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2.クラスの真実

 九月二日、朝登校して目にしたのは俺のよく知る女の子の死体だった。俺の幼馴染の佐藤朱里が死んでいる。教室の黒板に腕に杭のようなもので打ち付けられて張り付けにされている。その画は窓からの陽を浴び全身から零れる血を照らし輝いていた。


「あ、朱里…?」


 何秒、何分止まっていただろう。やっと彼女の名前を呼べた。その声は彼女に届かない事も理解できないまま…。




 高校で女子生徒が猟奇的な方法で殺害されたというニュースは全国的に広まった。教室の黒板に杭で張り付けにしているといったショッキングな内容で一時テレビはその報道で持ち切りになったし近所でも野次馬が大量に押し寄せていたという。かく言う俺はその間部屋で引きこもってベットでずっと横になっていたため、学校が再開されてから噂でその話を聞いた。


 幼馴染が殺されたため、家に警察が話を聞きに来たらしいが、俺がまともに話せる状況ではなかったため両親が帰してくれたらしい。その後、警察も懸命な捜査を続けているらしいが一週間たった今も犯人に繋がる有力な情報はまだわからないようだ。


 犯人が見つからないままで学校も判断に困ったことだろうが学校再開を決定した。その知らせを聞いた時億劫ではあったがこのままベットでずっと寝ているのも気が滅入りそうだったので俺も学校へ行くことにした。両親はまだ休んだほうが良いのではないかと止めてくれたが、心配してくれる両親のためにも自分のためにも学校へ行くことを伝えた。



 今まで使っていた教室は事件の現場ということもあって使われず、もう一つあった空き教室を使用することになった。


「おはよー」


 教室に入るとクラスメイトの女子数人が挨拶をしてくれた。今まで友達の少なかった俺が挨拶をしてくれることなどなかったが気を使ってくれているのだろうか。


「お、おはよう」


 しばらく家族以外、会話してないためかぎこちない挨拶になってしまう。自分の席に着くと隣の机の上に花瓶が置いてあり朱里が死んだという事実を突きつけられる。席について物思いにふけっていると担任の二条にじょう先生が教壇へとやってきた。どうやら朝礼が始まるようだ。


 「おはよう、朝礼を始める前に皆に言うことがある」


 今まで、ガヤガヤしていた教室がしんと静まり返る。


 「みんなも知っている通り、痛ましい事件が校内で起きた。みんなにとっても、痛ましい出来事だったと思う。残念ながら犯人もまだ見つかっておらず学校を再開することに反対の者もいると思う」


 生徒達は神妙な面持ちで聞いている。


 「警察の方達も犯人を捕まえるために毎日休まず働いている。私たち教員や保護者、地域の方達も毎日君たちを守るためにパトロールしている。だが君たちも油断せず危機感を持って登校してほしい」


 その他にも下校時はまっすぐ帰る事など注意点を伝え、朱里のために黙祷をして朝礼は終わった。




 「杉下君、あんな事があって何て言えばいいか分からないけど元気出してね」


 一時間目が終わった後、クラスメイトの女子数人から話しかけられた。


 「あ、うん、ありがとう」


 こんな返ししか出来なかったが、クラスメイトの心配してくれる好意は素直に嬉しかった。

 

 最後の授業の受けた後、机の中の教科書を取り出そうとした時、何やら封筒が入っていた。何だろうと開けてみると遥斗様へと書いてあった。もしラブレターだといけないと思いトイレの個室に駆け込み内容を確認してみた。


 「佐藤朱里さんが殺された事に関する情報を知っています。教室でその話は出来ないので駅前のカラオケの304号室を予約しているので4時に来てください」


 朱里が殺された情報を知っている……?怪しい事この上ない。だが朱里が殺された犯人は早く捕まって欲しいと考えているし、これがいたずらなら本人に文句を言わなければ気が済まない。俺は指定されたカラオケを行くことを決意する。





 放課後、指定されたカラオケ店に着いて受付に話すともう既に先客が来ていると伝えられた。階段を上って304号室の前に立った。誰がいるのか…、どんな話が出るのか…、不安になるが意を決して扉を開けるとクラスメイトの立花愛依たちばな あいさんが座っていた。


 「た、立花さん…?」


 「杉下君、こんにちは」


 立花さんはかなりの美人で長い黒髪を靡かせる姿に男子からの人気も高いのだが、クラスで一人でいることが多い女子だ。元々陰キャで人との関わりが少ない俺とは恐らく一言も話したことがないのではないか。


 「わざわざこんな所に呼び出してごめんなさい。クラスでは話せない内容だから」


 「あ、ああ…、大丈夫だよ」


 「あなたもすぐに帰らないと家族が心配すると思うから手短に話すわね」


 すると自分のスマホをこちらに見せてきた。画面を見てみるとどうやらグループチャットが表示されている。参加人数がクラスの半分でチャットの名前が1-B女子グル-プという名前が付いている事からクラスの女子が参加しているらしい。


 「クラスの女子のチャットだよね?これがどうしたの?」


 「ええ、問題はチャットの内容よ」


 そういうとこちらにスマホを渡してきた。内容を恐る恐る見てみるとその内容に絶句した。


 「殺されちゃうのは可哀そうだけど、正直済々した」

 「いつも偉そうに指図していてうざかった」

 などの中傷するような内容だった。


 「立花さん、こ、これは?」


 「このグループ、佐藤さんだけ入っていなかったのよ。彼女、クラスの女子みんなから嫌われていたから」


 「な、なんで?」


 「それは、杉下君、あなたが理由よ」


 お、俺が理由で朱里が嫌われていた?何でそこで俺の名前が出てくるんだ?疑問に思っていると立花さんが続けた。


 「あなた、クラスの女子からかなり人気があるのよ」


 「え?」


 俺はぽかーんとしてしまった。


 「あなた、クラスのチャットでルックスがいいと評判だし、佐藤さん以外と喋らなくてクールな印象を持たれているみたいよ」


 「に、にわかには信じられないけどそれが真実だとしても朱里が嫌われている理由が分からないよ」


 「そう?あなた、佐藤さんとずっと一緒にいたじゃない。まあ、女子達の話ではあなたをほかの女子から遠ざけていたって話らしいわよ」


 「遠ざけていた?」


 「ええ、言ったように杉下君がクラスの女子から人気がある事を彼女は知っていた。恐らくその状況は彼女にとって面白くない事だったのよ」


 正直、朱里から自分に好意を持たれていてる事は薄々感じてはいた。立花さんの話を信用するなら、朱里の性格的にその行為に及ぶ可能性もあると思えた。


 「話は大体分かったよ。朱里は確かにクラスの女子から嫌われていた。だけどそれが朱里が殺された理由になるんだ?」


 朱里が殺されたのにこんな事を聞かされてかなりイライラして語気を強めて言い返してしまった。


 「私はこの事件、クラスの人間が関係していると思うの」


 「ま、まさか、それは突拍子が過ぎないかな?」


 「勿論、クラスは関係なく不審者が学校に忍び込んで佐藤さんを殺したという可能性もある。けどそんな目撃情報が全くなく今も犯人が誰か分からない状況でしょ。そもそもそんな人なんていなくて学校の関係者が殺したって噂にもなってるの」


 「な、なるほど、その話も0%だとは言い切れない。だけどそんな話を俺にしてどうするの?警察に言うべきことじゃない?」


 「警察の人に言ったところで確かな証拠もないのに当てにされないわよ。そこであなたにお願いがあるの」


 「お願い?」


 「クラスの女子に接触して佐藤さんに関する情報、いえ、犯人に関する情報を集めて欲しいの」

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