森のとしょかんパーティー
「森のとしょかん」シリーズの一作ですが、このお話だけでもお読みいただけます。
とある森のおくにたつうさぎさんのお家には、本がいっぱい。どうぶつたちからは「森のとしょかん」とよばれています。
まっ白な体にまっ赤なひとみのうさぎさんは、どうぶつたちに本をかしだしたり、「町のとしょかん」に出かけていってべんきょうしたりと、大いそがしの毎日をおくっていました。
◇◇◇
きせつは秋。
ぐっとすずしくなった風に気づいてかおを上げてみれば、森の木々も赤や黄色に色づきつつあります。つめたくてさむい冬も、すぐそこまできているのでしょう。
冬になれば、森にはしんしんと雪がふりつもります。
あたり一めんがまっ白になり、それはそれはきれいな景色がひろがるのです。
でも、雪がふかくなれば、としょかんに来てくれるひとは、へってしまうにちがいありません。そのしょうこに、どうぶつたちも冬のそなえについてはなすことがふえていました。
「たべものをたくさん用意しておかないと」
「たきぎもいっぱいいるね」
さむい時期にピッタリのあみものの本をさがすひとや、あたたかいスープのつくり方をしらべるひと。
お部屋でできるあそびの本をかりる子どももいます。
うさぎさんはみんなにえがおで本を手わたしながら、さみしい気持ちもかかえていました。このまま冬になり、春までこの賑やかさが「おあずけ」になってしまうのはいやでした。
「なにかできないかな……」
なんどもなんども、そうつぶやいたあとに、うさぎさんは「そうだ」と手をポンとたたきました。
◇◇◇
「パーティー?」
いつものようにやってきたみんなは、うさぎさんがかべに貼ったポスターを見て、おどろきました。そこには大きな字で「森のとしょかんパーティー。おきがるにご参加ください」とかいてあったのです。
「冬になるまえに、みなさんと楽しくすごしたいと思ったんです」
うさぎさんがにっこりわらって、パーティーについてのせつめいを始めました。やがて、きいていくうちに、どうぶつたちにもえがおが広がっていきました。
そして、待ちに待ったパーティーの日がやってきました。
うさぎさんのお家もにわも、子どもたちが今日のためにかいてくれた絵やおりがみ、色とりどりのガーランドでかわいらしくかざられています。
いくつもならべられたテーブルには、みんながもちよってくれたクッキーにケーキにシュークリーム。
ほかにもほんとうにたくさんのおかしが、甘いにおいとともに今にもお皿からあふれ出しそうになっています。
そのとなりのテーブルには、うさぎさんがえらんだ秋や冬がテーマの本がずらりとおかれていました。
絵本もあれば、長いおはなしの本もあります。
かざり作りの本やおかし作りの本もあって、ながめているだけでどれから読もうかとワクワクしてきます。
「どうぞ」
「ありがとう!」
うさぎさんもあたたかい紅茶を参加してくれたみんなにふるまいながら、いつも仲良くしてくれていることへのお礼をつたえていきました。
みんなも、「こちらこそ」とこたえてくれます。
「今日はぜひ、いっぱい読んで、いっぱいおはなしをしていってくださいね」
『はーい!』
ならべられた本のことはもちろん、大好きでなんども読みかえしてしまう本、このとしょかんであった楽しいできごと、あつまってくれたみんなのこと……。
かんがえただけで、おはなしのタネはつきそうにありません。
「よかった」
ワイワイとした賑わいを見たうさぎさんの口から、おもわずうれしさがこぼれました。
着かざったどうぶつたちのとしょかんパーティーは、まだまだ始まったばかりです。
《おわり》
お読み下さってありがとうございました。
このお話やシリーズをお読み下さった方への感謝や、早くこんなふうに過ごせるようになって欲しいという願いを込めて書きました^^