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女騎士育成記  作者: ベルベル
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女騎士の転生

ある日突然、僕の生活は変わった。


「なるほど…」

「お願い、できる?」


いつもの様に朝ごはんを食べていると、女神様を名乗る人物が目の前に現れた。


「つまり、その、これから転生してくる子を一人暮らしできるくらいまでにすればいいんですね?」

「そうそう!「育成」するの。」


その女神様は、僕にある頼み事をした。

それは、女の子を育成しろ、というものだった。

ただの女の子ではない。言葉も、風習も、産まれた世界も、何もかもが違う女の子だ。


「養成とか、教育とかではなくてですか?」

「「養成」だと、具体的なゴールがあるって言うのが当てはまらないし不適。「教育」は「個人の能力を伸ばす」って所が不適。よって、ゴールが不明瞭で、能力を伸ばすのではなく、能力を持った人間にするって意味の「育成」なの。「この世界の人間社会で生きていける能力を持った人材を育成する。」って言えばいいのかな?」

「もし断ったら?」

「他の引き取ってくれる人を探す。もし見つかんなかったら…そのまま上に。」


どうやら、寿命以外の理由で死んでしまい、あまりに酷い人生を送った者、何としてももう一度やり直したい、という願望を持つ者が転生できるらしい。しかし、運悪く引取り手が居なく、そのまま天国に行ってしまう人もごく稀にいるという。


「でもまぁ、うちは大丈夫ですよ」

「本当!?良かった~、ありがとうねっ!」


書類を見た所、この女の子は18歳。身長は165。独特な言語を使う国の王国騎士で、仲間に強姦されそうになる、戦場で裏切られる、等の行為を受け、最期は戦場で恩師が命と引き換えに逃がしてくれたものの、豪雨で発生した土砂崩れに巻き込まれて死亡。

悲劇的な人生を送り、人間に対してかなりの警戒心を持っている。


「僕が、この子を幸せにしてあげられたらいいんですが…」

「もし引き受けたら、もう後戻りできないよ。それでもいいの?」


自信がある訳ではないが、幸せにしてあげたい。


「引き受けます。」

「…わかった。それじゃ、今から転送するね」


光の柱の中に一人の少女が現れた。

銀色の長い髪に赤い瞳、女性的なシルエットをした鎧。左腕のゴテゴテした手甲が特徴的だ。

少し警戒している。だが、女神様からも大丈夫だと説明されたからか、敵意は無さそうだ。


「……………?」

「…………!………。」


謎の言語で話している。全く聞いたことがない。


「てことで、よろしくねっ♪困ったらいつでも呼んで!」


シュパン!


