第七話
「で? どういう事だ、ムネチカ」
「…………」
仁王立ちでムネチカを見据えるムネチカの父、アーサー。
その後ろでじっとムネチカを見るムネチカの母、ヴィオラ。
「えっと……」
今問われているのは何故体術が使えるのか。
真逆前世で妖斬りをしていました、等と言える筈も無く……。
返答に困っている所だ。
「……ムネチカ、正直に言って頂戴」
目を彷徨わせるムネチカ。
ふと、扉からムネチカ達を見る一人の女がムネチカの視界に入る。
あれは、長女のオリンピアだな。
……何やら、俺を見下している様な……。
ん? 何か言って居るな……。
何?「ざ・ま・あ・み・ろ」?
ふんっ。その様な挑発に誰が引っかかるか。
「ムネチカ?」
「は、はいっ」
ヴィオラに呼ばれ、慌てて前を向くムネチカ。
「……そんなに難しいことを言っているか? ただ、教えてくれと言っているだけなのだが……?」
「…………」
難しいのだ、父上。
ムネチカは必死に逃げ道を探す。
そんなムネチカを見て、一つ溜め息を吐くアーサー。
「何故言えない」
「……すみません。ちちうえ。ははうえも……。ときがきたら、いいます。かならずです」
しっかりと二人を見て言うムネチカ。
そんな姿を見て再び溜め息を吐くアーサー。
「それまで、おふたりにかくしごとをすること、おゆるしください」
深く、深く頭を下げるムネチカ。
その姿が、アーサーには蒼い狩衣を着た大人に見えた。しかし、瞬きをするとその姿は再び子供のムネチカに。
首を傾げるアーサー。
「……ムネチカ。顔を上げなさい」
ヴィオラが優しく声をかけ、ムネチカがゆっくりと顔を上げる。
「良いのよ」
首を傾げるムネチカ。
「家族にだって隠し事の一つや二つ、あるものよ」
そう言ってアーサーを見るヴィオラ。
その視線から逃げるように目をそらすアーサー。
「だから、謝らなくて良いわ。……それから、もし……、もし、その秘密がムネチカが背負えないほど大きなものになってしまったら。さっき言っていた、時が来たら、私達に話して頂戴」
「ね?」とムネチカに笑いかけるヴィオラ。
母上は、優しいのだな。
ああ言っていたが、言えない事がある、と言われれば、信じて貰えていない、と感じるだろう。
信じては居る。だが、此の問題を言う程信じては居ない。
情報は何処から洩れるか分からない。どんな世界だろうと、情報一つ知られるだけで、それだけ不利になる。
此の問題は尚更だ。奴等が何も知らずに居るからこそ、俺が動ける。
異世界召喚。世界という檻を通り越して人を無理矢理連れて来るのは、相当の労力が必要だろう。
其れを一般人に促されただけで各国が次々と行う訳が無い。奴等は、国に意見を言える程の地位に居るのだろう。
それだけの地位があり、俺が潰そうとしている、という情報が若し奴等の耳に入ったら。俺は恐らく国に狙われる事になる。
そんな事になれば、家族にまで矛先が向くやも知れぬのだ。
すまぬ。母上、父上。