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6.思いがけない提案

 朝から高橋さんからデートの誘いを受けて正直気が気ではなくなってしまった。登校した後もその事を考えるともやもやしてしまう。


 「おはよう、杉下君!!」


 席についてずっと考え込んでいると三波さんから挨拶をされた。


 「おっ、おはよう」


 「どうしたの、なんかずっとぼけっとしてたよ?」


 「い、いや、ちょっと考え事をしていただけだよ」


 「へ~、何悩んでるの?この三波さんに相談してよ!!」


 えっへんと自分の胸をぽんと叩いた。


 「い、いや~、相談するようなことでもないからさ~」


 「二人で何の話をしてるの~?」


 前の方から高橋さんが歩いてきて、僕たちに話しかけてきた。


 「あっ、高橋さんおはよう……」


 三波さんは何かしゅんとして挨拶を返した。僕が知らないだけでもしかしてこの二人仲が悪いのだろうか。正直こういうピリッとした空気は苦手だ。


 「三波さん、おはよ~、杉下君もさっきぶり~」


 そんな三波さんにはお構いなく高橋さんは元気に話しかける。


 「あ、う、うん」


 ピリピリした雰囲気に居た堪れなくなり、どもって返事をしてしまった。


 「アハハ、また変な声出してる。杉下君、ホント笑っちゃうわ」


 俺の机をバンバン叩いて笑っている。俺がピエロになって笑って貰えるなら本望さ。


 「ふ、ふたりって仲良かったんだ?」


 すると三波さんがふとした疑問を投げかけてきた。


 「い、いや、登校中でちょっと話したくらいだよ」


 「え~、もううちら友達じゃないの~?」


 「えっ、そ、そうですね!!」


 高橋さんはそんなつもりではないかもしれないが、圧を出しているように感じて怖気づいてしまう。


 「なんで敬語になってるの?アハハ」


 高橋さんはまたも笑って机を叩いている。結構笑い浄土なのだろうか。よし、ここはひとつ軽いジョークで和やかな雰囲気にしよう。


 「いや~、僕みたいなミジンコが高橋さんと話せるなんて思わなくてね!!」

 どうだ、渾身の自虐ジョークは!?


 「……」


 「……、いやミジンコではないでしょ」


 三波さんは黙ってしまったし、高橋さんは普段のような明るい声ではなく地獄のような低音で突っ込んでくれた。


 「前から思ってたけど杉下君って自己評価低すぎない?陰キャとかつまんないとか自分で言ってるじゃん」


 「え?だ、だって、根が暗いのは本当だし」


 「は~、そんな事ないでしょ、私たち二人とだって普通に話してるじゃん」


 「そ、それは三波さんと高橋さんが話し上手だからだよ」


 「そんなことないよ。ねえ、三波さん?」


 「え、う、うん、杉下君いかしてるよ!!」


 三波さんは急に振られてテンパっているのか変なフォローになっている気がする。でもそうか、俺は陰キャではないのか。もっと自信を持って学校生活を過ごしていこう。




 

 「おい、陰キャ、女子から話しかけられてるからって調子乗るんじゃねえぞ」


 高橋さんと三波さんの嘘つき!!早速陰キャって言われてるんだけど!!一時間目の授業が終わった後トイレに行こうとしたところ、クラスメイトの桂木亮かつらぎ りょう君から呼び止められ廊下で詰められている。彼は高橋さんのグループの一員でクラスでもカースト上位の人間のイメージだ。


 「ちょ、調子は乗ってないよ」


 「ハア?絵里香に話しかけられて鼻の下伸ばしてたろうがよ」


 桂木君は起こりながら俺の肩を叩いてきた。


 「伸ばしてないよ!!それに俺が高橋さんとちょっと話をしただけでそこまで言われなきゃいけないんだよ」


 「ちょっと話をしただけ?アイツの気持ち知っててそんな調子こいた事言ってんのかよ」


 「気持ち?そんなもん知らない。そろそろトイレ行っていいか?休み時間終わっちゃうだろ」


 「ちっ、いいか?お前大人しくしてろよ」


 そういうと桂木君は何処かに行ってしまった。訳の分からない事を言うだけ言って勝手な奴だと思いながらトイレ行くことを思い出し駆け込んだ。

 

 

 一時間目、二時間目、三時間目、四時間目と眠い目を擦りながらなんとか昼休憩の時間になった。


 「あっ、三波さん、昼また中庭で食べる?」


 ちょっと離れた席の三波さんに呼びかけた。


 「う、うん、また野乃花と一緒になっちゃうけどいい?」


 何か三波さんは歯切れが悪いような気がするが気のせいだろうか。


 「全然良いよ。彼女中々面白いからね」


 「そうだね、フフッ」


 「へ~、みんなでお昼ご飯食べるんだ?」


 高橋さんが俺達に聞いてきた。


 「う、うん、そうだよ。昨日から三人で食べてるんだよね」


 「へ~、それは楽しそうだね~」


 「ま、まあ、そうかな?」


 こういう場合、なんと答えるのが正解なのか分からん。


 「へ~、ねえ、それって私も一緒しちゃダメ?」


 高橋さんから思いがけない提案をされて俺達二人は数秒固まってしまった。

 

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