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4.楽しい昼休み

 三波さんと別れた後、クラスに入ると教壇の前で一つのグループが盛り上がっていた。クラスの中心人物である高橋絵梨香たかはし えりかさんのグループのようだ。


 「あっ、杉下く~ん!!おはよ~」


 高橋さんは僕がクラスに入るなり、手を振って挨拶をしてきた。


 「えっ、お、おはよう」


 「アハハ、いつも通りクールだね~」


 高橋さんは笑いながら机を軽く叩いている。俺は苦笑いをしながら席に着いた。隣の席を見ると、机の上には花瓶が置いてある。元々朱里の席だったので誰か置いてくれたのだろう。

 その後は、普段通り授業を受けて昼休みになっていた。


 「ねえ、杉下君」


 ぼっーとしていると三波さんから話しかけられた。


 「あ、一緒に昼ご飯食べるんだっけ?」


 「え~、そうだよ~、忘れてたの?」


 「ごめんごめん、そういえば何処で食べる?」


 「あ~、その事なんだけど、私の友達も一緒でもいい?」


 「全然良いよ」


 どうやら三人で食事したいとのことだ。正直、よく知らない人と食事するのはあまり得意ではないがここで断るのも変なので承諾することにした。


 「ありがと~、じゃあ野乃花ののか連れてくるから先に食堂行っててもらっていい?」


 「分かった。じゃあ、食堂で席取っておくよ」


 「本当にありがと!!じゃあ呼んでくる」


 そういうとクラスを飛び出し、呼びに行った。どうやら別のクラスの友達らしい。早めに食堂へ行って席を確保しなければ。早歩きで食堂へ向かった。




 「本当に申し訳ない」


 結局、食堂に行ったはいいがテーブル席が完全に埋まってしまっていたので、二人と一緒に中庭のベンチがあるところで食べることになった。


 「全然大丈夫だよ。野乃花も大丈夫だよね?」


 「ヒヒ、大丈夫」


 「面目ない、えーと俺は杉下遥斗。吹本さんよろしくね」


 完全に初対面だったので挨拶した。まあ廊下ですれ違ったことくらいあるかもしれないが。


 「よ、よろしく。吹本野乃花ふきもと ののかと申す。宜しくお願い奉り候」


 吹本さんは独特な挨拶をしてきた。


 「ごめんね。野乃花、結構変わった子で」


 三波さんが慌てて腕をぶんぶん振ってフォローをしている。


 「い、いや全然大丈夫だよ」


 「この挨拶はダメだったか、フヒ、普通にしよ」


 「初対面なんだから最初から普通の挨拶してよ~」


 三波さんが頭を抱えて投げている。短い時間だが何となく二人の関係性が見えた気がする。取り合えず各自で持ってきたご飯を広げる。二人はどうやら弁当を家から持ってきているようだ。俺は食堂で買ったパンを出す。


 「あれ、杉下君、いつもパン食べてるの?」


 「ん?そうだね」


 正直言えば朱里が生きていた頃は朱里が弁当を作って持ってきてくれていた。


 「そうなの?杉下君が良ければなんだけど私が作って持ってこようか?」


 三波さんは顔を赤くしながら提案してくれた。


 「え、それはありがたいけど大丈夫なの?」


 「うん、全然大丈夫!!」


 「フヒっ、瞳大胆だね~」


 吹本さんが不思議な笑い方をしながら茶化している。


 「野乃花はもう茶化さない!!じゃあ明日から杉下君の分も作って来るね」


 「いやありがたいけど、全然無理しなくていいからね?」


 「うん、楽しみにしてて!!」


 その後はご飯を食べながら趣味の話になった。


 「そういえば、二人って趣味とかあるの?」


 俺は二人にそう問いかけた。コミュニケーションが下手なやつは取り合えず趣味を聞けば話が広がると思っている節がある。


 「ん~、私は特にないかな~、家でドラマ見るくらいで後は携帯で動画見るくらい」


 「ヒヒ、私はデスメタル聴いたり、スプラッター映画見たりかな」


 「へえ、スプラッター映画」


 「お、杉下氏、興味がおありで?」


 「い、いや~、ちょっと変わった趣味だなと思って」


 「血が噴き出て四肢が吹き飛ぶさまは爽快なのよ」


 「そ、そうか~、三波さんはどんな動画見るの?」


 本格的に吹本さんは変わった趣向の持ち主のようだ。正直ついていけそうにないので話を変えることにした。


 「え?動物の動画とかかな?ワンちゃんの動画見てると癒されるんだよね」


 「へ~、いいね~、可愛いよね」


 何とか話盛り下げないように話をして過ごした。




 

 昼休み、杉下君と野乃花と別れた後、私は一人でトイレに行こうと廊下を歩いていると、後ろから話しかけられた。振り向くと高橋さんが立っていた。


 「た、高橋さん、どうしたの?」


 「さっき、杉下君とご飯食べてたよね?」


 「う、うん」


 「アハハ、佐藤さんが死んじゃって、すぐ杉下君に唾つけに行くなんて意外と白状なんだと思って」


 笑いながら話してくる高橋さんの目は笑っていない。


 「そ、そんなつもりじゃ……」


 「そんなつもりじゃなきゃ、何?」


 「いや……、杉下君とは前から仲良くなりたいと思って……」


 「そんなの、クラスの女子どころかほかのクラスの女子もそう考えてるでしょ。けど佐藤さんが亡くなったばかりだから気を使ってるんじゃないの」


 「ご、ごめん……」


 「私に謝ってどうするの?」


 話しながら私に近づいてすぐ目の前に立った。


 「まあ、でも杉下君も楽しそうだったし、良いんじゃない。ただ杉下君の気持ちも考えればと思っただけだから」


 そういうとパッと笑って廊下を歩いて行ってしまった。私は黙って立ち尽くすことしかできなかった。 

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