23.不穏
朱里が殺されない様に俺が見張る必要がある。幸い俺の家から朱里の家は見える位置にある為窓から明かりの家を寝ないで監視すれば学校へ行くのを阻止する事が出来るはずだ。
「眠いな」
スマホで時間を確認すると深夜の2時を指していた。窓のカーテンをギリギリまで閉めて朱里の家を見ている。正直、朱里が殺されたのは朝のはずだったので徹夜をする必要は無いように思うが念には念を入れる。缶コーヒーを飲みながら朱里の家をずっと凝視している。
徹夜で監視をしていたが結局いつも登校する10分前になっても朱里が家を出ることはなかった。
「昨日の俺の忠告が効いているのか」
前回俺が登校するより何時間も早く学校に向かってそこで殺されていたはずだ。
「やば、俺の準備する時間が無くなる」
ずっと監視をしていて忘れていたが急がないと遅刻していまう。俺は慌てて制服に着替えて軽く準備を済ませて家を飛び出した。朱里と何時もの集合場所に向かって走り出す。もし朱里がそこにいなければどうしよう。家から出ないかずっと監視をしていたのだから絶対大丈夫なはずだが万が一を考えてしまう。
「遥斗~、今日もギリギリね」
集合場所に着いた俺を待っていたのは何時もの朱里だった。
「はは、悪いな」
元気な姿の朱里を見た俺は安堵した。やった、俺は朱里が殺されてしまうといった未来を変えたんだ。
「って、あんた、目が真っ赤よ。大丈夫?」
朱里が俺の顔を覗き込んで不安そうな顔をしている。
「いや、昨日読んでいた漫画が面白くてつい徹夜しちゃってさ」
適当なウソをつくと朱里はハアとため息をついて呆れた顔をしてジト目で俺を見ている。
「あっそ、心配して損した。じゃあ早く学校行きましょ」
「お、おう」
二人は並んで学校へと向かう。
「そういえば、今日とか怪しい電話とかメッセージ来てなかった?」
登校中、俺は気になっていた事を確認した。
「え、何で知ってるの?」
朱里は後ずさりして引いている。
「いや、昨日そういう不審な電話が多いって言ったじゃん」
「ふ~ん、まあでもそうなのよ、朝早くに電話が鳴ってそれで起こされちゃった。で遥斗が昨日言ってたこと思い出してすぐ切っちゃった」
やはり、前の記憶通り、不審な電話があったようだ。だが昨日俺が忠告したおかげで電話に出ることを止めて一人で学校へ行かなかったようだ。
その後、教室に着いてからは一日中眠気と戦いながら何とか授業をこなした。今日体育の授業が無くて本当助かった。運動中倒れてしまっていただろう。
「遥斗、あんた一日中ずっと寝そうになってたでしょ」
放課後、机に突っ伏して寝ていたところを朱里に叩き起こされこんな事まで言われる。お前の為に徹夜したんだろうがと文句をいいそうになったが通じるはずもないので止めておく。
「もうちょっと寝かせてくれ~」
「も~、しょうがないわね~。後、10分したら帰るよ」
「お~」
俺はそのまま突っ伏したまま気を失ってしまった。
「はっ」
いつの間にか結構眠ってしまったようだ。時計を見ると朱里と約束をしてから1時間はたっているようだ。教室には俺以外誰もいない。
朱里は先帰ったのかとスマホを見てみるが特にメッセージなどは来ていない。俺は教室を出て校内を何となく探してみたが朱里は何処にもいなかった。仕方がないので電話をかけたが出る様子もない。
「まあ、先帰ったのか」
念のため、今起きたから家変える事をメッセージで伝え下校する事にした。この時の俺は不審に思うべきだったんだ。朱里と全く連絡が取れなかったことを。




