幼少期 第一話
愛する者よ 愛せぬ悲しみよ 愛故に愛してはならぬ
一つの大陸を制した四人の覇王がいた。互いに手を取り平和な時代を築いた。後にこれを四皇創世と呼ばれるほどの偉業を成し遂げた。
彼らは大陸を四分割しそれぞれを統治、大陸の中央に世界政府を立て平和の世を築きあげた。しかしその平和も200年あまりのもの。再び戦乱の世が始まった。
大陸の中央より少し西方にある、海に近い漁業の町ルマニカ。早朝の砂浜で釣りをしている一組の親子がいる。
「おーい、マルクお前いつサラと結婚すんだ?」
「いや待てよ親父!急になに言いだすんだよ!俺もサラもまだ10才だぞ」
「いいじゃねえかよ。歳なんて関係ねえからとっとと結婚しちまえよ!」
「だから待てって親父。この国では男女ともに16になってからじゃないと結婚できねえんだよ! そもそもサラの気持ちなんてわからねえし」
「んなこと気にするなよ。お前ら幼馴染で両想いだろ? それによ、国なんてもうねえよ!中央政府は衰弱し官僚どもは腐敗しきっとる。今力あるのは貴族と地方の豪族だけだぞ。それにこの町が安泰なのはサラの親父の威光がまだ効いているからだよ」
「だからって10才はまだ早いよ! んで親父は国の一大事に何もしないのかよ?」
「こんな広い国おれ1人ではどうにもならんだろ。それにおれはお前を育てるので精一杯なんだよ!」
どうにもならない、それもそのはず。広大なブルースターシア大陸の一角、漁業の町ルマニカは大貴族の配下、小貴族が治める小さな町だ。