7.二度あることは三度ある
「え、高橋さんも一緒にお昼ご飯……」
三波さんは少したじろいでいるようだ。
「え~、三波さん、ダメなの?」
高橋さんは三波さんの目の前に歩いてきて手を合わせてお願いしている。
「わ、私はいいけど、杉下君と野乃花がいいかどうか……」
俺の顔を見て助けを求めているように見えた。正直、高橋さんには申し訳ないが三波さんの動揺ぶりを見ると断った方が良さそうだ。
「た、高橋さん、吹本さんもいるしまたの機会に……」
「私はいいよ~」
「ふ、吹本さん、いつの間に……」
いつの間にか俺達のクラスまで来ていた吹本さんが答えてしまった。
「吹本さんだっけ?ありがと!!、ねえ、杉下君ダメ~?」
「いや、ダメじゃないよ……」
断る理由に吹本さんを使おうとしたのがダメだった以上、断りようがない。三波さんも観念を決めたのか目を瞑っている。
「え~、絵里香、今日そっちで飯食べるの~?」
少し遠くから、女子が大声で話しかけてきた。
「ごめ~ん、咲~、今日こっちでご飯食べる~」
「も~、分かった~」
彼女は成宮咲さん、高橋さんのグループのギャルっぽい女子だ。髪にメッシュを入れて耳にピアスを入れて正直、俺としては近寄り辛い。
高橋さんがこちらで昼食を食べると聞いて桂木君がこちらを睨んでいる気がするが無視しよう。流石に高橋さん達が大声で話したせいでクラス中が俺達に注目している。すると端の席に座っている立花さんが口元を隠してニヤニヤしながら見ている。くそっ、あれは楽しんでるな。
結局、俺、三波さん、吹本さんに加えて高橋さんも加わって中庭で食事をすることになった。
「ええ~、三波さん、杉下君にお弁当作ってきたの?」
各々、自分が持ってきたご飯を広げた時、高橋さんが驚いていた。
「う、うん、杉下君、ここの所、パンだけって言うから……」
三波さんは本格的に高橋さんの事が苦手なのだろうか。かなりよそよそしい。
「ハア……、三波さんこの間言った事を気にしてるの?」
「えっ……」
「まあ、イライラしてあんなこと言ったのはごめん。でも杉下君もこうやって話せたりしてるんだから三波さんがした事は正しかったんだよ」
何だろう、二人の間に何かあったのだろうか。
「そ、そんなこと……」
「私の事嫌いになるのはしょうがないけど、そんなビクビクしないでよ」
「う、うん、分かった……」
「よしっ、じゃあこれからは三波さんじゃなくて瞳って呼ぶから!!名前合ってるよね?」
「名前は合ってるけどずいぶん急だね……」
「友達になるんだから名前で呼んだ方がいいっしょ!!じゃあ吹本さんは……、名前なんだっけ?」
「ふひょっ、の、野乃花……」
自分に振られると思ってなかったためか、変な驚き方をしている。
「あと、杉下君も遥斗って呼ぶね!!」
「え!?俺も?」
「友達なんだからいいっしょ!!」
陽キャは友達になったらファーストネームで呼ぶっていうのは本当だったのか。都市伝説かと思ってた。まあ俺も朱里の事は名前で呼んでたけど、流石に何年も一緒にいたやつには名前で呼ぶが友達になりたてでこれは凄いな。
「遥斗、そういえば、今度何処遊びに行く~?」
「ぶっ」
いきなり今朝の事をぶっこまれて、ご飯を吹き出しそうになってしまった。
「えっ、二人で何処かに行くの?」
三波さんが不安そうな顔で問いかけてくる。
「い、いや~、俺も朝にいきなり言われたから何が何やら……」
「え~、せっかくデートに誘ったのにつれないな~」
「デート!?」
三波さん、吹本さんが二人して驚いている。
「た、高橋さん……、誤解を生むような事はあんまり、俺達何でもないんだから」
「え~、つれない~、ていうか遥斗って名前で呼んでるんだから私の事も絵里香って呼んでよ」
「ええっ、いきなり!?」
「いいじゃ~ん、あっ、二人も私の事は絵里香って呼んでいいから」
流石、高橋さんぐいぐい距離を縮めてこようとするな。それを求めている奴ならいいけど俺みたいな根暗は少し引いてしまう。似たようなタイプの吹本さんも斜め上を見つめている。いや、よく見たら浮いている蛾を見て笑ってるな。
「遥斗さ~、二人でデート嫌なの?」
「いや、全然嫌じゃないけど、俺こんなんだから緊張しちゃうかな~って」
うまい言い訳が全く見つからないのでへんてこな返事になってしまう。
「え~、遥斗可愛いね~。う~ん、でもどうしようかな」
高橋さんは腕を組みながら、悩んでいるかと思ったらまたもやとんでもない発言をぶち込んできた。
「あ、じゃあ、ここにいるメンツで遊びに行けばいいじゃん!!」
え、俺女子三人と一緒に遊びに行くの?無理じゃない?三度、高橋さんの提案により4人でデートへ行くことになってしまった。