「待て」ができる悪役令嬢は絶対に裏切らない
「アホマリー…!あれほど自分を大切にしろと…!!」
背中が熱い。
じわりと生ぬるい感触が気持ち悪い。
ああでも良かった。
あなたが傷つかなかった。
守ることができた。
これはわたくしが望んだこと。
絶対絶対主を信じる。
それはわたくしが昔から決めていること。
それに世界で1番だいすきな人の腕の中。
わたくし、今世でも幸せね。
「ね…言ったでしょ…あ…なた…のこと、ぜっ…たい、裏切らない…って…」
ああ、でも、できるなら、
大好きなあなたの傍にまだまだいたいのです。
****
ひまわりは犬だ。
ばーちゃんと暮らしてる。
テレビの前でばーちゃんが手に持ってるリモコンをポチポチさせると、画面がきりかわる。
ひまわりはばーちゃんの横でそのテレビを一緒に見るのが好きだ。
その中でも特に好きなのがレオ様。
「ひまわり…いつも信じてくれてありがとう。どうかこの手をとってくれないか…?私と共に良き国を作っていってほしい。」
レオ様が言うのでもちろん画面に手をくっつける。
レオ様ごめんなさい。画面が邪魔だ。
ひまわりはここまでしかいけないの。
手をテレビにたしたしする。
「あっはっは。ひまちゃんはほんとレオ様大好きなのね~。ばーちゃんはやっぱり第2王子のロベルト様がかわいくて好きだわあ。」
「ただいまー!ばーちゃん話聞いてー!!って、えええええー!?もうそのゲームエンディングまでいっちゃったの!?」
この子は隣に住んでるすみれちゃん。
時々ばーちゃんちにやって来る。
レオ様に会えるようになったのは、すみれちゃんが「部活始めて忙しくて中々来れなくなっちゃった。ばーちゃん、暇でしょ?これ貸してあげるから進めといて。」とばーちゃんにゲームってやつを渡してからだ。
「すみれちゃんおかえり~。大丈夫、これ8周目。見たいシーンどこでも戻れるわよぉ。レオ様がでてくるたびにひまちゃんが可愛くてねえ。主人公の名前も2回目からひまわりに変えたらもうかじりついちゃって。ばーちゃんはひまちゃんとロベルト様に癒されて脳みそ活性化しちゃったわ。ありがとねえ~。それで今日はどうしたの?」
すみれちゃんはこうしてばーちゃんに話を聞いてもらうのが好きみたい。
今日もイライラを爆発させてる。
「それは辛かったねえ…。なんで裏切ったのかしらね?その子。ひまちゃんの忠誠心見習わせたいわぁ。」
ん?画面が切り替わった。
このあたりのシーンはまだレオ様とそこまで仲良しじゃないんだよぉ。
さっきのとこが好きなんだけどな~。
「ひまわり。みんなにあなたを紹介したい。さあおいで。」
「お待ちなさい!またあなたなのね!こんの泥棒猫!身の程を知りなさい!」
うわわ!出てきた。
背を低くしてクンクン鼻をならす。
ひまわりは猫じゃなくて犬なんだけど…。
この女の子はとっても苦手。
いつもレオ様といると怖い顔で怒ってくる。
「マリー嬢やめないか!怖がってるじゃないか!どうしてあなたはそうやっていつもひまわりにきつくあたるんだ!」
「殿下もいい加減目を覚ましてください!こんな小娘相手に誑かされて!殿下らしくないですわよ!婚約者はわたくしですのに!」
「レオ様…ごめんなさい私のために…。」
なんでこのマリージョーはいつも怒ってくるのかな。
マリージョーはレオ様が嫌い?
主の言うこと信じて欲しいな…
****
「ん…どうして主を信じないのぉ…」
むくっと起き上がる。
起き上がる…?
なんか体がいつもとちがう
もふもふの毛はどこいった?
勝手に動くしっぽは?
手を動かしてみたら、目線の先にあったちいさな手が動いた。
え、これひまわりの手…?
