第三十八話
一日遅れて、申し訳有りませんでした!
「そ、ソフィア……? 今ムネチカ様に渡したのって……」
恐る恐るソフィアに聞く女。
「あ、はい。魔力結晶です」
さらっと言うソフィアに目玉が飛び出る冒険者達。
「ちょ、ちょちょちょちょ! ちょっとソフィア?! アンタ魔力結晶の価値を忘れた訳じゃないでしょうね!」
ソフィアに詰寄る女。
「も、勿論ですよ師匠……。でもムネチカ君と居ると、そこ等辺の感覚が分からなくなって来て……」
「……た、確かに……」
ふむ。
あの女性はソフィアの師匠だったのか。
「おい、そろそろ出発するぞ。日が暮れる前に森を抜けたい」
「そうですね。走りますか?」
「出来ればそうしたいが……」
アリサを見る男。
「嗚呼、アリサさんの事でしたら僕と馬に乗りますよ」
「馬? さっきの騒動で逃げたと思ったが……」
ムネチカが口笛を鳴らす。
茂みを揺らして現れた馬。
「な……?!」
確かに馬だ。
馬なのだが、通常の馬より一回り程小さな体躯は、雪の様に白い。
そして、其の背には一対の翼。
「ペガサス……?! 何故こんな所に!」
ペガサスはとっとっ、とムネチカに近寄り、頬擦りをする。
「此の子、ペガサスと言うのですか?」
ペガサスの頭を撫で乍ら問うムネチカ。
「あ、あぁ……。精霊界にしか住まないと言われている、希少な魔物だ」
「へえ……。ではお前、着いて来たのか」
ペガサスは言葉が分かるようで、頷いた。
「……着いて来た?」
「嗚呼、其の話は歩き乍らお話しましょう。さ、アリサさん、こちらへ」
「っあ、はい……」
周囲を警戒し乍ら歩くムネチカ達。
「それで、ムネチカ様」
「嗚呼、はい。先程、精霊の悪戯で精霊界に放り込まれまして……」
「イタズラで精霊界にって……。そんなことが……?」
ムネチカに問うた男がちらり、と一人の女を見る。
其の女は今剣が神であると見破った者。神に仕える修道女だ。
「はい。幼い子供は純粋な者が多い為、稀に精霊界に迷い込むことがあります。精霊のイタズラで、というのは初めて聞きましたが、有り得ない事ではないでしょう」
純粋、のう……。
まあ、考えても分からぬか。
「それで、帰る時に此の子が着いて来てしまったのですね」
修道女が頷く。
「恐らくそうでしょう。ペガサスは穢れに弱いと聞きます。現世に来る事は滅多にないのですが……。それほど、ムネチカ様の事を気に入られたのでしょう」
ペガサスが肯定するように小さく鳴き、頷く。
「では、召喚獣にするのはどうだろうか?」
「しょうかんじゅう?」
首を傾げるムネチカ。