風邪
「ゲホッゲホッ」
「咳が出ますね…これを脇に挟んで下さい」
「ずびびび…うん。」
「んー、これは風邪ですかね」
エミリアさん、どうやら風邪をひいたようだ。
だが、病院について教える良い機会だ。今日は病院に行こう。
「かぜ?」
「病気の一つですよ」
「びょうき?」
「体の調子が悪くなることです。安心して下さい、風邪くらいでは何ともなりませんよ」
「分かった。」
とりあえずマスクを渡した。
「これはマスクです。他の人にうつさない為に、咳が出る時はこれをつけて下さい。」
「うん…ゲホッ」
「じゃあ、これから薬を貰いに行きましょうか」
「くすり?」
「体の調子を良くする物です」
「分かった。ずびびび…」
やぁ、エミリアだ。
今日は「びょういん」なる場所に来た。
病を癒す、賢者の様な者がいるそうだ。
「エミリア・ルイツァーリさーん」
次は私の番らしい。
「行きますよ」
「うん」
案内された部屋に入ると、白く長い服を着た人物が座っている。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
「あぁイツキ君、この方がエミリアさん?」
知り合いなのか。危険では無さそうだ。
「はい、じゃあ座って~」
「エミリアさん、ここに座ってください」
回る椅子だ。一体何が始まるのか。
「じゃ、前めくって~」
ん…?どういうことだ?
「エミリアさん、服をめくってください」
「な…!ゲホッ」
イツキ殿は、ここで脱げと言っているのか!?
いや、イツキ殿が私にそんな仕打ちをする筈がない。
まさか…この「いしゃ」とやらはイツキ殿を操っているのか…?
「ほら、音聴けないから」
なんだあれは?まさか、あの形状…まるで蛭の口のようだ。
…あれは血や魔力を吸う道具か?
「ダメ!イツキ!ゲホッ」
「エミリアさん、暴れないで!」
イツキ殿、正気に戻れ!
「イツキ!」
「エミリアさん!」
ギュッ
「へ?」
な、なんだ!?やはり操られているのか!?
…しかし、操られているにしてはこの安心感は…
「え、あ…」
「大丈夫、危ないものじゃないです」
イツキ殿が道具を自分の胸に当てさせた。
お、おぉ…中々良い体を…はっ!私は一体何を!?
「ほら、なんとも無いでしょう?」
「…うん。」
「すごい心拍数だねぇ」
「そ、それは気にしないでくださいよ」
これは、こーらの時と似ているな。
まったく、安心させるのが上手い奴だ。
「じゃぁ、服をめくってくれますか?」
「うん。」
恥ずかしいが、私を思っての事だろう。ここはイツキ殿に従おう。
後ろから手を私のお腹に回している。
この包まれている…守られている感じ…とても落ち着く…
「こっちもすごい心拍数だねぇ」
「こうしてエミリアさんの音を聴いて、異常がないか調べてるんです。」
「はい、後ろ向いて~」
「うん」
今度は私の頭を優しく抱き締めてくれた。
…なぜ、こんなにも落ち着くのだろう。
「今日はどうもすみませんでした。」
「いえいえ、初めては怖い物ですから。それでは、お大事に」
「あ、ありがとう。」
「はい、お薬ちゃんと飲んで下さいね~」
まさかここで暴れるとは思わなかったが、なんとか診て貰えた。
てか、とっさにハグなんてしちゃったけど、超恥ずかしかった…
「イツキ、ごめん」
「気にしないでください。やっぱり、まだ初対面の人は怖いですか?」
「ちょっと」
「少しずつ、急がず焦らず、ゆっくりとでいいですから、頑張って慣れましょうね」
「うん」
そういえば、一つ気になったことがある。
薬を受け取った時、お医者さんに「元気な君たちにサービス入れといたよ」と言われた。一体なんだったのだろうか。
「ん…?」
一つだけ風邪薬とは違う物がある。
…これ、避妊具やん