どこかにテレポートした。

女神様には、一応電話で連絡ができるようだ。最初の人の時はすっかり忘れてたー、とか言っていた。

…さぁ、何から始めようか。まずは自己紹介か。

自分を指差し「高木樹(たかぎ いつき)」と言った。


「……?」


ぽかーんとしている。何度かやって理解して貰おう。


「高木 樹」


三回ほどやると、やっと理解してくれた。


「た か ぎ い つ き?」


うなずいて意思表示する。


「たかぎ いつき。」


覚えてくれたようだ。もう一度うなずいて意思表示した。

そして、今度はそっちの名前も言うようにジェスチャーした。


「……ぁ!エミリア・ルイツァーリ」


自分を指差してそう名乗った。


「えみりあ・るいさーり?」


首を振った。もう一度、と手で合図した。


「エミリア・ルイツァーリ」

「エミリア・ルイツァーリ?」


うなずいた。今度は間違いないようだ。

握手をするために手を出した。だが、一歩下がってしまった。

あぁ、握手の習慣が無いのか。ならお辞儀だ。

お辞儀も不思議そうに見つめている。あいさつ、とジェスチャーしたいがわからない。どうしよう。

これは諦めるしかないか。

とりあえず鎧を外して、とジェスチャーした。


「…くっ!」


警戒された。必死に「違う」とジェスチャーすると、了承してくれた。

すると、部屋から出るよう伝えられた。




~三十分後


―コンコン


終わったのか、ずいぶんと遅かったな。

扉を開けると、まだ何もしていないエミリア・ルイツァーリさんがいた。


「えっ?」

「……」


同じ事を何度も言っている。なんだろう。


「ん?」


困った顔をしている。そして何度もキョロキョロ辺りを見回している。

そして、僕を指差した。


「んー………………あっ!」


自分の服を指差すと何度も指差した。


「ん?…あぁ!なるほど!」


服が欲しかったのか。

とりあえずオッケーサインをした。通じるだろうか。

一瞬首を傾げたが「あぁ、なるほど」みたいな反応をした。通じたようだ。


とりあえずジャージを貸した。

そして再び部屋を出た。


「想像以上に難しいなぁ…ジェスチャーには限界がある…」


行動はよくても、物は意外と難しい。習慣も違うと「ボタンをしめる」「服をはおる」等のジェスチャーが通じない。




~五分後


―コンコン


扉を開けると、ジャージ姿のエミリア・ルイツァーリさんがいた。


「……?」


鎧を指差し、どうするのかと尋ねてくる。どうしようか。

とりあえず納戸を指差すと鎧と剣とカバンらしき物を入れた。


さぁ、何をしよう。お昼にはまだ早いか。

台所に行き、とりあえず座って、とジェスチャーした。


飲み物でも出すか。冷蔵庫から色々なジュースやらを持ってきた。


「…?」


困った顔をしている。見たことが無い物だからか。

一個一個名前を教えよう。


「コーラ」

「こー…ら?」

「オレンジジュース」

「おれ…んじ…じゅーす?」

「りんごジュース」

「りん…ご…ジュース?」

「麦茶」

「むぎちゃ。」


うなずいた。すると、もう一度名前を言い始めた。


「こーら、おれんじ…じゅーす?、りんごじゅーす、むぎちゃ。」


もう一度うなずいた。ちょっと嬉しそうだ。

どうぞ、とジェスチャーすると、コーラを不思議そうに見つめた。


―プシュッ!


ビグッ!


ものすごく驚き、構えてしまった。

違う違うとジェスチャーし、コップに注いで飲んで見せた。

危険じゃないと分かったようで、座ってくれた。


「…?」


飲んでいいのか、と聞いてきたのでオッケーサインを出した。


―ゴクッ


あ、そんなに一気に飲んだら…


「プハァッ!」


「毒を盛られたっ!」とばかりに吐き出した。フローリングで良かった。


そして「やはり敵かっ!」と言わんばかりに納戸から剣を取り出し襲いかかってきた。


「待って、うわっ!」


必死に違う違うと伝えても聞かない。

和室に逃げ込んだ。


エミリアさんが右肩を前に出した構えをとった。投影面積を少しでも減らし、突きを当たりにくくする為か。手首のスナップをきかせた縦斬りを避けた。あぁ、床が…


「ケプッ………んんっ!!」


いや、ゲップは自分のせいでしょっ!?

何度もストップ!とジェスチャーしても駄目だ。

横凪ぎを屈んで回避した。


フライパン!フライパンを盾にしよう!

台所に逃げ、フライパンを取った。


「せいっ!」

「うわっ!」


突きを防いだ。


縦斬り、斬り上げ、横凪ぎを防ぎ、何度もストップと伝える。

…これは、一リットルコーラを一気飲みして毒じゃないって事を証明するしか…

コーラのボトルを掴んだ。


「待って!」

「ん…!?」


身構えた。きっとこれで何かされると思ったのだろう。


「ふぅ…ゴクッ」

「はっ!?……………!?」


ギャァァァァ!の、喉がぁぁぁ!

女騎士が止めようとしている。まだ毒だと思っているのか。

何語かは分からないが「やめろ!死ぬな!」みたいな事を言っているようだ。


「ゴクッ…ぷはぁ!」

「あぁ…あぁぁ……ん?」


「あれ、死んでない」みたいな顔をされた。

違う違う、とジェスチャーすると、やっと毒じゃないと分かったようだ。


「………!」


弁明をしているようだ。気にしないで、とジェスチャーしt……マズイ!げ、ゲップが…!


「んっ!」


ちょっと失礼、と伝えて後ろを向いた。

なるべく音が出ないように…


ゲブッ!


し、しまった。思ったより大きかった。


「ふふっ」


笑ってくれた。面白かったなら何よりだ。

そして、残ったコーラを恐る恐る飲み始めた。


「んぐっ!…ふふっ」


他にもたくさんありますよ、と伝えると麦茶を指差した。


「これですか?」


指差すと「うんうん」とうなずいた。

なんとか敵じゃない、ということは理解してくれたようだ。

だが、まだ完全に信用してくれた訳では無いだろう。


こうして、言葉も文化も世界も違う、一人の女騎士との生活が始まった。

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