ぐーぱーぐーぱーすっごく動く。
え、もしかしてもしかして
「おはようございますマリー様。大丈夫ですか?ようやくお目覚めになられて安心しました。今旦那様方にお伝えしてきますね。皆さま心配されていましたよ。」
「え、ええ…。」
おろおろしてると、ずっと看病してくれていたのであろう、侍女のアンナに声をかけられた。
そういえば昨日満面の笑みを浮かべるお父様から、ついに王太子殿下の婚約もぎとったぞ!とお話を聞いたんだ。
それを聞いて、
目の前が真っ白になっていた。
そして、長い長い夢を見た。
ううん、夢じゃない。
ただ今まで思い出さなかっただけだ。
この世に生を受ける前の記憶。
記憶が巻き戻って巻き戻って、
3人の主がいる犬だった。
最初の主はあいちゃんというこどもだった。
毎日おうちで一緒に遊んでくれた。
お互いに体が大きくなってくると玄関で過ごすように言われた。
部屋に入るとママに掃除機で叩かれる。
でも大丈夫。
玄関にいても、毎日あいちゃんが朝と晩に撫でてくれるから。
ある日ママとあいちゃんが車に乗せてくれた。
車に乗るのは初めてだった。
到着したのは、草花が生い茂った原っぱだった。
あいちゃんが
「ここで、待て、だからね。」
と言って頭を撫でて去っていった。
小さくなっていく背中をずっと見つめていたらあいちゃんが1度だけ振り返って「ごめんね」と言った気がした。
それから、ずっとそこで待っていた。
動かず、じっとしていた。
あいちゃんにはその日以来、会えなかった。
でも「待て」と言われた。
だからここで待ってる。
ずっとそこにいると、声を掛けてくれる人もいて。
暑くなってきて
近くに咲いている花にそっくりだねと誰かが言った。
その後、ひまわりと呼ばれるようになった。
ばーちゃんはその内の1人だ。
原っぱの近くのちいさな家に1人で住んでいた。
ばーちゃんは毎日会いに来てくれた。
大雨が続いた。
朦朧として倒れて、気付くとばーちゃんの家にいた。
助けて貰って、ばーちゃんは2人目の主となった。
ばーちゃんは毎日原っぱに行くことを許してくれた。
「いくよ」「かえるよ」のばーちゃんの合図。
毎日原っぱで「待て」を続けていた。
体が痛くて、だるくて、段々動くのも辛くなってきて。
それでも毎日昼間は原っぱへ行った。
周りの声は聞こえてる。
「可哀想」「バカな犬」「来ないのに」
信じてる。
でも自分のやっていること。
だめなのかな。おかしいのかな。
そんな時に出会ったのがレオ様だった。
3人目の主だ。
レオ様は
「がんばったな」
「ひまわりは間違ってないよ」
「そのままでいい」
「信じてくれてありがとう」
かけてくれる言葉とその笑顔が、そんな自分の心を救ってくれた。
もちろん金色のツヤツヤした髪の毛も大好きだ。
こんな風に自分をみてくれたこと。
レオ様に触れたことはないけど。
忠誠を誓った。
犬生、色々あったが最期はばーちゃんの腕の中で看取って貰った。
ばーちゃんちにいたのは、2年間と短い時間だったけど、幸せだった。
ばーちゃんの腕の中、目を閉じて、ふわふわした気分になった時、
「がんばったね。もし生まれ変わったら絶対絶対今度こそ幸せになるんだよ。」
とばーちゃんの声が聞こえた。
ばーちゃん、ひまわりは十分幸せだったんだよ。
ばーちゃんやレオ様と過ごす日々は最高に幸せだったんだよ。
「先に逝っちゃってごめんね…。」
よし!
ひまわりは、がんばるからね!幸せに過ごすから!
しかも憧れの人間生活!
っていっても、なにも考えずあるがままに4年生きていたんだけど。
マリーとして、これからは精一杯生きる!
あの頃食べてみたかったもの、やってみたかったこと、全部できるなんて!
もう4年もたってしまっていた!
もったいない!
今度はどれくらい生きられるかわからないけど、たのしんでみせるんだー!
