第四十三話
アーサー、ヴィオラ、オリンピア、カティーナ、ムネチカの五人で家族会議が始まった。
「さて、まずは無事に帰って来てくれて良かった」
「はい。心配を御掛けして申し訳有りません」
軽く頭を下げるムネチカ。
其れに頷くアーサー。微笑むヴィオラ。そっぽを向くオリンピア。安堵するカティーナ。
「それでね、報酬の件なのだけれど……」
そう切り出すヴィオラ。
「冒険者風情に高価な物は不必要でしょう。適当な安物でもよろしいんじゃなくて?」
冒険者を丸で小汚い溝鼠とでも思っているのか此奴は。
「オリンピア! そんな言い方無いでしょう!」
「まあお母様、あんな小汚い連中の肩を持つというのですか?」
「小汚いですって……? 彼らのお陰で私達は魔物の脅威から身を守れているのですよ!」
ヴィオラがそう言うも、オリンピアはそっぽを向き、全く分かっていない様子。
「落ち着け。オリンピア、お前が居ると話が進まん。出て行け」
渋るオリンピアを睨みつけ、強制的に出て行かせるアーサー。
「……ムネチカ、お前はどうしたい」
「はい。父上と母上達にも報告されているでしょうが、魔物の大軍に襲われました。其のとき、武器防具が壊れた、傷ついたという方も居りました故……、知り合いの鍛冶屋での修理等の代金を肩代わりしたい、と思っています」
「知り合いの鍛冶屋、というと、ムネチカの武器を作ってくれたという……」
「はい。ダモン殿の鍛冶屋です」
アーサーは少し考え、頷く。
「分かった。良いだろう。他に何かあるか?」
ふむ……。
「一番御世話に成った、ソフィアさんにプレゼントを渡したいです」
「プレゼント? 何を渡すつもりだ」
「僕が作った物ですよ。ほんの気持ちです」
アーサーの睨む様な視線に、肩を竦め乍ら言うムネチカ。
「……ならば良い。では、この話はこれで終いだ」
席を立ち、部屋を出て行くアーサー。
「……じゃあ、もう遅いから寝ましょう。カティーナ、ムネチカ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
一礼し、カティーナと部屋に向かうムネチカ。
「……ムネチカ、本当に大丈夫だったのです?」
立ち止まるカティーナ。
「大丈夫でしたよ。冒険者の方々が守ってくださいましたから。……おやすみなさい」
カティーナに微笑み、一礼して部屋に入るムネチカ。
「…………。では、何故いつもよりムネチカの魔力が少ないのです……」
ムネチカが入った扉を暫く悲しげに見つめた後、ひとつ溜め息を吐いて自室へと戻って行った。