第九話
「領主様の御子息だからな」
其の言葉を聞いた瞬間、メルヴィンがムネチカを庇うように立つ。
「大丈夫だよ、メルヴィン。座って」
「…………」
「座って」
渋々座るメルヴィン。
「店長をやってるんだから、其の位見抜いて貰わなきゃ困るよ。というか、本当はそう思ってないくせに。店長兼工房長さん?」
笑顔のムネチカと男。
良く見ると二人とも目が笑っていない。
「で? お願いっつーのは何だ?」
「……ムネチカ様は、ご自身の武器をお探しです」
不機嫌そうな顔をして答えるビアンカ。
「俺に作れと?」
「まあ、そう思ってたんだけどね」
「え、違うのですか?」
笑顔で頷き、男を見据える。
「……成る程な。んじゃ、こっからは鍛治師同士の話し合いだ。テメェ等は出て行け」
「は……?」
「わ、私達はムネチカ様の護衛です! 離れる訳には……」
「大丈夫だよ。さ、出て出て」
二人の背中を押し、外へ出すムネチカ。
「んじゃ、話し合いと行きましょうや、ムネチカ様よぉ」
「止めんか。対等に話がしたいでのう」
先の子供は何処へやら。
其処に居るのは一人の鍛治師だ。
「それがアンタの本性か」
「まあ、そうだな。却説、話し合いを始めるか」
にやり、と笑みを浮かべる二人。
「先ず始めに、刀を知って居るか?」
「……その年で何で、って質問はしねぇよ。色々あんだろ?」
「嗚呼。まあな。……俺は、刀鍛冶だった。己で打った刀で命を奪った事もある。俺に取って刀は、」
「「人生を彩る唯一無二の存在だ」」
示し合わせたかのように重なる二人の言葉。
其処で、二人は感じる。
「同類だ」と。
二人は握手をした。
「名は?」
「ダモンだ。これからよろしく頼むぜ、ムネチカ」
「嗚呼」
座り直し、話を再開するダモン。
「しっかし、見てみたかったな。ムネチカが打った刀」
「ふむ……。見る事は敵わんだろうな」
ふと、閃くムネチカ。
「ダモンや。お前、刀の拵えは出来るか?」
「一応、全工程は出来るぜ? ……まさか」
「嗚呼。もう一度、打ってみようと思うてな。まあ、全く同じ物は作れぬだろうが」
「マジか! んじゃ、詳細を教えてくれ!」
急に張り切り始めたダモンに引き気味のムネチカ。
「そうだな……。ではあの子にするか」
詳細をダモンに話すムネチカ。
ダモンは一言も聞き逃すまいと集中し、そんなダモンを見てムネチカも真剣に話す。
「……このくらいか」
「じゃあ、俺は材料を集める。ムネチカは鍛えるんだろ?」
「嗚呼。俺の手で振るうてみたいからな」
ふと、扉が三回叩かれる。
「時間切れの様だな」
「あぁ。材料は3日で集めてやんよ」
「では四日後だな。亦来る」
「待ってるぜ」
お互いに一礼し、ムネチカは鍛冶屋を出た。
「お待たせ」
「大丈夫でしたか?」
「うん。有意義な時間だったよ。待たせて御免ね」
手を繋いで帰る。