そう1人意気込んでいると、部屋の外が騒がしくなってきた。
この声はお父様、お母様、アルクお兄様、アンナの4人ね。
って、あら。
ひまわりだった頃みたいに音が細かく聞き取れる。
犬時代の感覚、思い出したのかしら?
徐々に足音と匂いが近づいてくるのがわかる。
深い森のような香りのお父様、淡いバラの香りのお母様、夏の朝のような香りのアルクお兄様。
鼻の感覚も戻ったみたい。
犬と人間じゃ体のつくりが絶対違うのに不思議だけど、まあラッキーね。
あ、廊下を曲がった。
ベッドから降り立ち、ドアの前に立つ。
「マリー!起きたって!?」
「おはようございます!」
そして愛する家族に飛びついたのだった。
***
あの後、鏡を見ると小さくなったマリージョーが映っていてびっくりした。
そう、わたくしはマリー・ウェルネスト。
ウェルネスト公爵家の4歳の娘。
マリージョーじゃなくてマリー嬢ね。
犬だった時は音でしか分からなかったから。
なぜかわからないけれど、あの女の子になっていた。
わたくしはこの4年間無駄にしてた。
綺麗な石やドレスをねだってはお茶会を開き、周りがニコニコ聞いてくれるのをいいことに文句ばっかり言ってた。
今ならわかる。
周りは聞いてくれてた…ように見えたけど、
あれはばーちゃんちにスーツのお兄さんが来て「絶対あった方がいいですよ」「みんな持ってる」って一生懸命話してるのを、さらっと聞いてるようで聞いてない時のばーちゃんの顔。
ニコニコしてるけど、はよ帰れって思ってるやつよ。
ホントみなさまのお時間をとらせてしまって、申し訳ない。ご迷惑かけました。
これからは人間に生まれてこれたこと、後悔しないように生きます。
たぶん今まで通りに大きくなっていったらあのゲームの女の子のようになっていたのかしら。
4歳のこの家のお嬢様は自分が1番、みんなにチヤホヤされたいという気持ちがひと一倍強かった。そしてお父様、お母様、アルクお兄様もなんでも許して甘やかしてくれていた。
だからマリージョーはいつも自分を優先してくれないレオ様に怒っていたのかもしれない。
今ならなんとなく、マリージョーの気持ちもわかる。
王太子殿下の婚約者をお父様に無理やりねだったのもそんな気持ちから。
王妃になったらみんながチヤホヤしてくれると思っていたのでしょうね。
手に入らないものがあると癇癪起こしていたものね。本当に困った子だ。
そっか。
わたくしこれからレオ様のお側にいられるんだ。
やることが明確になった気がした。
***
少し経って、婚約者と顔合わせする機会が設けられた。
あの後、お父様に確認してみたらやはり王太子殿下は、レオ様もといレオナルド殿下だった。
結果から言うと、レオ様はゲームで見たレオ様とちょっと違っていた。
「初めまして。貴方のことはよく聞いてますよ。婚約者の座が欲しくて周りを牽制したり親のコネを最大限使ったとか?そんなに国母という立場は魅力的でしたか?」
この笑顔はゲームで初めて出会う時のレオ様の表情。にっこり笑顔、でも機嫌はすこぶる悪い。
緊張感が漂う。
「確かに、お父様にお願いした時はそうだったかもしれません。しかし今は違います。わたくし婚約者として、絶対に殿下のことを裏切らないと誓います。この命に替えても、いついかなる時もお守りいたします。」
「ふぅん…」
レオ様が穴が開きそうなくらい見つめてくる。
どうぞどうぞ好きなだけ。
この忠誠心、前世から揺らぎません。
目を逸らさず、じっと見つめる。
「じゃあここで俺のために死んでみろ」
「かしこまりました。主のために。」
記憶を思い出してから常に首からチェーンでぶら下げているオオカミの牙を服の中から取り出し、両手で思い切り自分の首へと振りかざし…すんでのところで止められた。
「お前はアホか!?」
「ご命令ですので…でもやはり牙1本で命を絶つというのは厳しいですよね。わたくしも思ったんです。果たしてこの鋭い歯だけで肉や骨を砕いていたか?否、これはあくまでも刺すだけのもの。致命傷を負わせることすら難しそうです。やはり周りの細かい歯、あれがあってこそ肉を噛み砕いたりすり潰したりすることができていたんだなあと思い甘く見てました。オオカミクン1号はさらに改良を続けていきたいと思います。すみません…」
「いやなんの話をしてるのかさっぱりわからんが、お前がアホで会ったばかりの俺の事をなぜか慕っているというのはわかった。」
