異文化交流をしてみよう
「先輩!明日みんなで遊びましょうよ!」
茜が唐突に提案してきた。
「茜、また宿題サボるの?」
葵曰く、茜は終わりそうにない宿題が出ると葵を道連れにしようとするらしい。
「だ、大丈夫大丈夫!てことで先輩の家に行きますね!」
「え、ちょっと…」
「面白そうだね、僕も混ざっていいかい?」
「僕も行きたいです」
「うーん…わかりました」
という事があって、今日は僕の家で遊ぶことになった。
「知らない人、来る?」
「うん、そうです。ちょっと不安ですか?」
「うん…」
人が来ると、エミリアさんが怖がってしまう。
しかし、無理はしなくていいが、出来れば慣れて欲しい。
「無理はしなくていいですから」
「あいさつ、する。」
―ピンポーン
「う…」
「はーい。大丈夫、あいさつしたら僕の部屋に行ってください。」
―ガチャッ
「「お邪魔しまーす」」
「どうぞ」
エミリアさん、頑張れ!
「こ、こ、こんにちは…」
「「こんにちはー」」
―タタタタタッ
「先輩、今の方は誰ですか?」
しまった、なんて答えよう…
「あぁ、あの人はエミリアさん。訳あって外国から移住してきたんだ。」
「どこから来たんですか?」
「ち、地図のどこにも載ってない誰も知らない国で、国名は無いんだってさ」
「一緒に住んでるんですか?」
「うん。」
「なんで一緒に住んでるんですか?」
「言語も文化も、何もかもが違うからどうしようも無くなっちゃって、僕の所に寄越したんだ。」
「誰が寄越したんですか?」
葵はなんでこんなにがっついてくるんだ…
「知り合いが移住とかに関わる仕事してるんだよ」
「ふぅん…」
やぁ、エミリアだ。
今日は客人が来た。
私が怯えるとイツキ殿が心配してしまう。迷惑は掛けたくないのだが、どうしても無理だ。
しかし、イツキ殿の客人だ。悪人がいる筈がない。
もし出来たら、勇気を出して接触してみよう。
「三番行ったよー」
今日はみんなでゲームだ。
意外にも、店長はゲームが大好きだった。
客間でモン⚪️ンだ。
「リ⚪️レウス見つけました」
「葵と茜でリ⚪️レウスお願いできる?」
「「了解」」
「店長、僕たちはリ⚪️レイアを」
「分かったよ」
すると、エミリアさんが二階から降りてきた。
「エミリアさん、こっちにどうぞ~」
「う、うん…」
怯え気味だが、部屋には入ってくれた。
一人で端っこに座ってしまったが。
「…エミリアさん、どうしたんだい?」
「ちょっと人がニガテで…」
「もっとこっちに来ればいいのに」
「きっと、ここに来るのもかなり勇気を出したんだよ」
どうかしたのか、という目で僕を見てきた。
それにグッドサインで答えた。
「お二人はどういう関係なんですか?」
「一緒に住んでるだけだよ」
「それ以外には無いんですか?」
「え?いや、何も無いけど」
「本当ですか?」
「な、なんでそんなに質問攻めするの?」
「先輩知らないんですか?葵は先輩すk…」
葵が豹変して茜に襲い掛かった。
「ん゛ー!ん゛ー!」
「何でもないですよ先輩」
「う、うん」
「はっは、若いね」
「ぷはっ!葵!HPヤバいよ!」
「あっ…」
力尽きました…
「だから言ったのに」
「う、うるさい!」
やあ、エミリアだ。
なんとか客人たちと同じ部屋に入ることはできた。これは大きな進歩だ!
…他人からすれば些細な事かもしれんが。
「えぇー!お昼ご飯無いんですか!?」
「ごめん、ちょうど切らしてるんだ」
「茜が突然遊ぶって言い出したんだからしょうがないでしょ」
「ちょっと買ってくるよ。何がいい?」
「焼き肉!」
「分かった。葵、ついてきてくれる?」
「ぼぼ、ぼ、僕ですか」
「茜が来たら余計な物まで買われるからね。店長、茜とエミリアさんをよろしくお願いします」
「分かったよ、行ってらっしゃい」
「「行ってきまーす」」
い、イツキ殿が行ってしまった。しかし、私とて騎士だ。いつまでも怯えてはいられない。
「て、テンチョー?」
「ん、僕かい?店長って呼んでくれていいよ」
「テンチョー。そっち、アカネ?」
「うん、私は茜だよ」
「アカネ。」
よし!なんとか名前は確認できた。
この進歩を見ればイツキ殿も喜ぶだろうか。
~その頃、樹たちは…
「すすきって食べられるんだってね」
「す、好き!?」
「え? すき焼きもいいね」
「す、好き!?」
「え? スキー行きたいね」
「す、好き!?」
「えっ」
「「ただいま」」
「おかえり」
エミリアさんが出迎えてくれた。
何か言いたげだ。いいことでもあったのだろうか。
「むっ…先輩、これ冷蔵庫に入れてきます」
「ありがとう。エミリアさん、何かあったんですか?」
「イツキ、私、話す、出来た!」
「おぉ!」
お互いにグッドサインを出した。
きっとエミリアさんから話しかけたのだろう。素晴らしい進歩だ。
店長も話しやすい話題を出してくれたのだろう。ナイスだ
帰る時間が来た。
「「お邪魔しましたー」」
「また来てくださいねー」
「さよなら」
「エミリアちゃん、また遊ぼうね!」
「うん!」
「またたくさん、お話出来るといいですね」
「うん」
なんと、ここまで打ち解けるとは。
エミリアさんの勇気と、店長たちのお陰だ。