10.ダーツをしよう
ゲーセンに入ると、高橋さんはキョロキョロし始めた。ダーツのコーナーを捜しているのだろうか。
「あっ、あった」
高橋さんが指をさした方を見ると、どうやら二階の奥にダーツの的が並んでいるようだ。
「まず、ダーツからやろうよ。あっ、でもダーツ持ってなくてもやれるのかなあ」
「ああそれなら、店員さんに言えば貸してくれるはずだよ」
ゲーセンでダーツで遊んだ事があるので何となく勝手が分かっていた。みんなはへ~と感心している。
「良く知ってるね~、じゃあ投げ方とかも教えてもらおうかな~」
高橋さんはそう言って、俺の腕に絡んできた。高橋さんの柔らかいものが腕に当たってドキドキしてしまう。あんまり意識しないように俺が店員さんに話して何個かダーツを持ってきてもらった。そして俺らはぞろぞろとダーツの的の前まで向かった。
「じゃあまずは基本的なカウントアップってやつからやろうか」
「カウントアップって?」
「えーと、一人三本ずつ投げてそれを交代しながら八回繰り返して合計得点が高い人が勝ちってルールだね」
ダーツの機械まで行き、カウントアップのルールで設定をして100円玉を入れた。
「えーと、じゃあまず俺からやるね、まずこの白線から前に出ちゃダメなんだよ」
俺は的から数メートル離れた白線の前に立つ。
「立ち方は色々あるんだけど俺はこの線に平行になるように靴を合わせてる。普通に正面に立ったり。斜めに線を踏んだりかな」
女子達はふんふんと俺の話を聞いている。
「でダーツを持って的に投げる。ダーツの持ち方も人によって千差万別なんだけど、俺は指先でペンを持つように持ってる。これは自分にあったやつを捜した方が良いかも」
「遥斗、先生みたい」
「杉下君すごいね」
「かっこいい!!」
女子達が口々に褒めて、正直気分がいい。俺はペラペラ、ダーツのやり方を話していく。
「で狙うところなんだけど、まあ得点を争うこのルールなら普通に真ん中でいいと思う。一番真ん中は50点で、その周りの円は25点、で他は基本的に上に表示されている点数になる。で一番外側の色が変わっている所は二倍、内側の色変わっている所は三倍の得点だね」
と得点の事について女子達に説明していく。みんな真面目に聞いている。ある程度説明したのでいよいよ投げる。
「じゃあ投げるよ」
一投目は中心より少し上にそれて20点、二投目はシングルブルの25点、三投目は下の3点だった。基本的に中心に寄っているし調子は良さそうだ。投げている時、女子達は後ろでキャーキャー歓声を上げている。
「じゃあ、続きは高橋さんかな。やり方大丈夫そう?」
「やってみるから何かあったら教えて~」
高橋さんは白線に立ち、俺の言われた通り線に平行になるように立ち、的に目がけてダーツを投げた。一投目、7点、二投目は2点、三投目は何と一番真ん中の50点を取ってしまった。
「やった~、これ凄くない?」
「い、いきなり※ダブルブル……凄いな」
高橋さんはかなり筋がいいみたいだ。最初から的に当たっているし、女性でいきなり落とさずに刺さるのはかなりすごい。
「じゃあ次は三波さんかな?分からなければ聞いてね」
「う、うん、やってみるね」
三波さんは白線の前に立って、投げてみるが一本目は的に当たらず下に落ちてしまう。
「あ~、全然届かないや~」
「それなら、的の上の方を狙って強めに投げるといいよ」
「なるほど、やってみるね」
三波さんは二投目を投げると、今度は的に当たったのだがうまく刺さらず下に落ちてしまう。
「うわ~当たったのに~」
「あ~、最初は上手く刺さらないよね。俺のイメージだと、的にダーツの先を刺しに行くように投げるイメージなんだよね」
「う~ん、あんまり分からないなあ……」
「そうだな、あ、ちょっと投げる前の姿勢になってもらっていい?」
「え?う、うん」
俺は三波さんの所に歩いて三波さんの右腕に触れた。
「え、え、杉下君?」
「え~と、投げるときに一回腕を後ろに引いて弧を描くように上の方に投げてみて」
三波さんの右腕を軽く触れて少し引いて投げるポーズまでを教えた。
「こんな感じ?分かる?」
「う、うん……」
三波さんの顔を見ると真っ赤で今にも爆発しそうになっていた。その顔を見て自分が何をしているのか気付いた。
「ああっ、ごめん!!夢中になって三波さんの腕に触っちゃって」
「う、うん、全然大丈夫だよ……」
「瞳、ずるーい!!」
後ろで高橋さんがギャーギャー騒いでしまっている。これはミスったかな。三波さんに次投げてもらって話を切らなければ。
「み、三波さん、今の感じで三投目投げてみて!!」
「う、うん」
三波さんは俺の教え通り、三投目を投げると下の3点の箇所に刺さった。
「や、やった、刺さった!!やったよ、杉下君」
「やったね、三波さん!!」
三波さんは俺の元まで来て二人でハイタッチをした。その次に吹本さんとハイタッチをして最後に高橋さんの元に駆け寄って行った。
「あんまり調子に乗らないでね」
高橋さんは俺に聞こえないくらいの声で囁いた。