主の言うことなら特に疑う余地もないですけどね。
でも信じていただけて嬉しい。
再びお会いできただけでも嬉しいのに、こんなことがあって、頬が緩むのを止められないわ。
「きっと殿下のお役にたってみせます。どうかお側においてください。」
これまで緊張した様子だったレオ様は息を吐き、
「レオでいい。俺の立場は些か厄介でな。明日死ぬ可能性だってある。生半可な気持ちで婚約者などとぬかされても迷惑と思っていた。だがお前はそうではないらしい。初めて会ったやつに死ねって言われて本当に死のうとするやつがいるとは思わなかったよ。もっと自分を大切にした方がいい。試して悪かったな。ケガはなかったか?」
ちょっと違う?と思ったけれど、根底にある優しいところはやっぱりレオ様だわ。
「はい、レオ様。」
わたくしの主はレオ様。
いつだってあなたを信じてお守りします。
***
「お待ちなさい!またあなたなのね!こんの泥棒猫!身の程を知りなさい!」
今日もわたくしは声を張りあげオオカミクン25号を振りかざす。
「マリー、落ち着け、それは猫だ。」
「レオ様、あの猫はいつもいつもレオ様のために用意しているお菓子を狙っているのです。いつレオ様がお菓子を召し上がる時に襲いかかってくるかわかりません。わたくしはレオ様を傷一つ付けずに毎晩床について頂くという大きな目標を掲げています。やはりあの猫1度しっかり懲らしめてやらねばなりませんね。捕まえて目の前で美味しそうに好物を食べてやって心をパッキリポッキリへし折ってやらなければ…」
「マリー、俺は猫ごときにやられないから。そしてたぶんそのおしおきは放した時悪化するだけだから。ほら、窓のサンまで飛び出したから汚れちゃってるじゃないか。ケガは?お前はもう少し自分を大事にしてくれ。」
レオ様はいつもわたくしの心配をしてくれる。
2人でいる時、言い方は乱暴だけど優しい。
「はい、レオ様…。」
主がそういうならあの泥棒猫へのおしおきはできないわ。猫が近付かないバリケードを作らないといけないわね。
レオ様といつものようにやり取りをしていると、執務室のドアがノックされた。
「マリー、ノックの度に拳を構えるのは止めて。オオカミなんとかも隠して。」
レオ様が言うので仕方なく構えを解く。
まあこの匂いは誰かはわかる。
「アルクお兄様」
「また妹が変なことしていましたか?ほんとにいつもいつも申し訳ありません殿下。」
「アルク、大丈夫だ。いつものアホマリーだったよ。アホ可愛いから大丈夫。」
そう言って、レオ様は私の髪をわしゃわしゃした後、おでこにキスをした。
「なんとなく癒されるんだよな。」
「まあ気持ちはわかります。変な骨みたいなオモチャをいつもこっそり持ち歩いて、公爵令嬢としてはどうかと思いますが。鼻と耳はやたらいいし、身内びいきかもしれませんが、有能ですよね。」
結局、あれからずっとレオ様はわたくしをそばにおいてくれた。
ゲームでみたようなことは起こらない。
けれどそばにいて分かったのはレオ様が命を狙わることが多いということ。
この国には賢い第1王子派と人懐こい第2王子派の2つの派閥がある。
王太子は第1王子のレオナルド様だけれど、レオナルド様を亡き者にして第2王子のロベルト様をおしあげようという動きもあるみたい。
わたくしの嗅覚と聴覚はとても役立った。
周りには止められたけど毒味係を買ってでた。
毒入り紅茶や毒入り料理を口に入れる前に気付いた。
届いた書簡に異変を感じればすぐにお伝えすることができた。
レオ様と歩いている時に花瓶が降ってきたり、なぜか火の着いた燭台が倒れて絨毯に燃え移りそうになったこともあったけれど、すぐに気づいて対応することができた。
まさに忠犬として役立てたのではないかと思う。
これまでは。
あの日、式典に潜んでいた刺客を得意の嗅覚と聴覚を駆使して片っ端から見つけ出し、オオカミクン152号でコテンパンにしていった。
しかし少しお側を離れてしまったがために、気付かなかった。
まさかレオ様のお隣にいたロベルト様がレオ様を襲うなんて。
オオカミクン152号を敵から外してる暇もなく、身体を滑り込ませるのがやっとだった
***
「んぁ…」
「マリー!!」
目を開けると大好きなレオ様のお顔が視界いっぱいに映った。
ええええ最高の目覚め…!
