侯爵令嬢を苛めてみる
手始めに攻略対象と仲良くなったら、早速呼び出されました。校舎裏の中庭に。
「マリエラさん、婚約者の居る殿方達にベタベタするのは感心しませんわ」
私の目の前に、気の強そうな令嬢が立っている。
アレクシア様、王子の婚約者の公爵令嬢である。
銀髪の縦ロールに藍色の瞳、調整のとれたスタイル、やや釣り上がった眼つき、頬を紅潮させて…
かわええ~、悪役令嬢は二次元から三次元に変わっても、可愛かった。
ドリルをクルンクルン弄りたい。油断した隙にオシリタッチして揶揄い隊結成したい!
しかも可愛いのはそれだけじゃない。アレクシア様は一対一で対峙しているのだ。
彼女の立ち位置なら取り巻きも友人もいるのに、多勢に無勢なんて卑怯ですわ!
と言って1人でやって来たのだ。
可愛いなぁ…うん。可愛らしい。まっすぐ過ぎる。
もしも私が無法者と繋がっていて、無法者と一緒に彼女を襲ったらどうなると思ってるんだ?
「アレクシア様、それは嫉妬ですか?あなたが10年かけても向けられなかった王子の心をこの短期間で私は射止めてしまいましたもの。王子は私を一生かけて大切にすると誓ってくれましたわ」
「そんな…」
「アレクシア様、10年かけて王妃教育に勤しむのは大切な事ですけど、王子自身を見ていますか?あなたは王子が何に悩んでいるかご存知ですか?」
「そんなの、次代の王になる為のプレッシャーに決まっているじゃないですか」
「違いますよ。アレクシア様は10年もお傍に仕えていて何も知らないんですね」
ここであえて意地悪く、フフフと笑ってみる。
アレクシア様の顔色が蒼白になる。
「10年もお傍にいて何も知らないなんて」とダメ押しをする。
「大勢の男性に言い寄るマリエラ様には王子殿下は絶対に渡しませんわ!ずっと王子殿下の事が好きで、お傍にいる為に辛い王妃教育を頑張って来たのですから!」
アレクシア様が涙を流してブチ切れて捨て台詞を残して走っていった。
あれはギャン泣きだなぁ…そして弱みを見せたくないアレクシア様は体育倉庫あたりで
鍵かけて籠って、1人で泣くに違いない。
「可愛い…」とひとりごちていたら、隠れていた王子殿下がやって来た。
「アレをあまり苛めてくれるな。私の最愛の姫なのだから…」
「王子殿下の悩みの1つが消えてしまいましたね。アレクシア様が自分ではなく幼馴染の騎士の事が好きなんじゃないかとずっと悩んでいたんですよね。サクッと解決しちゃいましたね」
「俺の前ではツンツンしていたからな。ずっと俺の片思いだと思っていたよ。」
「はあ、余裕かましていて良いんですか?彼女が1人で泣いている隙に誰かに襲われたらどうするんです?」
途端に王子殿下が青くなり、慌て始めた。
「アレクシアは大丈夫か?どこに行ったんだ」
「大体読めますけど、教えませんよ。アレクシア様のお尻タッチは私の物です」
「何を言う、アレクシアは俺の物だ」
「このくらいの報酬がなきゃ、こんなめんどくさい事しませんよ。では王子殿下、アデュー」
この世界の便利な技術。転移魔法を使って私はアレクシア様の元に移動する。
彼女を利用する為に、取引を持ち掛ける為に。あとは趣味と実益を…
ええ、ヘタレ王子には簡単にはアレクシア様は渡しませんとも。