」
正直、恥ずかしくて名前呼びは出来ないでいる。助けを求めるために後ろの二人を見ると、気まずそうに二人で話してしまっている。ここは皆で仲良く出来るよう取り持つ必要があると思う。
「そ、そういえば、二人はゲーセン行ったりするの?」
「え、私たち!?」
「う~ん、拙者はリズムゲームをやったりするで候」
吹本さんがまた変な語尾で答えてくれた。
「野乃花、何その語尾、う~ん、私はあんまり行かないからね~。前はクレーンゲームとかバスケゴールに入れるやつとかやったかな」
急に話しかけられて驚いた様子だったが無事会話に入る事が出来たようだ。正直コミュ障の俺が高橋さんとずっと話すのは厳しいところがあるので助かる。
「へ~、じゃあ、みんなのやりたいやつやろっか。でも遥斗のダーツ姿見たいから先それやろっ」
そんな話をしているとゲーセンの前まで着いた。
「まあ、あの二人はいらないんだけどね」
高橋さんが小声で何かを言った気がしたが俺達の耳には届かなかった。