「ぃっ…」
と幸せに浸る暇なく背中の痛みに顔が歪む。
「まだ起き上がらない方がいい。なんとか一命をとりとめたものの、かなりの血を失った。しばらくはベッドで生活だ。」
レオ様が起きあがろうとしたわたくしの身体を優しく戻してくれる。
「わたくし…死なずにすんだのですね。レオ様、あの後大丈夫でしたか?ケガされてませんか?」
とにかく、1番気になるところはそこだ。
「俺のせいで本当にすまなかった。守ってくれてありがとう。…お前はいつもいつもアホで無鉄砲で俺を守ることしか考えてないな。俺はほんとにダメだな…大事な人を守ることもできないなんて。」
レオ様が悲しそうに笑う。
わたくしは大丈夫なのに。
もっとニコニコして欲しいな。
「何を言ってるんですか。気にしないでくださいね。わたくしにとって、レオ様が絶対です。これからもわたくしがレオ様を守ってみせます。」
刺客が片っ端からやられ、足がつくことを恐れて焦った第2王子ロベルト様は今回の事件を起こしてしまったらしい。
公然と王太子殿下の婚約者に切りかかったロベルト様は地下牢に幽閉されたとのこと。
「マリー…お前をいつも危険に晒して、俺がこんなこと言うのは都合が良いってわかってる。だが…どうかもう一度この手をとってくれないか…?お前が信じてくれるから俺はいつも俺でいられるんだ。共に良き国を作っていってほしい。」
レオ様が手を差し出してくれる。
何度も何度もあの部屋でみたレオ様。
その手を取りたいのに。
あの時もどかしかった気持ち。
「そんなの…答えは決まっています。」
そっと手をのせると、やわらかい熱を感じた。
「ありがとう。マリーがいつも俺を信じてくれるから、俺もマリーが誰よりも信じられる。」
レオ様の笑顔が眩しい。
ぶわっと幸せな気持ちが押し寄せてくる。
いつだって主を信じてる。
そして、わたくしのこのきもちを
信じてくれる人がいる。
あの日、毎日待っていた。
あいちゃんが戻ってきてくれるって信じて。
「待っていてくれてありがとう。信じてたよ。」
って、言って欲しかったの。
ばーちゃん、今世でも幸せだよ。
信じてもらえるのって、嬉しいね。
「マリー…」
レオ様の顔が近付いてくる。
レオ様はツヤツヤの髪の毛も素敵だけど、唇もプルプルでおいしそうなのね…唇…
「あ!」
「どうしたマリー」
「あの後オオカミクン152号はどうなりましたか?わたくしのすべてを詰め込んだ最高傑作、噛んでヨシ、切り裂いてヨシ、殴ってヨシのふたつとないシロモノなのです。誰かに持ち逃げされていたらどうしましょう…!!」
「アホマリー」
いつものように、わしゃわしゃとレオ様が髪の毛をかき回して、額に唇を押し当てた。
fin
犬ってほんとに健気ですよね。
大好きだった愛犬を思い出していたら、ふと思いついて。
初めて書いたので設定や文章など色々おかしいかもしれません。
御容赦ください。