28.危険な提案
カラオケ店の304号室に着いた俺は部屋に入って早々に立花さんが言おうとしていた事を当てた。
「何で私がその話をするって分かったの?」
ソファーに座っていた立花さんはポカーンとしていたが、しばらくして俺に確認をした。
「信じられないと思うけど、俺は実はタイムトラベラーなんだ!!」
「は?」
立花さんは目を細めて呆れたような表情でポカーンとしてしまっている。
「ま、まあ、こんな話をして、とても信じてもらえるとは思ってないよ。それを証明するために立花さんが前回何を俺に話してくれたか、当ててみせるよ」
「は、はあ……」
立花さんはまるで何を言っているんだ……こいつはと言いたそうな顔をしている。まあ立花さんの立場になってみれば当然のような気もする。俺が相手からタイムトラベラーなんだと宣言されたら頭がおかしいのかと心配してしまうだろう。
「コホン……、朱里、…佐藤がクラスの女子グループから嫌われているんでしょ?」
「なんだ、知ってたの。じゃあ私が何をお願いしようとしているのかも分かってるの?」
立花さんは目を細めて挑発的に話す。
「う、うん、立花さんは俺と女子達と関わらせて犯人の情報を探らせたいんでしょ。……なんか自分で言うの恥ずかしいな」
「……、そこまで分かってるなんて」
先ほどまで信じられないという顔をしていたがちょっとは考え直してくれたようだ。
「まあ、信じるか兎も角話だけは聞かせてもらえるかしら」
「分かった、ちょっと話長くなりそうだけど大丈夫?」
「かまわないわ、本来私が色々説明する予定だったんだけど」
「ああ、そうだったね。あっ、長くなるしドリンクバー持ってくるよ。何飲む?」
「悪いわね……、じゃあ、アイスコーヒーでいい?」
「分かった」
俺は部屋を出て二人分のコップを持ってドリンクバーに飲み物を入れる。部屋に戻って立花さんはありがとうと礼を言って受け取った。
その後、前回の記憶から今回起こった出来事までを包み隠さず話した。立花さんも何とも言えない表情をしながら話を聞いていた。
「まあ、話は何となく分かったけど、一番怪しいのはあなたも言うように先生ね」
「だろうね」
「でも私はイマイチ信じられないわね。先生がそこまでする意味が分からないしそれに何で私がどうやって助けにいったのよ」
「さ、さあ、それは俺にも話してくれなかったんだよな……」
先生に監禁されたとき、立花はどうやってか俺を助けてくれた。その後結局殺されたのか分からないが逃げ切れなかったが。あの時の事を考えると気分が悪くなる。頭を思いきり叩かれた感触が思い起こされるからだ。
「私が考えるにひとまず先生の事を調べるのが先決の様ね」
「先生の事を調べるってどうやるの?」
「……そうね…、先生の家を捜索するとか?」
「……え、それって不法侵入するってこと?」
「ま、まあ、一つの案よ」
だが、本当に先生が朱里を殺したのであればそれくらいして止めなければいけないが、いきなり犯罪行為とはハードルが高すぎる。正直、俺にそこまでの度胸がなかったが、朱里が殺されているのだ。そういった強引な手段も必要になってきてしまうかもしれない。
「もう一つの案もあるけど……」
「え、何々?」
いきなり犯罪行為を推奨されて驚いたのでまともな案があるならそれに乗っかりたい。
「危険だからあんまり推奨したくないんだけど……」
「き、危険……、してその案とは?」
「先生に近付いて情報を引き出すのよ」




